「それから。その投稿しようとしているサイトですけど。それぞれに特性がありますから、ご自身の作品がどこで受け入れてもらえそうなのかは、それこそ各サイトで看板張ってる作品を読んで傾向をつかみ自分で考えてください」
「特性?」
「それぞれのサイトに得意なジャンルや書き振りの傾向があるんです。その傾向は、運営側が仕掛けたり、読み手が決めるわけで。そういう流れから、こういう感じのストーリーは【だぶあーる】に多いね、とか、この展開は【述ベル】好みだよね、みたいな話がなされるわけです」
「ほほお……」
「それによって、読者のメインとする生息域も変わってきます。好みによって、分散するわけです」
生息域? ふむふむ。大手サイトとは言え、そこに満遍なく読者がいるわけじゃないんだな。
さまよえるネットの民よ。俺の作品に集え。
「それから、これはWebとしての特性ですけど。紙じゃなくて、画面で読むわけですから、読者は、スマホ、タブレット、ディスプレイ、さまざまな端末を通して閲覧してるわけです。各サイトによって作品の表示形式――先輩でも分かりやすく最も簡単に言えば、縦書き表示の対応があるかとかですね――理解出来るかは別として、表示コントラストや、一行あたりの文字数、つまり文字間隔も異なるので、読者はその表示状態によっても、好みや読みやすさを判断する、と言うことも重要です。つまり見やすいレイアウトを心がける必要があります」
「ほおお……」
わからん。どこのサイトで読んでも一緒じゃないのか。
携帯会社だって、結局どこだって同じだろ?
レイアウトって?
「ですから、先輩の作品がどのサイトで受けやすいか、どこをメインに活動するかをですね……」
俺の作品……。ああ。何て素晴らしい響きなんだ。
イケメン君から発せられる未知なる響きの数々に少々翻弄されていた俺だが、我に返った。
俺はやり遂げる。
モジャおがまた気持ち悪い顔をしている。
この情緒不安定な頭と顔面は何とかならないのだろうか。
ん。イケメン君が、俺を見つめている。なんだ。どうした。その静かな眼差しは。
そうか。お前にも、この俺の思いが伝わっているのか。お前も人の子だったんだな。
意図的に俺の言葉を無下に扱うような対応、時折悪意すら感じる言葉の端々だったが、それはお前からの叱咤激励、エールだったのか。お前のその思い、無駄にはせんぞ。
俺は、湧き上がる胸の熱さを咳払いで抑えた。この熱さ、タバスコのかけすぎではない。
いやちがう。やっぱり喉が熱い! ミーちゃん、何か入れた? 旦那?!
俺は目の前にあった自分の水と、それから目の前の男の水を問答無用で飲み干した。
「リサーチするんだろ。わかってるよ。任せとけ。一日、原稿用紙3ページ、いや4ページぐらいの量を読んだとして……」
……リサーチ終える前に、一生が終わるわ。
人間の平均寿命をいったい何年だと?
それともなんですか。そのモジャ頭は、頭だけ1000年ぐらい平気で生き続けるとか。
まさかその咳、未知のウィルスでも撒いてるんじゃないだろうな。感染したら頭がそんなことになるとか、絶対に嫌だ。
すみません。新しいコップでお冷もらえませんか。
「いやもういいです。鷲治良君が見つけてくれた三つのサイト、全てに載せたらいいでしょう。やってみてから考えましょう(今考えても、果てしなく時間の無駄だ)。生息域の違うお客さんの散らばりは、今後ツイッターで集合をかけるとして(かけるほど、人が来れば)、まずは上げましょう」
「おおそうか。実地訓練と言うわけか。OJTだな。望むところだ」
「そうです。考えても話しても無駄そうなんで、実地訓練で、おっさんの実力試してみてください」
考えても、話しても無駄ってどういうこと?
……まあいいか。実地訓練、大事だよな。動き出すことが重要だからな。
ん? て言うか、今、おっさんって言った?
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