異世界のんびり放浪譚

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第40話 MK5 (前編)

公開日時: 2022年4月5日(火) 22:33
文字数:1,841

 翌日、受付のお姉さんに伝書局の場所を地図に書いてもらい、俺たちは三人で向かった。

 古めかしけど威厳のある建物の一階に、伝書局は入っている。 広いフロアで、局員の人たちは忙しそうだ。 お客さんも結構いるので、繁盛しているらしい。 フロア奥のほうに伝書鷲の檻があるけど、鷹は一匹しかいないみたいだな。


「どちらまで?」

一人だけ手が空いていた女性に声をかけると、行き先を聞かれた。

「チコル村まで二通お願いします」

「では、一通につき金貨二枚ね」

「えっ?」

「金貨二枚だけど?」

 受付の中年女性は、面倒そうに言った。

 感じ悪いな〜。

「何日くらいで着くんですか?」

「往復? 片道?」

 ラウルさんからの返事が必要だから、それって往復ってことでいいんだよな?

 つーか、言い方にトゲがある。

「じゃあ、往復」

 と、怒ってますよアピールをしながら俺は言った。 モコはその様子をポカンとしながら見ている。

「往復ならさらに金貨二枚追加だから」

 そういうと、片手を出してカネを催促してきた。

 なんなんだ、この女性は……!!

 俺はカネをわざと彼女の手の平ではなく、彼女からは取りずらいところに置いた。

 女性は『あぁん?』という顔で不服そうにカネを回収し、何やら事務手続きをしている。

「いつチコルに着きますか?」

「見ればわかると思うけど、今は鷹がいないんでね。 順番待ちの状態だから、いつになるかなんて分かんないわね」

「え? 奥に一匹いますよね?」

 俺がそう言うと、女性はフンッと鼻で笑った。

「一匹しかいないのに、街のお偉いさんでもないような人の郵便を出すわけがないでしょ?」

 なんだ? 俺は喧嘩を売られているのか?

 日本の感じの悪い公務員より、タチが悪いじゃないか……。

「他の鷹が戻ってきたって、先に申し込んでる人が何十人もいるんだからね。それが終わるまで大人しく待ってな」

 その女性はそう言いながら、シッシッと手で追い払おうとしている。

 マジか……。 これ、キレていいのか?

 すると、それまで俺の後ろでジーッとしていたジョシュアが俺を軽く突き飛ばし、彼女の前の場所に立った。 ヨロヨロとその場をどくと、ジョシュアは喚き散らし始める。

「おばさんさぁ〜、何なの? さっきから聞いてりゃその態度〜。 怖いんですけど〜」

「こっちは客なんだけど? そのカネで食ってるクセに、舐めてるわけ?」

「自分が不幸だからかなんだか知らないけど、人に当たらないでくれる〜?」

 いいぞジョシュア!! 本領発揮だっ!!

 女性の顔はみるみる赤くなり、茹でたこのようになってきた。

「な、なんなの、この子……! 大人になんて口きくの!」

「おばさんこそ、誰に口聞いてると思ってるの? 俺は聖アルフォンソ騎士団の人間なんだけど?」

「せ、聖……。 あんたみたいなガキが入れるわけないでしょう!?」

 そこへ責任者と思われる、気の弱そうな中年男性が現れた。

「あ、あの……。 どうされましたか?」

 おばさんがまた喚き出そうとしたので、俺は手で遮る。

「あの〜、こちらの女性の接客態度が酷くてですね…… 」

「し、失礼なっ……! あんたたちこそ聖アルフォンソ騎士団なんて、嘘ついて!!!」

「せ、聖アルフォンソ……」

 中年男性が驚いていると、ジョシュアがギルカードをその男性に見せた。

「た、大変失礼いたしましたっ!! ほら、あなたも謝りなさい!!」

「そ、そんなのニセモノでしょ!?」

「いい加減にしなさい! お客様方、本日は大変失礼いたしました! お詫びは改めてお伺いさせていただきます!」

 そういうと、男性は深々と頭を下げた。

「あの〜、それは別として、郵便はいつ送って頂けますか? いつになるか分からないと言われたんですが……」

 俺がそう聞くと、男性は吹き出る汗を拭いながら言う。

「もちろん本日送らせていただきます!」

 なんだか気分が悪いけど、今日送れることになったのは良かった……。

「後日、謝罪にお伺いいたしますので、お名前やご住所などお教え下さいますか?」

 俺はクレーマーみたいかなと気が引けたけど、ホテルと俺の名を伝え、郵便局を後にした。


「あのおばさん、しゅ〜ごく怒ってたねぇ〜」

「うん、そうだね〜。 ところでジョシュア君、聖アルなんとかってなに?」

「聖アルフォンソ。 俺のいる討伐隊の名前」

「なんか凄くあの男の人驚いてたけど、有名なところなの?」

「Aランクの勇者が何人かいるから、有名」

「へぇ〜、そんなところに所属してるなんて、ジョシュア君すごいんだね」

 ジョシュアは不貞腐れた顔をしながら、

「……。 凄いのは俺じゃない。Aランクの勇者が強いだけ」

 と、小さく呟いた。


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