「義徒、そんな奴等に頭を下げるこたぁねぇよ」
「そうよ、そんな無礼なメス二匹は私達が躾けてあげるわ」
群衆が、私達に頭を下げる義徒を批難する。
「月恵、君はもう水守が殺した」
「その月恵は君ではない」
「君は、このゲーム世界に転生しているのだろう」
「その状況で死んだら、君は消滅するかもしれない」
「君達はこの場から逃がしてみせる」
「君からは悪意が」
「悪を感じられない」
「悪を感じたあの月恵とは違う」
「だから、せっかく悪でない月恵に会えたのに」
「殺したくない」
「生きていてくれ、悪ではない月恵よ」
「世界が違うとはいえ、同じ人間を二度殺すのは不快なものだ」
義徒が私達に敵意を持っていないのも、逃がしてやろう守ってやろうという意図も、分かる。
私だけなら、この場を義徒に沈めてもらって逃げられるだろう。
けれど、メルメちゃんの怒りを抑える事はできない。
「メルメ、君の怒りを私にぶつけるといい」
義徒が、ウィンドウ画面を操作する。
【油男が、ロリ少女にゲームを申し込んでいます】
アナウンスが流れる。
「義徒がゲームをするわよ」
「義徒のゲームを見られるなんて」
「義徒に勝てるわけねぇだろうが」
「水守でもないやつじゃよ」
このアナウンスは、この場にいる誰もが聴こえているようだ。
群衆が、観戦の流れに入っていく。
「GAME」
「GAME」
そうだ、ここがどんな世界だろうと。
違う世界の者同士でも、これは同じなんだ。
【ロリ少女が、油男のゲームを承諾しました】
メルメちゃんと、義徒がコントローラーを握る。
ディスプレイが現れ、メルメちゃんと義徒が表示される。
【GAME STAART】
アナウンスが、ゲームの開始を告げる。
「殺す」
メルメちゃんは、杖を振り回す通常攻撃を2発繋げる。
「サンダーラッシュ」
通常攻撃の2発から、雷魔法が繋がる。
「やるじゃねぇかメスガキィ」
「義徒のHPがどんどん減ってくぞ」
「死ぬまで殴っちゃうよ」
メルメちゃんの言葉は本意を感じる。
このまま、勝負を決めるつもりだ。
体格におおいに差があるうえ、何せ相手は義徒だ。
開幕初手から先手を取り、一気に殺害するつもりで。
いや、殺害するしかメルメちゃんには手がない。
遠距離から魔法攻撃をちまちまと撃っていくなんてやり方で、義徒に勝てるわけがないわ。
雷魔法で痺れた義徒に、メルメちゃんは再び通常攻撃を繋げていく。
「通常攻撃→魔法攻撃からまた通常攻撃に繋がったぞ」
「ヒュー!」
「サンダーラッシュってのは、通常攻撃ラッシュに戻して繋げるっていう意味のラッシュかよ」
「痺れてるのは義徒だけじゃないぜ」
「俺はもう痺れちまったぜ!」
「メスガキ、お前になぁ!」
「ちょっとちょっと、これじゃ義徒が」
これが、メルメちゃんの戦い方ね。
なんだか、心が踊っていた。
もう、怒りとか憎しみとか私の中からは飛んでいた。
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