アジトで、ソファーでくつろぐサルに質問をするマリブ。
〈マリブ〉君はイサバル湖に行ったことは?
〈サル〉ないよ。見たことはある
〈マリブ〉アティトランは?
〈サル〉あるよ
〈マリブ〉どう思った?
〈サル〉どうって?
〈マリブ〉あの湖は世界で一番綺麗な湖と呼ばれている
〈サル〉そうらしいね、でも至って普通の湖だ。そこまで綺麗だとは思わなかったよ
〈マリブ〉そう。私もそう思う。この世の情報と実際見た時、惑わされる事はしばしばある。もちろん湖は綺麗かも知れないが、実際はそこまでだろう。世界一となぜか書いてしまった。私の中ではモレーン湖だ
〈サル〉何が言いたい?
〈マリブ〉今君を見ている情報、聞いた時の情報は余りにも一致しないからだ。君は普通のサラリーマンのような男と聞いた
〈サル〉間違ってないよ、普通のサラリーマンみたいなものだ
〈マリブ〉君は面白いな、数日だが凄く楽しいよ、久しぶりだ。こんな事は
〈サル〉そうかい? 光栄だね
〈マリブ〉君は小説を読むそうだな、ウィリアム・コツウィンクルを知ってるか?
〈サル〉ああ、ETだろ?
〈マリブ〉そうだ。ウィリアムの作品にドクターラットがある、君はラットだとして被検体だったらどうする?
〈サル〉ん〜 難しな。俺なら何匹か残して皆殺しにするかも、或いは一人だけ残して自分の利益になるように動く
その言葉を聞いて大きく笑うマリブ。
〈サル〉なんで笑うのさ?
〈マリブ〉すまない、面白くてつい
〈サル〉そうかな?
〈マリブ〉逸材だな、いま何時だ?
〈サル〉12時半だけど?
〈マリブ〉どうりでお腹空くわけだ。ラーメンでも作ってくれ
〈サル〉そうだな
ラーメンを作るサル。そこにラディが来る。ラディとロナックは仕事を終えてアジトに戻ってきた。ロナックはすぐにどこかへ出かける。
〈ラディ〉やあ、今日は眠いな。なにしてるんだ?
〈サル〉昼だから、ラーメン
〈ラディ〉マリブに言われたんだろ? ラーメン作れって
〈サル〉なんでわかるんだよ
〈ラディ〉君は女のしりに敷かれるタイプだからな。それぐらいは予想がつく
〈サル〉あそう。ラディは?
〈ラディ〉ぼくはこれから愛車を洗車するよ
〈サル〉そういえばマリブが夜飲みにいこうって
〈ラディ〉マリブが? 珍しい。わかった、呼んでくれ
少し時間が経って、サルは本を読んでいた。ヘミングウェイの老人と海だ。
サルはヘミングウェイも好きで良く読んでいる。
マリブに電話が鳴る。
内容はどうやら仕事だ、悠長に話すマリブ。電話を切ると、マリブはサルに問う。
〈マリブ〉ロナックはどこに?
〈サル〉ロナック? わからないな、出かけてるみたいだ
するとマリブはロナックに電話をした。
〈マリブ〉やあロナック、今仕事を受けた。Mr.サンノウだ。急遽だ、ヴェノムを借りる。大丈夫だ下手な操縦はしない、無傷で返す。モノはあの口座に振り込んでおく
そういうと電話を切る。
〈マリブ〉ゴメンなさいね! サル、今日の飲みはナシで
〈サル〉なにかあったのか?
〈マリブ〉これから仕事になったのよ〜 行ってくるわね。ニーノとラディによろしく
マリブはアジトを出た。急遽の仕事とは、休日なのによく引き受ける。マリブは1人行動をする、言わば狼みたいなものだ。
それに1人で行動したほうがスリルがあって、楽しい。後からニーノに聞いたが「イカれた殺人鬼」とまで言わせるほどだ。
まるで獰猛だが、静かに襲う狼だ。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!