彼の身に起きたのは……妄想の産物か、それとも超常現象か?
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何だ? どうなってるんだ?
クレジットカードの明細を見ると、いつもの月の何倍もの請求額だった。
ある問題を起こして、大学の正採用の教員から非常勤講師に格下げになり、収入が減った途端にこれだ。
一体、俺は、何にこんな金を使ったのだ?
えっ?
明細を良く見ると、SNSで相互フォローしている人達が開催してくれた「鴨葱こと内山雄二さんを励ます会」の日に開催場所だった飲み屋でとんでもない額を使っていた。
俺はSNS上で「鴨葱」と名乗っていた。
そして、数ヶ月前までは、当時の政権を擁護するような投稿を多くやっていた。
その際に、筆がすべって……いや、PCのキーボードやスマホの画面からの入力だが……あの頃の政権を批判していたある女を揶揄するような事を書いてしまった。
その投稿には、沢山の「いいね」が付き……「いいね」中毒になった俺は……。
しかも、俺はタイミングを見誤った。
当時の政権は、ある失敗が理由で、ほんの1〜2週間の内に「支持率史上最高」から「支持率一〇%」に急落したのだ。
俺は、当時の政権の支持率低下は一時的な事かマスゴミの虚報だと思っていた……。
しかし、その考えは間違いだった。首相は、あっと云う間に変り……そして、前政権が隠していた不祥事が次々と明るみに出て……。
しかも、しかも、更に迂闊な事に、俺がセクハラまがいの事まで書いて揶揄してた女は……分野は違うが、俺より遥かに有名な研究者だったのだ。
俺の勤務先の大学には、あの女が雇った弁護士から、内容証明付の郵便が送られてくる事になった。
「鴨葱さんは悪くないっすよ。最近の風潮がおかしいだけっすよ。俺達は鴨葱さんを応援してますから」
SNSで相互フォローしてくれてた人達は「鴨葱こと内山雄二さんを励ます会」と称する飲み会を開催し……しかし、飲み会の代金は酔っ払ってた俺に払わせたらしい。
クソ、お前らが散々「いいね」したせいで、俺はより過激な事を書くようになったんだぞ。
それなのに、何て真似を……。
そう思いながら、SNSを見ると、フォロワー数が記憶より2〜3桁少なくなっていた。
おかしい。
IDやハンドルを覚えている奴を検索してもSNS上に、そんなアカウントは無かった……。
数少ないヒットしたアカウントは……俺の知らない誰かだった。
メールやLINEで連絡を取ろうとしても……メールはエラーで返って来るし、奴らのLINEのアカウントも消えている。
奴らが「いいね」してくれた俺の投稿は……「いいね」数が、これまた記憶より1〜2桁少なくなっている。
SNS上に有るのは俺への罵倒ばかりで……擁護してくれる投稿は……稀に有ったが、明らかに頭がおかしい奴がやったモノばかりだ。
一体、何が起きてるんだ?
最後の手掛かりは……。
俺は「鴨葱こと内山雄二さんを励ます会」が行なわれた飲み屋に電話をかけ……。
「あの……先月の○日に、そちらを利用した者ですが……」
だが、その飲み屋の店員だか店長だかの一言で……俺の意識は……。
「ああ、覚えてますよ。たった1人で店を借り切った方ですよね」
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