では、思いもよらぬ思想の持ち主が社会の多数派と化した場合は……?
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『萌え系Vtuberが、あの省庁とコラボするなんて、「オタク向け」「萌え系」のジャンルそのものを潰す気か?』
今日も今日とて、SNSで、ウチの会社が運営しているVtuber「ロボ美ちゃん」がdisられていた。
声だけデカい少数派とは言え困ったモノだ。
この手の事を言うのは「御光臨」以前はフェミ婆ァだけだったが、最近では男のオタクにも増えている。……いや、数は減っている筈だが、声を上げるヤツは増えている。
『萌え系Vtuberと例の省庁のコラボを擁護してる議員のほとんどは、あのカルト宗教との繋りが噂されてる奴らばかりじゃないか』
馬鹿馬鹿しい。
今や、カルト宗教はお前たちだ。
冷静で理性的な俺達が、カルト宗教にハマったりする訳がない。
感情的で非論理的なお前たち自身がカルト宗教に引っ掛かる事を心配しろ。
いや、それどころか、あいつらの言ってる事は、日に日にカルト宗教じみてきて……。
『何でしたら、有能な元検事の弁護士を紹介しますよ。目立っているヤツを選んで、表現の自由の敵として見せしめの為に民事で訴えればいい。裁判官に手を回す事も出来ますよ。裁判費用も機密費から出しましょう』
Web会議アプリで打ち合わせをしていた「崇神省」の課長は、そう言ってくれた。
「御光臨」の後に、新しく作られた「崇神省」は今や他の中央省庁どころか立法・司法さえも指揮・監察する権限を与えられていた。
「ありがとうございます。しかし、差し出がましいとは思いますが『神を崇拝する事に意味などない』などと主張しているカルト宗教を公安警察のカルト関係の部署に取締っていただく訳にはいかないんでしょうか?」
『既に動いていますが……あのカルトは明確な教祖や指揮系統……下手したら組織すらない全く新いタイプの「カルト」ですから……公安さんの今までのノウハウが通じないみたいでして……時間がかかりそうです』
そうだ……。奴らはカルトと言うより、ネットを介して広まった一種の陰謀論だ。日に日に勢力を弱めているとは言え、まだ、かろうじて社会的影響力を持っている。それに対抗するには、ネット工作も必要になる……。その「ネット工作」の1つが、「崇神省」とウチの「ロボ美ちゃん」とのコラボなのだ。
ウチの会社は「ロボ美ちゃん」を通じて、日本国民に、この世界で唯一実在が確認されている「神」への信仰を呼び掛けている。
『ロボ美ちゃんで〜す。礼拝の時間ですよ〜』
その時、俺のスマホから声がした。同時に、WEB会議アプリで打ち合わせをしていた崇神省の課長のスマホからも。
『私のスマホにも入れてますが便利ですね』
「あ……ありがとうございます」
ウチの会社が作ったスマホアプリは……「神」が御座す方向を指し示してくれていた。
俺は床に座り、アプリが指し示す方向に土下座し……。
その方向に有るのは、このビルの窓……そして……その窓の先には……。
このオフィスを借りる時に、社長室から「神」の御姿が見える物件を選んだのだ。
あの記念すべき日に東京湾に御光臨された「神」は、今や富士山すら小さく思えるまでに成長され……地球上のどの生物のものとも似ていない巨大な翼を広げ、オウム貝を思わせる御尊顔に有るいつくもの御眼で我ら卑小で愚かな人類を見守り給うていた。
ああ……この神々しい御美姿の御方が……カルト宗教の信者どもの言うような「人類に何の関心も持っていない単なる巨大な化物」の筈がない。
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