2001年。1月2日、アメリカのフォートワースにあるマンションにて。
夕暮れ時。
チャービルは部屋で本棚から本を1冊取り出した。少し薄めの本だ。
そして、丸いテーブルに置いてある鍵を持った。これから出かけるようだ。チャービルは黒人で、ドミニカ共和国出身。高校2年に上がると同時にアメリカに住み、大学卒業後、本格的にアメリカに移住。大学では映画制作科だった。
さて、でるか。
と、マンションの廊下へ出た。するとタイミングよく友達のグスマンに会う。
やあ、ビル。どこ行くんだ?
ん? グスマンか、今から仕事にいく。
なんだって? 映画行くんだろ?
ああ、仕事終わってからな。さっき仕事が入った。まあでも映画館から近いから大丈夫だ。
わかった。
とりあえずでるぞ。
そう言うと、マンションの外へ出た。
歩きながら、話した。
今日はどこの会場なんだ?
今日はベアン講演会場だ。
あ〜いつものところね!
なあ、まだ時間あるからビーニーズに寄っていいか?
いいよ。
2人はマンションから近い喫茶店、ビーニーズに行くことにした。
店内に入ると、2人はソファーのあるテーブルに互い違いに座る。
そして、メニューを開く。
今日なににするか。
おれはチリかな。好きなんだ。
なるほど。おれはサンドイッチだ、ターキー付きのね。
妥当だな。
なあ、なんでチリなんだろうな。
言いやすいからだろ。
チリ…… チリチリチリね、まあたしかに。
あとはお前みたいなチリ人がチリをチリチリにしたのが由来かもな。
冗談よせ。
なわけ。すみませーん!
チャービルは店員さんを呼ぶ。
はいはい!
と、この店の主人「バーガス」がやってきた。男性だ。
はい、なんでしょう?
おれはターキーのサンドイッチ。
じゃあおれはチリだけで。
かしこまりました。
2人は注文をする。
バーガスはこのフォートワースの街一角を長年支える喫茶店の主人だ。老人だが、若者のような考え方をする。
すると、そこに友達のケリーが来て、話しかけられる。
あら! おはよ! ビル、グスマン!
ケリー、おはよ!
やあ、ケリー。
ケリーはグスマンの隣に座る。
すみません! コーヒー1杯! ホットで。
ケリーはコーヒーを頼んだ。
そだ、ポルトガルはどうだった?
そう! ポルトガル、とてもよかった!
なんだ、ポルトガル行ってたのか?
そうよ。1週間、ゾーイ社長と出張行ってた。
全然気づかなかったな。
それはあなたの頭の中がカタツムリ並だからよ。
…… 。
ケリー、そう言ってやるなって。
あっそ。ところで映画行くでしょ?
いくよ! だけど、これから仕事がある。だから終わってからにする。映画館から近いから。
あら、そうなの。わかった。
と、ここで料理がやってくる。
サンドイッチとコーヒーです。
来たのは女性の店員さん。
あれ? おれのチリは?
君はチリだろ? 遅めだろ?
そうか…… 。
ケリーはコーヒーを啜る。
─── その15分後。
ふう、サンドイッチってうまいよな。
そうね。
今何時だろ?
と、チャービルは腕時計を見ようとする。
あ! しまった! 腕時計を忘れた!
腕時計を忘れの? 今は17時15分よ。
ありがとう、ケリー。
そろそろいく?
そうだな。おい、お前はまだ食べてないのか? 早くしろよ。
うるさいな! いいじゃないか!! 少し待ってろ!
グスマンは怒った。
はいはい。
そして5分後。
食べ終わったぞ。
じゃあ行くか。会計たのむ!
すると、女性の店員がテーブルに金額の書いた用紙を置いた。
おい、行くぞカタツムリ君。
会計はチャービルが払った後、3人は外へでる。
さーて、今日はベアン講演会場だからスグそこだ。
え? 腕時計取りに行かないの?
いいよ、丁度欲しい時計があったんだ。途中で買うよ。
欲しい時計があるのか? どんな時計だ?
歩きながら話そう。
そう言うと、3人は映画館に向けて歩く。
映画館はフォートワース・ダラス空港の近くにある。先程のお店から15分歩いたところだ。
その間、チャービルは時計について、どんな時計が欲しいかを話した。
チャービルの欲しい時計とは、どんな腕時計なのだろうか。
ー ♯1 ビブリオセラピー ー 続く。
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