烏藤と芦原と支倉の3人が駐車場に戻ってきたころには既に、星弥と侑斗による吉原と長谷川に対する御祓いが既に終わっていた。
後部座席でぐっすりと眠る二人を見て、烏藤は星弥に「大丈夫だったのか、無事祓い終えたのか?教えて!!」と問い詰めると、星弥は「ああ。問題なくね。自殺した御霊に取り憑かれてはいなかったが、やはりあの場所から発する異様な空気に圧倒されてしまったのかもしれない。」と答えると、烏藤は「空気に圧倒されるということはつまり弱っている体に対して数多もの自殺者の御霊がそのタイミングを狙って取り憑こうとした危険性があったという事だよね?」と質問をすると、星弥は「その通りだよ。俺達のような霊能者が居なかったら、間違いなく吉原と長谷川に待ち受ける運命は同じ八木山橋で投身自殺をしていたかもしれない。そうなる前に二人を避難させておいて正解だった。」と返事した。
芦原が烏藤に「明日の七ヶ宿ダムに行くって話は、霊感のない二人がこんな目に遭っても続行するというの?」と切り出すと、支倉も続けて話をした。
「これ以上は二人の体力のことも考えて七ヶ宿ダムに行く話は中止をしたほうがいい。俺達がいるから取り憑かれずに済んだことだ。烏藤だって見ただろ、あの橋の下で叫ぶ数え切れぬほどの自殺者の御霊を、あれで十分わかったはずだ。二人のことを思うのなら、これ以上危険な目に遭わせるべきではない。」
烏藤は「わかったよ!考える!ただ今は結論が出そうにない。」といって考え始めると、烏藤のそんな様子を見た星弥が一声をかけた。
「悪霊や邪霊から身を護るためのペンダントなら二人分用意してある。どうしても七ヶ宿ダムに行きたいというのであれば、このペンダントを絶対に身に着けることを条件として吉原と支倉を同伴することはできる。」
星弥がそう話すと、旅行用鞄のポケットに入れておいたペンダントを二つ手に取りだすと、支倉と芦原と烏藤の三人に対して説明を行った。
「御祓いのための御経を唱えてある。魔除けとしての防御効果は発揮できる。」
星弥の説明を聞いた烏藤が「それを持っているんだったら、もっと早く用意してほしかったんだけどなあ。」と話すと、星弥は「ごめん。ごめん。一先ずぐっすりと寝ている二人に魔除けのペンダントをつけた状態で、七ヶ宿ダムの近くのホテルで宿泊して、朝の9時のオープンに合わせて向かうことにしようか。」と切り出すと、烏藤は「そこまでしてくれているなんて思ってもいなかった。本当にありがとう。感謝してもしきれない。ありがとう、本当にありがとう。」と星弥に近づくとハグをして抱き合った。そんな様子を見た支倉は「饗庭らしいな。予見できるトラブルを想定をした上で用意できるものはきちんと準備をしてくる。」と語ると、芦原は「星弥さんがいてくれて本当に心強かったね。」と支倉を見て答えるのだった。
そして烏藤が運転する車に助手席に侑斗が座ると後部座席に吉原をシートベルトを装着させた状態で寝かせる。一方芦原の車では助手席に星弥、後部座席にシートベルトを装着した状態で長谷川を寝かせると、その隣に支倉が座るような形で出発する。
車で走らせること43分ほどが経過して、やっと七ヶ宿ダムから近いビジネスホテルに到着をすると、ぐっすりと熟睡が出来たのだろうか、吉原と長谷川の二人が問題なく起床するとドアを開けて下り始めた。
吉原が大きな欠伸と同時に、「はあ~八木山橋で絶景こそは撮影できなかったけどもでも竜ノ口渓谷が見れただけでもよかった。」と話すと、長谷川は「幽霊ハンターとして、心霊現象の真偽を確かめるための写真の一枚も撮影が出来なかったなんて悔しい!悔しすぎる!!」といって地団駄を踏んでいたのだった。
