ホラー短篇集

HasumiChouji H
HasumiChouji

悪いのは俺じゃない

公開日時: 2022年1月10日(月) 16:35
更新日時: 2022年1月10日(月) 16:37
文字数:946

少し前に軍事独裁政権が倒れたある国。

だが、当然ながら、生きる為、あるいは社会的立場からやむを得ず、あるいはちょっとした利益の為に、ロクデモない政権の尻を舐めてた奴らも居て……。

「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「pixiv」「Novel Days」「ノベリズム」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。

「貴方が、旧国営放送の番組で『日当を渡されて民主化デモに参加した』と証言した方ですよね?」

「おい、誰だ、あんた?」

「まずは私の質問に答えて下さい。この映像に写ってるのは貴方ですよね?」

「ま……待て、何でだ……? 顔にはボカシが入ってた筈……」

「旧政権が倒れてから、旧国営放送の査察が行なわれましたよね? その時に画像処理や編集をする前の元データが見付かったんです」

「そ……そんな……馬鹿な……」

「で……これは、貴方ですよね?」

「あ……す……すまん、日当をもらって嘘を言ったんだ……。民主化運動のイメージを落す為に……」

「なるほど……」

「納得したんなら解放してもらえないかな? 悪いのは俺じゃない。俺に嘘の証言をしろと言った連中だ」

「でも、別の意味でデモに参加してましたよね?」

「へっ?」

「貴方に嘘の証言をしろと言ったのは誰ですか?」

「えっと……」

「何故、嘘の証言をしたのが貴方なんですか?」

「た……たまたまだよ……たまたま……」

「ああそうだ。旧政権時代の貴方の職場の上司とも、ちょっとお話をさせていただきましてね」

「はっ? おい、まさか……?」

「貴方の上司は素直に全てを話してくれましたよ」

「お……おい……行方不明になってるチーム長は……まさか……」

「まあ、ちょっと、この映像を観て下さい」

「え?……おい、これ……?」

「この民主化デモ弾圧をやってる機動隊員は貴方ですよね?」

「違う。違う。違う。違う。違う」

「この映像の中で、催涙ガス弾を撃ってるのは貴方ですよね? 記録が残ってましたし、貴方の上司も貴方だと言ってました」

「い……いや……その……催涙ガス弾を撃っただけだ……。あの時の民主化デモで出た死人は……俺のせいじゃない」

「わかりました。では、催涙ガス弾で人が死なないか実験してみましょう。実験の結果、貴方が生きていれば、貴方を解放します」

「お……おい……待て……何を言って……おい、それ……」

「ええ、貴方があの時に使ったのと同じガス弾の射出機です。御安心下さい。ガスが入ってない訓練用の弾丸で実験しますので」

「ちょ……ちょっと待て。あんた、それは、そんな風に使うモノじゃね〜ぞ。ガス弾は斜め上に向けて……」

「は? 何言ってんですか? あの時、貴方はに向けて、したじゃないですか」

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