三界の書 ―銀閃の聖騎士と緋剣使いの少年―

少女は、持ち前の明るさで闇の中の少年を照らす
阿季
阿季

<序章>

ある女騎士の独白

公開日時: 2020年10月3日(土) 19:10
文字数:630




もう少しうまくできると思ったんだけど…………そんなに現実は甘くないね……


ありゃ……今にも泣きだしそうな顔しちゃって……いつもは意地っ張りで無愛想なのに……




ちょっと喋るのもきついので……とりあえず抱きしめてあげた。いつもなら嫌がるんだけど、今は大人しい。




――――ああ、やっぱりそうなっちゃうよね……変なところ真面目だもんね。あんたのせいじゃないって言ってあげたい。




…………でもそれは自分じゃない。その役目はあの人たち……




名前を必死に呼ぶ声が聞こえる……でももう返事もできそうにない……ごめんね……


代わりに笑顔を向けよう……笑顔でいれば大抵はうまくいくんだから。いつも言ってたでしょ……?




……今いる空間が壊れそう……気づいてないなぁ…………まったく、手間のかかる弟ね……




残ってる力も少ない……あんただけでも移動させなくちゃ…………








………………よし、うまくいったみたい。笑顔で送り出せた、と思う……よくやった自分。




崩壊が始まった……でも不思議と怖くはない……きらきらしてて綺麗……




――――こんな時だからこそ……よくわかるのかなあ……肝心な時に役に立たないくせに……




………どん底にいるあんたを引っ張り上げるのは……あの子か……


そっか……あの子と出会うんだね。いつか会わせようと思ってて……結局できてなかったけど、そっか。


自分にはできないとわかって……ちょっとだけ……ほんのちょっとだけ、寂しいし悔しい気がするけど……でも……




あんたが前に進めるなら……私は―――――――





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