『コミカライズ』ツンデレご主人様とケモミミ従者がゆく魔族討伐の百合旅

エルトリア
エルトリア

10 求められて

公開日時: 2020年9月3日(木) 23:57
更新日時: 2020年10月26日(月) 01:48
文字数:2,129

 

「んっ、んんっ……」

 

 口付けに夢中になるうちに、鼻先からしっとりと湿った吐息が漏れ始める。

 まだ自由の利かない身体のせいで、シェンフゥを抱き寄せることは叶わなかったが、その代わり、シェンフゥはリサを抱きしめ、たっぷりと口付けに時間をかけた。

 

 

「……あ……――」

 

 

 互いの吐息で蕩けるほど熱くなった頬に、ふと夜気が触れる。

 シェンフゥが上体を起こしたことに気づいたリサは、はっとして目を開いた。

 

 

「……わしの気分が、少しはわかったかの?」

 

 

 眉を下げ、切なげな目でシェンフゥが見下ろしている。

 

 

「……馬鹿……」

 

 

 そっけなく答えると、シェンフゥはくつくつと笑い、そのままリサの首筋に唇をあてがい、柔らかな肌を音を立てて吸いながら口付けを落とし始めた。

 

 

「あ……っ、ん……」

 

 

 ついばむような口付けが繰り返されるたび、肌の表面がぞくぞくと粟立っていく。

 快感を呼ぶ前のさざ波のような感覚に、リサは思わず身をよじった。

 

 

「……あっ、あぁ……、たかが生気を吸い取るのに、なんでこんなこと……」

 

 

 もどかしさに、身体の中の熱がふつふつと表面に集まってくる。

 全身がもっとシェンフゥに触れて欲しくて主張しているかのような感覚に、リサは片目を閉じて喘ぐように呟いた。

 

 

「だが、ご主人。たかが生気、されど生気じゃ。そもそも、わしにとっての『食事』は儀式のようなものだと言っておるじゃろう。……それに、たっぷりと時間をかけた方が、おぬしのためにもなるぞ」

 

「……んっ、ぁ……」

 

 

 熱い唇が耳朶を甘噛みし、蠱惑的な声が耳許で囁く。

 思わず声を漏らしたリサは唇を引き結び、強く目を閉じてシェンフゥが与える刺激に耐えた。

 

 

「はぁ……この湯上がりの石鹸の香、少女の汗の香りと混じると至上の媚薬よのぅ……」

 

「ひゃんっ!」

 

 

 耳の後ろを舌先でなぞられ、悲鳴に似た声が出た。

 リサの思いがけない声の余韻を楽しむように、シェンフゥの喉を鳴らすように笑う声が耳許で微かに響く。

 

 

「ここがいか?」

 

「ち、違っ……んぁっ」

 

「では、こっちかのぅ?」

 

 

 耳のかたちをなぞるようにシェンフゥが尖らせた舌を滑らせる。

 むず痒さやくすぐったさとは違う、ぞくりとした感覚にリサは強く目を閉じ、身体の芯で疼き始めた感覚に耐えた。

 

 

「今度こそ二人きり。誰にも邪魔はさせぬ……」

 

 

 リサの我慢を見透かしたように、シェンフゥの尻尾が太腿をゆったりとなぞっていく。

 

 

「ご主人も、我慢などする必要ないのじゃぞ」

 

 

 シェンフゥは荒くなった息遣いを隠そうともせず、リサの衣服を脱がせながら全身にキスを落としていく。

 

 

「我慢なんて……」

 

 

 その欲望を間近で見せつけられ、感じるにつれ、リサの羞恥心は頬に熱を帯びさせるほどに高まっていった。

 

 

「……大体あんたのせいで、力が入らないのに――」

 

「解いてやってもよいぞ? じゃが、今ならわしのせいにして、抵抗しないという選択肢を採ることもできるがのぅ?」

 

 

 言い終わらないうちに、シェンフゥが顔を上げ、リサを試すように見つめてくる。

 

 

「…………」

 

「それとも、己の身体の変化を目の当たりにしたいかの?」

 

 

 そう言いながらシェンフゥが尻尾で示すのは、ほんのりと色づいてきているリサの太腿だ。

 

 

「それとも、されるままではつまらぬか?」

 

「そんなこと言ってないっ」

 

 

 期待を込めた視線を送られて咄嗟に否定すると、シェンフゥはくつくつと愉しげに笑い、身体の向きを変えてリサにまたがった。

 

 

「たまにはご主人から、わしを攻めてくれるのも一興なんじゃがのぅ」

 

 

 逆向きにまたがったシェンフゥが、その顔をリサの太腿の間に埋める。

 

 

「ちょっ、なにやって……。ひゃっ、ぁあああんっ」

 

 

 内腿の柔らかい部分を舌先で強くなぞられ、唇から嬌声が漏れる。

 なにをされているのかわからずに、咄嗟に閉じた目を怖々と開いたが、目の前には下着姿のシェンフゥの半身があるだけで、他にはなにも見えない。

 

 

「んっ、んぅー!」

 

 

 舌と手のひらで内腿を優しく撫でられ、ふとした弾みで快感がびりびりとリサの背筋を駆け上ってくる。

 

 

「あっ、ん……。あぁ、そんなっ、あんっ……や……」

 

 

 喉を突いて出そうになる嬌声を、目の前でふさふさと揺れているシェンフゥの尻尾を強く握ることで堪えていると、ひとしきりリサの内腿を堪能したシェンフゥがくるりと振り返った。

 

 

「おぉ……。ご主人の熱い抱擁に、新たな快感が生まれそうじゃ……」

 

「へ、変なこと言わないの」

 

 

 抱きしめていた尻尾から、慌てて手を離す。

 

 

「あ、あれ……?」

 

 

 はっと我に返ったリサは、いつの間にか自分の身体の自由を奪っていた術が解かれていたことに気がついた。

 

 

「ご主人に求められているとわかって、わしは胸がいっぱいじゃ」

 

「求めてなんか――」

 

 

 あの嬌声と尻尾への抱擁の後では、まるで説得力がない。

 リサが観念して口を噤むと、シェンフゥがゆったりとリサをまたぎながら顔に近づき、額を合わせるようにして目を覗き込んできた。

 

 

「しかし、わしは強欲なのじゃ……。もっと欲してはくれぬかのぅ」

 

「そんなの……どうやって……」

 

「では、身体に聞いてみるかの?」

 

 

 目を逸らすリサにシェンフゥが口付ける。

 深く這入はいり込むように口内を探る口付けに、リサも求めるように舌先を伸ばす。

 シェンフゥはそれをもてあそぶ、ようにリサの舌や歯列をなぞって応え、追いかけ合うような口付けが交わされた。

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