ダイスを捕らえ攻撃しようとしたその時、トウマの後ろの方で銃声が聞こえ……。
トウマは荷馬車に寄りかかるように身をひそめ、ダイスが来るのを待った。
(相手は警戒してくるはず。それに、あの女が荷馬車の中で、大人しくしているとも限らない。だけど……)
するとダイスが、キョロキョロと辺りを警戒しながら、荷馬車のものかげから、顔を出した。
それを確認するとトウマは、すかさずダイスの足もと目掛け、
《トリプルチェーン!!》
そう呪文を唱えると、紫の魔法陣が現れ、そこから3本の鎖が飛び出し、ダイスの両足と腰に巻きついた。
「クッ、これは!?」
(よしっ!捕らえた。後は……)
トウマは即座に、鞘に収まったままの剣を持ち、ダイスの懐に入った。
(イケる!)
トウマは瞬時に、鞘に収まったままの剣を、左下から右上に、振り上げようとしたその時。
後方から『パァーン!!』と銃から弾丸が放たれた音がした。
トウマはその音を聞き、咄嗟に地面を蹴り、ダイスを押し倒し、迫り来る弾丸を避けた。
だが一歩おそく、トウマの右肩をかすめた。
ダイスは倒れた拍子に、頭を地面に叩きつけ、気絶してしまった。
トウマは右肩を押さえ立ち上がり、弾丸が放たれた方へと視線を向けた。
するとクオレが、数メートル離れた場所で、トウマに銃口を向け立っていた。
「あら。これは、なかなか可愛い坊やじゃない。殺すのは惜しいはねぇ」
「クッ!坊やって……オレは……」
トウマはクオレを睨みつけ、自分は女性だと言いかけたが、言うのをやめた。
下手に自分の性別がバレ、その事がきっかけで、色々と面倒な事になるのも嫌だった。
それと、召喚主であるアルベルトに、女性である事は、他の者たちには悟られるなと、言われていたからだ。
「あら?気に触ったのかしら。でも男にしては、綺麗な顔をしているわね。それに身体もそうだけど……」
そう言いながら、クオレはトウマを品定めするような目で見た。
「オレが女のようだと、言いたそうだな」
「クスッ。そうねぇ。それにしても、よくその体格で、ダイスとビスを倒す事ができたわね」
「何が言いたい?」
「そうねぇ。あたしは、坊やの目的が知りたいのよね」
「目的?」
「そう、この荷馬車……いえ、あたし達を襲った理由。それに、坊やの身なりを見る限り、裕福そうなのでねぇ」
「……」
そう言われ、どう答えるか迷った。
(流石に、しゃべるうさリスを、もふギュッ!したいからとはいえない。いやそもそも、それだけの理由じゃなかった!)
「どうしたのかしら?お金、目当てじゃない事は明白よねぇ」
「ああ。オレはたまたま、この荷馬車を見つけ近づき、お前たちの話を聞いた」
「という事は……なるほどね。あたし達を倒した後、この荷馬車の中の、動物たちを助ける事が、坊やの目的ってわけねぇ」
「そういう事だ」
「ふぅ〜ん。ねぇ、坊や。あたし達と組まない?悪いようにはしないわよ」
そう言われ、トウマは首を傾げた。
「何でお前たちと、手を組まないとならない!?」
「フフ……その剣の鞘に描かれている紋章は、ルディ家のものよね?」
そう言われトウマは、手に持っている鞘を見た。
「……」
(そう言えばこの剣って、屋敷を出る前に、アイツがオレにくれた物。
ってか、気づかなかったけど。これ、ルディ家の紋章だったんだな)
「……って事は、坊やはルディ家の者って事かしら?それとも、その剣は盗んだ物……とか?」
「……」
「そうねぇ。確か領主であるアルベルト・ルディ伯爵は、結婚などされておらず、御子様はいなかったはずだけど……」
そう言うと、トウマをジーッと見た。
「そ、それは……」
「盗んだ物にしては、あまりにも堂々と、使っているようだし」
(てか、仲間にって、この女なにを考えてるんだ?)
「まぁ、その事について追求しても、仕方ないわね。だけど、その歳で、それだけの腕を持ってるって事は、ただ者ではないわよね?」
「……さっきから、何が言いたいんだ?」
「あらあら、ただ、色々と坊やの事について、知りたかっただけよ」
「知ってどうする?」
「あたしの勘が坊やを、敵にまわさない方がいいと、言っているのよね。だから、仲間にならない?」
「オレはお前たちの、仲間になるつもりはない!それに、この剣は盗んだ物じゃない!」
「なるほどね。それが盗んだ物じゃないなら、やっぱり、ルディ家の縁の者って事になるわね」
「それは……」
トウマが、どう答えたらいいか悩んでいると、クオレが更に聞いてきた。
「まさか!?坊やが、困った顔をしているという事は……。アルベルト様の隠し子!」
そう言われ、トウマの顔が青ざめ、頭を抱えながら、
「……アルベルトの隠し子って……いや、違う。てか、それだけは、ぜったい勘違いでも嫌だぁ〜!!」
と、絶叫してしまった。
「ん〜、それにしても変ね。アルベルト様の事を呼び捨てにするって……。どういう関係なのかしら?」
そう言いながら、クオレは警戒しつつ、トウマに少しずつ近づいていた。
(しまった!つい嫌な事を言われて……だけど、この場合、どう答えたらいいんだ?)
読んでくれてありがとうございますヽ(^o^)
『オレ何やってるんだ?よりにもよって……だけど、このクオレって、何者なんだ?やたらと色々と詳しいけど』…by,トウマ
『クスクス。坊や、あたしはねぇ。……フフ、言おうと思ったけど、やっぱりやめておくわね。後でその事について教えてあ・げ・る!』…by,クオレ
『……Σ(ll゚Д゚ll) (気になるけど……何か後が怖そうだし、これ以上、聞くのはやめておこう)』…by,トウマ
と、いう事で……∩^ω^∩
では、次話もよろしくお願いします(*^ω^*)
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