そんな二人の様子を見た侑斗は、星弥に「元気になってよかった。」と話すと、星弥は侑斗の話に笑顔で頷くとその場にいた全員に声掛けをするように話し始めた。「俺が持ってきた魔除けのペンダントが効果を示したおかげもあるかもしれない。元気を取り戻してくれてよかった。だが油断は禁物だ。吉原や長谷川君から俺が付けたペンダントについて聞かれたとしてもペンダントは絶対に外さないようにと念を押して伝えておいてね。」と話すと、侑斗は「わかった。」と答えると同時に、支倉、烏藤、芦原の三人も続けて「了解!」といって返事をした。
五人の話のやり取りが聞こえたのか、吉原のほうから星弥に「ペンダントっていまわたしが首にしているこのネックレスの事?」と聞き出すと、星弥は「ああ。それは身を護るためのおまじないも入っているお守りでもあるから外さずに大事につけてほしい。」と話すと、吉原は星弥にさらに問い詰め「一体何があったのか教えてほしい。ペンダントは外さないようにの意味がわからない。」と聞き出すと、星弥は渋々吉原に事の経緯について、長谷川に対しても近くに来るようにお願いすると八木山橋で起きた出来事について説明をし始めた。
八木山橋での一件を聞いた吉原は「つまり自殺者の御霊に取り憑かれる寸前だったから、わたしたちが今身に着けている魔除けのペンダントが身を護る効果を発揮してくれたから外さぬようにと言いたいわけ?」と聞き出すと、星弥は「その通りだ。霊能力のない二人には、とっさの禍から身を護るための方法を知らないからね。俺達、支倉や烏藤、侑斗や芦原は身を護るための防衛術を知っているから対処できるけど、霊能者じゃない吉原と長谷川君にはこの魔除けのペンダントで対処するしかない。因みにこの魔除けのペンダントは、日常生活でも役立つよ。身に起きる不幸が重ならないように、おまじないも入っているんだよ。」と優しい口調で説明をすると、吉原は少し考えるようなしぐさを見せながら「わかったよ。外さないようにする。」と返事をすると、長谷川は「わかりました、出来る限り外さないようにする。」と答えたのだった。
そしてホテルでは、芦原と吉原、侑斗と長谷川と支倉、星弥と烏藤が同じ部屋で寝泊まりをすることになった。
19時過ぎにホテルの中にあるラウンジで集まって晩御飯を食べ始めると、食べ終えた後に明日の朝7時30分過ぎには朝食を食べることが出来るスペースで全員集合することを約束してから、各自の部屋に戻り部屋の中にあるシャワーを浴びたところで、就寝するまで各自自由時間を過ごすことにした。
烏藤と二人きりになった星弥は、どうして七ヶ宿ダムに行きたいのか烏藤に率直に聞き始めた。「なあ、どうして七ヶ宿ダムに興味を持ったのか教えてほしい。」
星弥に聞かれた烏藤は「何だ。福島まで来たのなら、七ヶ宿ダムに着いての話も知っていると思ったんだけどなあ。」と話すと、星弥は「いやいや。あれは楠木先生からの依頼で俺が霊能者として駆け出しだった高校2年生ぐらいの時だったかなあ、肝試しがしたいって依頼で福島の高子沼グリーンランドという遊園地だった跡地が福島を代表する心霊スポットだから同伴してという内容で楠木先生のほうから管理主に前もって施設内の中に入る許可も得て実際に行ったらまあびっくりしたよ。かつて遊園地だった面影も無ければ、ソーラーパネルばかりが並ぶ施設へと生まれ変わっていてね、依頼者の人には言ったよ。”それでも怖いとお思いですか?”ってね。全く遊園地らしさゼロだった、行って損したなあと思うスポットの一つだった。」と話すと、烏藤は声を大にして爆笑した。
「高子沼グリーンランドか。懐かしいなあ。あれね、確か2006年ごろに施設内に残っていたアトラクションの全てが解体されて今のソーラーパネルばかりの施設になったとは聞いたんだけどね。色々な都市伝説で有名になったけど、大人になってからは残された画像でしか見ることが出来なくなってしまったよ。」
声を大にして笑い合っているうちに星弥があることに気が付いた。
