レオンハルトとトバイアスのイケメン二人組みは、地球のものに魅了されている。
食べ物はもちろんのこと、孫の手、ツボ押し、アイマスク、ひんやりシート……。
日本にいるときは特段何とも思わなかった品々も、初めて経験した異世界人には強烈みたいだ。
まぁ、外国人でも孫の手なんかは知らないだろうけど。
というか、レオンハルトはまだしも、トバイアスも案外グイグイ来る男だった。
馬車が別とはいえ二人とも普通に俺たちのテントや馬車に入ってくるので、ツボ押ししてれば「それ何ですか」と興味津々で使ってみたがる。
「ハヤシさんの故郷は、随分面白いモノを売っているんですね」
「あぁ〜、そうかもしれないですね」
「ご商売始められれば、大儲け出来ますよ」
「それイイじゃん! オレらも噛ましてくださいよ〜」
人との距離感が分からない俺は、こういう奴が本当に苦手だ。 というか、どうしていいか分からなくなる。
今まで気づかなかったけど、確かに商売にはなるかも……。
でも、海竜事件で大金を手にして以来、金儲けにまったく興味が無くなっている。
ハッキリ言って今の俺は、成金、大金持ち、ビリオネアだし、こんだけありゃ、死ぬまで苦労しないだろうう。
「まぁ、商売は、ハハ……」
という全く回答になっていない返答で返した。
「勿体なくないッスか?」
「いやぁ〜、ハハハ……」
こんな会話を日々しながら、王都へ着いた。
その旅の間、モンスターはそれなりに居たけど、レオンハルトとトバイアスが退治しまくり、かなり強い。 襲われている行商人を救い、村を救い、町を救った。
俺、必要ないじゃん。
そんなこんなで到着した王都は、栄えているなんてものではない。 マリタなんて田舎に思える。
旅の途中で見た、チコルよりも悲惨な村なんていくらでもあったというのに、この差にいいしえぬ拒否感を感じてしまう。
城へ着くと迎えの使者が十名ほどおり、あれよあれよと豪華絢爛な客室に通された。
「ただいま、責任者が参ります。 しばしお待ちください」
「はぁ」
「たかふみぃ、しゅごいおへやだね!!」
凄いなんてもんじゃない。 金ピカだ。 それにしても、気づいたらイケメン二人組みもいなくなってるな……。
モコと二人で部屋の中をキョロキョロ見ていると、浅黒い肌の男が部屋に入ってきた。
「わたくしは摂政をしております、オーガスタスと申します」
オーガスタスと名乗るその細身の男は、どことなく冷たい空気を纏っている。 目は切れ長で、真っ黒い瞳が吸い込まれそうだ。
「遠路はるばる起こしいただき、誠にありがとうございます。 王も大変、喜ばれております」
「はぁ」
「わたくし、まさか生きてる間に本物のフェンリルにお会い出来るなど、思ってもおりませんでした」
あ、これ、本物のピンチだ。
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