差別のせいで、誰かを殺すのも、誰かに殺されるのも、どこかに遠くに居る俺やあんたと関係ない他人だと、いつから勘違いしていた?
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「あのねえ、いい加減にして下さい。我が村に、そんな過去の汚点は有りません」
「しかし……警察の記録に押収された証拠品の事が……血塗れの鎌とか……」
「だからね、裁判の記録を良く調べて下さい。ほら、調べて無いでしょ? 我が村の村民が、貴方の言われるような容疑で有罪になった事実は無い筈です」
「ですけど、その後の聞き取り調査でも、被害者に『十五円五十銭』と言わせた、と云う証言が……」
「何度訊いても同じですよ、『関東大震災の時に、都市部から避難してきた朝鮮人を、我が村の者が殺した』なんて事実は無いと言ってるでしょ」
「しかし、関東大震災の少し後に、貴方の村の方で、懲役に行かれた方が異常に多いんですが……」
「しつこいな、貴方も……。その裁判の記録を良く読めと言ってるでしょ。被害者は日本人だ。よく有る喧嘩ですよ」
「喧嘩ですか……」
「そうですよ」
「でも、被害者の名前ですが……この辺りには余り居ない名字ですよね? う〜ん、九州南部とか沖縄に多い名字ですよね?」
「え……?」
「だから、貴方の言う裁判の記録、ちゃんと調べたんですよ」
「お……おい、待て……」
「では、取材に応じて頂けますか?……関東大震災の直後に、近隣の都市部に居た出稼ぎ労働者が、この村に避難してきた際に、この村の人達が彼らの使っていた方言を『朝鮮訛り』だと勘違いして『不逞鮮人』として虐殺した事件に関して……」
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