「いや!違う!!高子沼グリーンランドについて語り合っているんじゃない!七ヶ宿ダムについてどうしていきたいかを聞いているところだった。」
星弥が話題を変えると、烏藤が「わかった。教えるよ。」と答えると、七ヶ宿ダムに纏わる怖い話をし始めた。
「俺は小っちゃかったので記憶に覚えてはいないが、2004年の10月頃の事だった。七ヶ宿ダムに架かる橋の上で19歳の会社員の男性が集団暴行を受けた末に殺害された事件があった。遺体の処理に困った犯人たちが橋の上に立つと、遺体を投げ捨ててその場を後にしたらしい。それから、橋付近では呻き声や何かが水面に落ちるバシャーンという音から、湖面から手が出ているなどの目撃情報があるんだ。その他にも、ダム近くの全長200m程の橋には殺された男性の御霊だろうか、通る人に対して睨み付けてきたという話もある。また霊の目撃情報こそはないが、トイレで首吊り自殺や焼身自殺があったりと、何かと曰くつきみたいなんだよね。」
烏藤の話を星弥がじっくりと話を聞きながらスマートフォンをいじっていると、星弥が烏藤に「事件ってこれの事か?」と聞くと、烏藤は「ああ、そうそう。これに違いない。」と話すと、星弥は呆れた表情で突っ返した。
「お前、殺人現場に行きたいって正気か!?」
星弥の問いかけに烏藤は「勿論だ、勿論、殺された男性の追悼がしたい。」と話すと星弥は「お前、油井グランドホテルで学習をしてくれたと思っていたんだけどね。あの殺された女性の怨念、乱暴を受けた状態で強制的にあの場に連れてこられた上に強姦され電気コードで絞殺された女性の犯人に対する憎悪の思いが殺害現場だった厨房付近で漂っていた上に、あの地をウロチョロしていた他の浮遊霊を引き寄せて立派な幽霊ホテルとなり、あの地で彷徨うのは女性の御霊だけじゃなくなっていたじゃないか!でもあのホテルは他に何かある、あの焼き焦げた跡が生々しく残っていた一室、オーナーが焼身自殺を図ったとも伝わっているが、あれはどうも違うような気がする。俺はあの部屋に入ったときに、息苦しい感覚に襲われた、俺の推理ではあるが焼身自殺じゃない。ボヤが起きた、あの部屋で宿泊していた客の一人が煙を吸い込むなどをして亡くなった可能性が高い。実はその客の一人も突然の死に理解できずに未だなお彷徨っているのかもしれない。よって、あの廃ホテルは火災事故や殺人事件があったために買い手がつかないほどの事故物件と化し、今もなお建物は自然に崩れるのを待つしかない、そんな状態のあの旧ラブホテルを見て、一体何を学んだのか。もう一度あの殺伐とした雰囲気を楽しみたいってか、益々悪いものをつれてきそうでならない!」と声を大にして反論をすると、烏藤は星弥に説得をし始めた。
「饗庭の言うことは分かる。俺も学習した。でも霊能者として哀しき御霊と対峙することも必要なことじゃないのかなあって思っているんだよ。俺は今でも殺された男性が”助けて”と訴えているようにしか思えない。」
烏藤の話に、星弥は「仕方がない。でもその代わりに絶対!遺体を投げたとされる橋の上で黙祷を捧げること!」と話すとある記事を目にして読み始めるのだった。
星弥がそう話すと、烏藤が知っている限りの情報を話し始めた。
「犯人は暴力団関係者だったんだ。殺された19歳の会社員は犯人たちに連れまわされた上にリンチされてぐったりしているところを、遺体の処理に困るという名目で七ヶ宿ダムに差し掛かる橋の上から遺体を投げ落としたと言われている。だけど詳しい情報までは、2004年の事件だと詳細を知ることは出来なさそうだな。ただやはり伝わっている情報としては、殺された男性は橋の上で暴行を受けた末に殺害され、遺体を七ヶ宿ダムに投げ捨てたという、それだけだ。あとは袋詰めにされた女性の遺体が見つかったり、1993年には男性の水死体が見つかったりと、怨念が渦巻いている場所と言ってもいいかもしれない。」
