霧の中に悪魔がいる

full moon
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(14)

公開日時: 2021年7月31日(土) 23:42
文字数:514

あわよくば、楽に死ねる方法がないかと考える。


しかし、楽に死ねる方法はあるはずもなく。


死にたくないと考えてしまう。


不意に、私の口から小さく笑いが吹き出た。


死にたくないのは、今、正常な精神を保っているからだろう。


篠生のロープを手に持った。


天井の梁にロープをかけて、首を吊ろう。


これで何もかも、おさらばだ。


ロープを梁にかけた。


篠生は、自殺する為に、ロープを持ってきていたのだろう。


ロープの先端を鋭利に欠けた噴水のオブジェクトに縛りつけた。


きゅっきゅっと、引っ張り、ちゃんと縛ってあるかを確認する。


もう片方のロープの先端に輪っかを作る。


その時だった。


床に投げ飛ばされている老婆の分厚い本が、視界に入った。


そうだ。


全ては、老婆が、霧の中に悪魔が居ると言ったのが始まりだった。


梁から垂れ下がったロープを手から離し、分厚い本へ近づいた。


私は、その本に手を触れた。


ずしっと重い本を両手持ち上げる。


その本の表紙は、なめしが、良く効いた革素材でできている。


僅かに弾力のある表紙を指の腹で感じた。


きっと、古代文字や難しい文字で記されているに違いない。


そう想定しながら、表紙を開く。


私は、驚愕した。


本の一ページ目から、全く想定していなかった内容だった。

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