「……あっ、……待って。お風呂入ってない……」
ゆっくりと上体を倒したシェンフゥがリサの首筋に舌を這わせ始めるのを、身を捩って制止ながら、リサが小声で呟く。
「わしは構わぬよ。この美少女の汗の香も最高じゃ」
シェンフゥはそう言いながら、リサの首筋をしっとりと舐め、艶やかな桃色の肩を舌先でなぞると、不意に腕を持ち上げて腋に顔を埋めた。
「ひゃぁんっ」
腋の窪みをくすぐるように舌先が這わされる。
リサはびくりと身体を震わせて身体を反転させようとしたが、シェンフゥに柔らかく腕を押さえつけられて逃れることが出来ない。
「はぁ……この馨しさ、堪らぬ……」
「あ、あぅ……」
湿った吐息が、リサの腋を微かにくすぐっている。
シェンフゥの興奮を吐息から感じ、リサは脱力して顔を背けた。
視界の端では、シェンフゥの尻尾が、艶めかしくゆったりと揺れている。
その動きとリサの腋を舐める舌遣いが連動していることに気づき、リサは膝を立て、もじもじと内腿を擦り合わせた。
「気に入ってくれたかのぅ?」
爪先がシーツの上を滑る僅かな音で気づいたのか、シェンフゥが耳をぴくりと動かしながら腋に口付けを落とす。
「……ぁっん! くすぐった……」
唇の感触にぞくりと粟立った頬と顎先を、シェンフゥの狐耳が穏やかになぞっていく。
「もう少し強くしてみるかの?」
シェンフゥはリサの反応を味わうようにくつくつと笑い、日に当たっていない白い肌に口付けて吸い始めた。
「……ひゃぅ!? ぁん……、っ、は……。なんで、そんなとこ……っ……ばっかり……」
抵抗しようとしているはずなのに、身体の力が抜けて、言葉を紡ぐことすら難しい。
意思とは関係なく熱くなっていく吐息を隠すように唇を引き結ぶと、息遣いから察したシェンフゥがつと顔を上げた。
「んっ? こっちがいいかの?」
「ん……ぅ……」
頬に手をかけられたかと思うと、唇が押しつけられる。
既に熱くなったシェンフゥの舌が引き結んだリサの唇の隙間をこじ開け、ゆっくりと侵入を始める。
「……ふっ、ぁ……」
息が止まるほど唇を塞がれ、堪りかねて唇を開く。
その隙を逃さずにシェンフゥはリサの下唇に親指を添え、指で歯列を弄びながら深く口付けていく。
「……はぁ、ん……」
舌を絡め取られ、互いの唾液が甘い蜜のように感じられる。
首の後ろから後頭部がじんじんと熱を持ち始め、リサの思考はぼんやりと桃色に霞み始めた。
「……んっ、んぅ……」
油断すると鼻先から甘い嬌声に似た吐息が漏れ、頬はしっとりと濡れて宛がわれたままのシェンフゥの手を密着させていく。
「――そろそろ、こっちも頃合いかのぅ?」
唇の間で囁くように呟きながら、シェンフゥが頬に添えていた手をゆっくりと下へ下へと移動させ始める。
シェンフゥが肌をまさぐり始めているのはわかっていたが、口付けだけですっかり蕩けてしまったリサは、脱力してされるがままになっていた。
「任務が終わったばかりで、疲れが溜まっておるようじゃの」
「……んっ」
「案ずるな。わしが、すぐによくしてやる……」
それがどちらの意味なのかわからずに、リサは薄く目を開ける。
視界には、リサのはだけた胸元に顔を埋めるシェンフゥの狐耳が映し出された。
「え、あ……」
これからシェンフゥがしようとしていることに思い至り、思わず声を上げる。
その反応を待っていたかのようにシェンフゥは、リサの敏感になった尖りにじっくりと舌を押しつけて舐めた。
「あっ、きゃああんっ!」
びりびりと痺れるような快感が触れられている場所だけではなく、腰から背筋を昇るように突き抜けてくる。
「んっ……、ふっ……ぁ、あ……」
身を捩り、枕に顔を伏せたリサは、シェンフゥが与える刺激に堪えるべく、唇を噛んで強く目を閉じた。
「ご主人」
ぎしりとベッドを軋ませ、身体を起こしたシェンフゥがリサの薄桃色の髪を指先で梳かす。
「あ……、っ、なに……?」
シェンフゥの顔がすぐ近くにある気配に目を開ける。
「そう食いしばっておっては、可愛い顔が台無しじゃ。ここはわしらの二人きりの部屋、素直に感じても良いのじゃぞ?」
宥めるようにリサの髪を梳きながら、シェンフゥが眉を下げて額に口付ける。
快の刺激が止まったことで、リサは肩で息を吐きながらシェンフゥを見つめ返した。
「だ、だって……」
宝石のような深い赤色の瞳に、リサの顔が映し出されている。
シェンフゥの瞳に映る自分の上気した顔に気づき、リサはそっと目を逸らした。
「誰かに聞かれたりしたら……」
視界の端でシェンフゥの狐耳がぴくりと動く。
が、それはほんの一瞬のことで――
「……わしは、一向に構わんがのぅ……」
独り言のようにシェンフゥが呟いたかと思うと、再びリサの小さな膨らみをシェンフゥの舌先が攻めた。
「ひぅっ!?」
唇で膨らみを柔らかく挟み込まれ、リサの腰が跳ねる。
むずむずとした感覚に太腿を擦り合わせようとしたが、その前にシェンフゥの膝が割って入る方が早かった。
「あっ、あっ……」
シェンフゥの脚がリサの太腿の間を擦るようにじっくりと動き始める。
二箇所を同時に攻められ、リサは腕を口に当て、噛むようにしながら喘いだ。
「こっちは、まだ強すぎるかのぅ?」
シェンフゥが微かに笑いながら、胸の下の薄い皮膚に口付ける。
「あぅ……、んっあ……」
なだらかな曲線を描くその場所にかいた汗を味わうように、ちろちろと舌先で刺激されるたび、太腿の間がじんじんと熱くなる。
リサのその感覚を知ってか知らずか、シェンフゥの尻尾が、焦らすようにリサの脚を撫でた。
「……っ、シェンフゥ……」
目を開けると、ねだるような目で見てしまう。
すっかり熱を帯びた頬は、這わされたシェンフゥの手が冷たく感じられるほどだ。
「んっ……」
唇を微かに動かしたリサにシェンフゥが応じて口付ける。
手を伸ばすと、シェンフゥもリサの頭に手を回して、より深く唇を合わせた。
シェンフゥの豊かな膨らみが、リサの小さな膨らみを柔らかく押している。
鼻から抜ける熱い吐息と、肌を通じて伝わってくるシェンフゥの鼓動の高まりに、リサも応じた。
「……今日は積極的じゃの、ご主人?」
息継ぎをする間も惜しむように、上唇を合わせながらシェンフゥがリサの目を覗き込む。
「あんたが求めるから――」
「ああ、欲しくて欲しくて堪らぬ」
言い終わる前にシェンフゥが熱くリサを抱き直し、唇を塞いだ。
シェンフゥの手がゆっくりとリサの腰をなぞり、太腿の内側へと迫っていく。
「あ――」
リサがその予感にぴくりと反応したその時。
「入るぞ」
「!?」
ドアが開く音と同時に、女性の声が響いた。
「お愉しみのところ、邪魔して済まない」
ベッドの上の二人を一瞥し、領主アヴェルラ・アルベルティーニが淡々とした声音で告げる。
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