星弥はそれを聞くと、はあといってため息をつくのだった。
そんな星弥の状態を見て、烏藤がさらに疑問を話すのだった。
「気になるのがこの殺された男性。水死体で発見されたとある。仮に殺害現場がここじゃなく、遺体の処理に困った末に橋の上から捨てたのなら、もうすでに男性は他界された後で、男性の怨念が出るとするならばやはり殺された地だろう。亡骸を捨てられた時と同じ状況がタイムスリップしたかのような、水に何かが落ちる音が聞こえるという現象は亡くなってからだととても考えにくい。」
そう話す烏藤に、星弥がある可能性を示唆した。
「いや違う。殺された男性はダムに突き落とされるまで生きていた。つまり意識朦朧の中で男性は七ヶ宿ダムに投げ捨てられた、最終的な死因は暴行死ではなく溺死だろう。男性は意識が飛んでゆく中で必死に手を上げた、それが心霊現象の一つとして挙げられる湖面から手が出ているというのであれば、全ての話につじつまが合う。男性は瀕死の重傷で何としてでも助けを求めて湖面から手を出した。湖面に男性を投げ捨てる瞬間の音が今でも聞こえる話は、あったとしても男性の残留思念で”橋から突き落とされるまでの瞬間”を音だけで具現化したに違いない。飛び込み自殺ではない以上、橋の付近にいる生者を誘い込むように自らが死ぬまでの一連の動作を繰り返し繰り返し橋の上で行われるとは考えられない。あり得るとしたらこの湖面から手が出ているのと付け加えて言うならば、橋の上に佇み通りゆく人に対して怒りの感情をぶつけるのは、恐らくこの殺された男性ではない。その1993年に水死体で発見された男性の御霊の可能性が捨てきれない。多分殺害と報道されていない以上自殺だろう。袋詰めにされた女性の話も気になるが、殺害された情報もないので果たして?といったところだ。いつの出来事なのか、それすらわからないため、誰かがでっち上げた話だろう。トイレの首吊り自殺や焼身自殺も疑ったほうがいいな、本当にあったらそもそもこの世に未練を遺さないわけがない、彷徨う御霊として現れてもおかしくない。」
星弥の解説を聞いた烏藤は「なるほどね。」と頷きながら納得すると、星弥は「とにかく、この地でかつて凄惨な殺人事件があったことを前提に皆に話をすること。そして若くしてこの世を去ってしまった男性の御霊に対して橋の上で合掌すること。追悼の意さえ伝われば、怒りを買う危険性は無いだろう。ただやはり気になるのが、通る人に対して睨み付ける男性の御霊の存在だ。それだけが気がかりだ。」と話すと、烏藤は「まあ行って見ないと分からないこともあるしね。それに七ヶ宿ダムはダム湖百選にも選ばれているところでもあるから、絶景を見終えたら帰ることにしようぜ。」と話すと、そんな烏藤の様子を見て星弥は鼻で笑った。
「お前はどこまでも考え方が楽観的だな。」
そして夜が明け、朝がやってきた。
2025年5月6日 火曜日。
朝の7時30分ごろに起床した二人は朝ご飯を食べるために、朝食を食べることが出来るスペースへとやってくると、侑斗と長谷川と支倉、芦原と吉原、全員が改めて揃ったところで昨日二人で話し合ったことについて説明を行うことにした。
「身の安全は必ず保障する。殺された男性に対して追悼の意を捧げるのが目的なので皆で橋の上で男性の天国での安らかな眠りを願い黙祷を捧げることにしよう。」
星弥がそう語ると、烏藤が続けて話した。
「今回の東北”慰霊の旅路”において最後の思い出作りになる。必ず取り憑かれないように念入りに霊視を行ったうえで実施したいと考えている。ダム湖100選にも選ばれた絶景を楽しめることが出来るので、殺された男性の追悼と同時に、七ヶ宿ダムでしか見ることが出来ない景色を最後に満喫してほしい。」
