ある能力を持つ人達が多数派になった社会。
しかし「健常者」になる事を拒む「障害者」達もまた居たのだが……?
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「理解出来ません。何故、健常者になる事を拒まれるのですか?」
その役人は諭すようにそう言った。
「い……いや、待って下さい。俺が子供の頃まで、あんな能力なんて無くても、普通に生活が出来てた……」
「最早、あの能力が無ければマトモな生活は無理です。時代は変ったんです。時代に適応して下さい」
「い……いや……、危険地帯を柵か何かで囲って『立入禁止』の看板か何かを立ててくれれば、我々だって安全に暮せる筈です」
「あのですね。危険地帯は年々増えてるんです。少数派の為にそんな事をしていたら、役所の予算がいくら有っても足りません」
「ちょ……ちょっと……待って下さい。やっぱり、あの能力そのものがアレを出現させたり危険地帯を増やしてる原因なんじゃ……?」
「だとしても、あの能力を持ってない人達の方が最早少数派なんですよ。そして、貴方を少数派でなくする方法が有る。最早、貴方達の言っている事は……伝染病が流行っている時に自分の意志でワクチンも打たずマスクもしないようなモノです。貴方達は我儘な狂信者です」
ウィ〜ン……。
脳改造装置の起動音。
「我が国の国是は『自己責任』です。では、手術の代金は、貴方の銀行口座より引き落しますので……」
無理矢理、役所に受けさせられた霊感付与手術を終えてから……俺に見える世界は変った。
そこら中に本能的にヤバいと判る悪霊が満ちていた。
そして……悪霊と目が合うと……やめろ……何が……「最早、霊感が無いと安全に生活出来ない」だ。
嘘だ。
おい、「健常者」どもこそ……こんな状態で、どうやってマトモに生活してたんだ?
そりゃ、「危険地帯」を柵で囲うのは無理だ。
最早、世界中が危険地帯だ。
ここまで悪霊だらけの世界では……霊感が有っても焼け石に水だ……。
喩えるなら、政府が言ってるのは「あちこち地雷が埋まってるので、国民の皆さんは自費で地雷を見付ける能力を会得して下さい」だ。
だが……周囲が地雷で埋め尽されていたなら……地雷の場所が判っても、地雷を避けて歩いていけるか?
それに、俺は、まだ「霊感」を巧く使い込なせていない。
霊感付与手術後に、霊感をコントロールする訓練をマトモに受けさせてもらえずに、退院させられたのだ。
そのせいで、悪霊どもは、俺に「見られている」事に気付き……。
そして、俺にゆっくりと近付き……やがて……。
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