フェンリルはあくまで伝説の魔獣で、神の遣いと言われているということだった。
神の直属の聖獣の長がフェンリルで、各地に散らばった七聖石をフェンリルが集めると世界は救われる、という伝説があるらしい。
日が上がり夜営の片付けをしている間もジョシュアは興奮冷めやらず、ひたすらフェンリルが実在するなんて、と喋りまくっている。
っていうかコイツ、すげぇ喋るな。
「でも、なんでまたアンタと一緒にいることになったんだろう」
「そんなこと言われても、俺だって聞きたいくらいだよ」
ホント、俺こそ謎だ。
異世界から来たというところは伏せているけど、それ以外は全てジョシュアに知られている。
「なんだか、面白いことになってきたな……」
ジョシュアはなんだか、気力に満ちている。
「っていうか、モコこんなにデカいんだったら背中に乗せてもらえば楽なんじゃない?」
「へ? でも、人に見られたらマズいじゃん」
「誰がフェンリルだなんて思うとおもう? シルバーウルフでもこれくらいの大きさのも稀にいるし」
「でも、ジョシュアはフェンリルって気付いたじゃん」
ジョシュアは不敵な笑みを浮かべた。
「だって、今までのモコのこと見てたら普通ピンと来るでしょ」
あぁ、そりゃそうか。
「この姿のモコを見かけられても、シルバーウルフがテイマーされてるだけだと思うって」
テ、テイマー……!! 異世界ワードだっ!!
「テイマーって誰でもなれるの!?」
「そんなの誰でもなれるわけないじゃん」
「スキルってこと?」
「はぁ!? んなわけないだろ? スキルなんか関係ない」
ふぅ〜ん。 まぁ、地球だって犬猫飼うのに特別な免許も資格もないもんな……。
「モコ、どう思う?」
「う〜〜ん? たかふみがいいって言うならいいよ!」
「本当に? そんな簡単にいいの?」
「うん!!」
「モコもこう言ってるんだし、いいんじゃない?」
ジョシュアはモコに乗ってみたくてうずうずしていた。
ちなみにモコは、SUVより余裕でデカい。
「じゃあ、ちょっとだけ乗せてもらうね?」
「うん!!」
それは間違いだった。 尋常ではない速さでモコは俺たちを乗せて走り出し、何日もかかるところを一日で目的の港町・ヒジャーバへ辿り着かせてしまった。
俺とジョシュアはモコ酔い? で死ぬ目にあい、俺の腰は久々に砕けるところだ。
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