「モ、モコ、そんな酷いこと言っちゃダメだよ!」
「だっておいしくなかったもん!」
まぁ、本人に言わなかっただけマシか……。
「リ、リリーさんは、もしラウルさんが再婚するって言ったら、反対なんですか……?」
リリーさんは目を伏せる。
「反対というか……。 こんなこと言っちゃ何だけど、よほど出来た人とじゃないと嫌よ」
「そうなんですね……」
「兄さんの奥さんが亡くなってるのは、ハヤシさんも聞いてるでしょ?」
「あぁ、まぁ」
テオドールさんから聞いているし、その後随分苦労した、とも聞いた。
「亡くなった奥さんはね、本当に兄さんや子供たちを大事にしてくれてね。 それに私たちのことも。 その奥さんが亡くなってからも色々あったし、兄さんは……。 そうね、ハヤシさんがこの村に来た頃にようやく立ち直ったのよ。 だから、中途半端な覚悟の女に兄さんの人生をかき乱されたくないのよ」
まぁ、俺が口出すようなことじゃないし、家族にしか分からないこともあるだろう。
それに行方不明の弟さんのこともあるし、この家族には本当に幸せになってもらいたい……。
俺からこれ以上の情報を得られないと思ったリリーさんは、さっさと厨房へと仕事へ戻った。
「はぁ……」
なんだか疲れてしまい、俺は深くため息をついた。
「どうしたの?」
モコが心配そうに見上げる。
「ん? なんでもないよ?」
俺はそう言ったが、何だか気疲れしてきた。
「もう、おうちにかえる? モコ、どっかにあしょびにいきたい!」
はぁ〜、そっかぁ……。 そうだよなぁ……。
「モコ、どうする? アースドラゴンの討伐にでも行ってみるか?」
「いくーーー! モコ、いーーーっぱいたおしゅよ!」
ま、気分転換にでも行ってくるか。
俺とモコはアースドラゴンの討伐のため、荒涼とした大地に降り立った。
村から離れてはいるけど、アースドラゴンが大発生している目撃情報の場所近くまでは、移動魔法を使い行くことが出来た。
「なんだかうらぶれたというのか、なんと言うのか……」
そこは酷く荒れ果てた大地で、最近平和ボケしている俺にこの世界の現実を見せつけてくるような不気味さだ。
「あしょこのなかにいるよ」
モコが指さしたのは、木が腐って覆いかぶさり、朽ち果ててよく見えない地下への入り口だった。
「えぇ……」
入りたくない……。
たったか進んで行くモコのあとにならい付いていくと、人一人がギリギリ通れるくらいの穴をほふく前進で進み、道無き道の終わりはダンジョンに通じていた。
そのダンジョンには、アースドラゴンばかりがランクごとにゴロゴロ居て、一番弱くてもBランクと中々の厳しさ。
6階に着く頃にはAランクがゴロゴロいて、並の冒険者ではまず到達できないダンジョンだった。
「な、なんか凄いね……」
俺がそう言うと、モコは余裕しゃくしゃくという風情で、呑気に言った。
「モコ、きょうはおしゃかなたべたい!」
「う、うん? お魚? あぁ、もうちょっとしたらね……」
Sランクは出ませんように、出ませんように、と俺は神様へ心の中でお祈りしながら歩いていると、なにかカツン!と足に当たってそれは飛んで行った。
「ん? なに? なんか蹴っ飛ばしたな……」
暗いのでライトの魔法で足元をよく見ると、人間の骨がゴロゴロ転がっていた。
「嘘だろ……」
頭蓋骨だのアバラ骨だの、パッと見、十数体の人骨や服があり、ネックレスにしてあるギルドカード(ドッグタグ)はそのまま朽ちることなく、そのまま残っていた。
「可哀想に……」
俺は一番近くに落ちているドッグタグを拾い見てみると、「ユーウェイン/チコル村」と掘られていた。
え、これってラウルさんの弟じゃ……。
俺は全身から血の気が引くのを感じていた。
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