ところで小説家になりたいんだがどうしたらいい?

日常を綴り、人生と言う物語を認める。ご笑納下さい。
Hatter
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リサーチ? SNSで集客??

公開日時: 2020年11月6日(金) 12:00
文字数:959


「覚悟なくして、大切な人たちを守れるとでも? 小説家? 甘いことだけ考えているなら、そんな夢だか何だか知りませんが即刻てて、日雇いでも働け!」


「お、落ち着け。な、落ち着け」


俺は、正面の唐突に猛ったイケメン君を宥めるのに至って平静に務めた。


これは、あれだ。何かちょっと勘違いして、殺人に突っ走る若者(純情設定)を押し留める、熟練の刑事デカだ。

再放送時間帯のよくある風景だ。

そして、ちらりと背後を覗けば……


背面のお前らも落ち着け!!!

違う覚悟決めてどうすんだよ!


ミーちゃん! 熱い! 息が熱い! その勢いで熱い告白とかやめてね?!

ちょ、旦那マスター??! 違う! 出刃包丁(洋食屋にいる、それ?)に持ち替えなくていい!

このイケメン君はんにんは俺がなんとか押し留めるから!


唐突に始まった、勘違いからのイマジネーション痴情のもつれ殺傷事件とか、それ、もう、イリュージョンの世界だから!!


俺は三面記事に載る覚悟をほんの少し決めた。


「覚悟は?」


「は?」


「覚悟、ですよ」


「あ、はい。あります。今、出来ました」


俺の誠実な対応に納得したのか、イケメン君はその猛った空気を解いた。


ばかやろう。危うくおまえ、人、殺しちまうとこだったぞ。


俺は心の中で、熟練刑事の言葉を呟いていた。


「覚悟あるんなら、まず、自分で片っ端からリサーチして下さい。各大手サイトのトップを飾るような人たちの作品の傾向、タイトルや見出しの作り方、それから、SNSの利用、集客方法をリサーチするんです。SNSの活用なくして現在のWeb世界に適応することは出来ません」


「リサーチ……作品全部、読むの? すごい量だろ? 俺、最近、老眼かな? 会社辞める前もさ、コーディングやデバッグするの辛くなってきててさ。長時間画面の文字を読み続けるの、ちょっと辛いんだよね。それにSNSで集客って何? 例えばどういうもの? どうしたらいいんだ? ネットなんだから読者って勝手に集まって来るんじゃないの? そう言うのよくわかんないから、お前にそうだ……ん……」


俺の前には、般若がいた。

そうか。殺されるのは、俺か。

般若は葵の上だっけ。光源氏の最初の嫁だっけ。嫉妬に狂って鬼女になったんだっけ。

イリュージョン嫉妬に狂いそうなの、お前じゃなくて、背面の2名じゃなかったっけ。


俺は、気圧されて幾分テンパりながら「ハイ。リサーチします」と言った。





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