二人の説明に一同が納得したうえで、朝の8時40分過ぎにホテルをチェックアウトすると、車で走らせること23分が経過して目的地の七ヶ宿ダムに到着した。
七ヶ宿ダム展望公園の近くにあった駐車場に車を停車させると、まず霊能者である烏藤と芦原が先頭になって歩くと、続けて支倉と侑斗、吉原と長谷川の後ろに星弥が後を追うような形で七ヶ宿ダムのほうへと向かって歩いてゆく。
昨日の一件もあったので、吉原と長谷川の中ではたとえ魔除けのペンダントを身に着けている状態であっても不安は拭えなかった。
そんな二人の様子を見た星弥は「大丈夫だ。必ず俺達で対処する。」と力強く話し遺体が投げ捨てられたであろう橋の上にまで到着すると、一同は湖面に向かって深々と頭を下げて黙祷を捧げた。
「どうか天国でゆっくりと、安らかに休んでください。」
烏藤が天に向かって呟いたところで、橋の上での黙祷を終え、一同はダムの辺りをゆったりと散策してから、再びダムの展望公園へと戻り始めると、記念写真を撮影し終えたところで、一同は七ヶ宿ダムを後にすることにした。
何事もなかったかのようにあっという間に終わり星弥は安心すると出発するまでに自分なりの見解を語り始めた。
「前日の晩に烏藤と話し合っていたのだが、禍を齎すかもしれないと危惧をしていた橋の上で睨み付ける男性の存在を確認するために霊視を行ってみたのだが、手厚く供養されているのだろうか、男性のこの世に対する邪念はやはり感じにくく、また殺された男性もこの地では彷徨っておらず怨念を感じることは出来なかったので既に成仏していると見た。ただやはり遊び半分でこの地で彷徨う御霊達の感情を逆撫でになりかねない肝試しはNGといったところだろう。それをすれば、御霊達の怒りを買う結果になる。橋の上で睨む男性は恐らくだが、そういう若者に対して警告をしていたのかもしれない。ダム湖周辺には事件や自殺とは関係のない浮遊霊が何体かいたが、自然と一体化しているあたりから害は及ぼさないだろう。」
星弥がそう話すと、一同は安心してそれぞれの帰路につくことにした。
JR白石駅まで送ってもらったところで、駅で出迎えに来てくれた烏藤と芦原の二人に「また会おうね!」と笑顔で話しLINE交換をそれぞれ済ませたところで、3泊4日に渡る東北心霊弾丸ツアーは終了した。
福島まで向かう電車の途中、侑斗は改めて星弥に訊き始めた。
「本当に橋の上で睨む男性はいなかったのか?俺も何かいるかなと思って疑いながら霊視したけど、いるかもしれないと思いながらだったけどでもやはり浮遊霊しか見ることが出来なかった。」
侑斗がそう話すと、星弥は「それでいい。心霊スポットだと言って騒がないほうが一番良いに決まっている。それこそが、殺された男性だって、自殺したであろう男性であっても、心から一番望んでいることだろう。”そっとしておいてほしい”とね。噴水で影を見て見つめられたという話も調べたらあったのだが、これは恐らくだが水死体で見つかった男性の御霊によるものだろう。ただ自然と一体化しているので、完全に成仏しており現れた理由としては自分の存在を忘れないでとアピールにしたに過ぎない。湖面へと引っ張っていくような強いエネルギーはないだろう。怖がらなければ問題はない。」と話すと、侑斗は「それを聞いて安心した。」と返事した。
侑斗の答えを聞いた星弥は侑斗に指摘をした。
「やはりまだまだ修行が足りない。これからも引き続き課題を与える。侑斗一人ではやはりだめだな。付き添える指導役も同伴の上で行うことにしよう。」
星弥に告げられた侑斗は「ええ!?まだそんな修業が続くのか!」と言ってただ一人しょんぼりとしながら東京国際空港へと戻ってくると、福岡空港行きの飛行機に乗り佐賀に帰るまでずっとショックの状態のまま帰宅したのだった。
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