それから毎日俺たちはラーメン屋で働き、連日忙しい日々を過ごし、それなりに楽しい日々を過ごしていた。 まぁ、異世界にきてまで俺は何やってるんだろう、と唐突に思うときもあるんだけど。
ジョシュアは討伐隊へ戻ることは確定していて、別れの日が徐々に近づいてくることに、俺は一抹の寂しを感じていた。
「ねぇ、やっぱり戻るんだよね?」
「は? そんなの当たり前じゃん」
「そっか……。 なんでジョシュア君は、討伐隊に入ることにしたの?」
「それは……。 まぁ、ちょっと探したい人がいるから……」
あぁ、ジョシュアの叔父さんのユーウェインさんが行方不明になってるって言ってたもんな。 そうか、だから討伐隊に入ったのか……。
移動魔法でジョシュアの討伐隊の逗留地まで送り届けたときに、スケルトン系の敵を倒して手に入れたクリスタルの剣とナイフを、俺はそれぞれ一本ずつジョシュアへプレゼントした。
「こ、こんなのもらえないって……!!」
ジョシュアは激しく首を左右に振って拒絶する。
ナイフは金貨千枚、剣は三千枚以上で最低でも買い取られるものだとラウルさんから聞いていた。 ナイフと剣は全部で七本もあるし、嫌らしく聞こえるかもしれないけど、別にお金うんぬんじゃなくて、単純にプレゼントしたいと思ったんだ。
こんだけ良い性能があるんだから、持ってもらってるだけで危険な任務から守ってもらえるような気がして、俺も少しは安心できる。
「別にいいって。 モコもジョシュアにあげたいってさ」
「これね〜、とってもちゅよいから、モコ、ジョシュアにあげる!」
眉間にシワを寄せながら、ジョシュアは困り果てていた。
「いいから、いいから。 黙って受け取んな」
「……。 でも、父さんに相談してからじゃないと……」
なぜそこは相談しようと思うんだろう。 散々黙って家出してるくせに。
「ダメだよ。 そんなことしたら、絶対受け取らせないに決まってるんだから。 命を守ってくれるものだから、持っていってね」
「……、分かった。 あ、ありがとう……」
「命だけは大切にね」
「ジョシュアはらいじょうぶ! またね!」
モコは太鼓判を押す。 それは予言なのか、なんなのか、自信に満ち溢れた物言いで断言している。
少しだけ笑顔をみせ、ジョシュアは討伐隊へ戻って行った。
数日が経ち、俺たちは相変わらずラーメン屋のアルバイトとして生活している。
「それで、どう思う?」
「確かにいいお話しです……」
ラウルさんは俺がいちいちヒジャーバに帰るくらいなら、ラウルさんの実家を使えと毎日言ってくる。
「だろ?」
「はい……」
元々ラウルさんの実家が建っている土地が余っているそうだ。 ただ、あまりにボロボロなのでリフォームどころか、建て替えなきゃいけないかもしれないみたいだけど。
今は雨漏りもするので使えないらしいけど、毎日ヒジャーバの宿に戻るのもめんどくさいし、まぁ、リフォームもいいかな。
「じゃあ、お願いしようかな……」
「おぉ! いいぜ!」
ラウルさんは満足そうに返事をした。 大工仕事の依頼書を今日中に作ってくれるらしい。
そしてなんだかんだと呑気にバイトとして過ごし、ジョシュアがいなくなってから二週間が経った頃、村にテオドールさんがやってきた。
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