霧の中に悪魔がいる

full moon
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(4)

公開日時: 2021年7月21日(水) 20:07
文字数:504

もしかしたら、シャッターの外には大勢の悪魔が居るかもしれない。


開ける音で悪魔が集まるかもしれない。


しかし、私の心の中に現れた卑怯な思考が、肯定化する。


郷珠が生贄になっているうちに、妻とレストランから出れば助かるのではないかと。


気が付けば、私は、シャッターに両手をかけていた。


シャッターの取っ手は、じとっと濡れている。


よく見ると、シャッターは、おびただしい水滴が広がり、結露していた。


ぐっと、力を入れて、シャッターを上へ持ち上げる。


結露で、ぎゅっと手を滑らせる。


ゆっくりと開けていく。


がらがらがらと小さな音が鳴る。


すうっと、涼しい風がシャッターの向こう側から入り込む。


半分くらいまで開けたところで、私は、シャッターをくぐった。


一つの部屋があった。


レストランと同様に木を基調とした部屋だ。


窓が一つ有る。


窓の外は、朝まだき、真っ白な世界が広がっている。


窓の下に灯油タンクが二つ並んであった。


私は、灯油タンクを見て、小さく頷いた。


部屋の中央には、食卓机がある。


その机の上には、何本も注射器が無造作に置かれている。


椅子は二つあり、どちらも倒れている。


部屋にあるクローゼットは、開きっぱなしで、床まで衣類が散乱している。

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