異世界のんびり放浪譚

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第38話 〈 閑話 〉 女たちの挽歌

公開日時: 2022年4月4日(月) 21:13
更新日時: 2022年4月4日(月) 21:33
文字数:1,746

 私はチコル村のメルといいます!

 私が住んでいる村はとっても貧しくて、みんな生活が大変だけど、私は楽しくやっています!


 お父さんがギルドマスターなので、毎日お手伝いで忙しいです。

 冒険者の方も減ったとは言え、たまにフラッと来られる方もいますし、本部からも依頼もいっぱいくるし、それなりに充実した毎日を過ごしています!


 この前ハヤシさんという子連れの方が、村にやってきました。

 みんなが知ってて当たり前のことを知らなかったり、変な服を来てたり、少し変わっているけれど、優しそうな方です。

 そのハヤシさんが、私の勧めで冒険者になってくれました。 すごく嬉しかったです!

 ハヤシさんにはモコちゃんという、とっても可愛い顔をした男の子がいらっしゃるんですが、ハヤシさんとは全く似ていません。

 あっ! 失礼な意味じゃないです!

 ゴメンなさい……。


 お父さんはユーウェインお兄ちゃんのことがあってから塞ぎこんでたけど、ハヤシさんとモコちゃんが来ると、なんだか楽しそうにしています。

 娘としては少し複雑ですが、少しでもお父さんが元気になってくれるなら、それは嬉しいです。

 お兄ちゃんはハヤシさんに何かと突っかかっていくけど、どうしてなのか私には分かりません。

 何でなんでしょう?


 そんな私ですが、最近ショックなことがありました。

 モコちゃんが来てから毎日とっても楽しかったのに、テオドールさん達の護衛をするためにハヤシさんとモコちゃんが村を出ていくことになってしまったんです。

 私はずっと弟が欲しかったので、モコちゃんと過ごすのが楽しかったから、すっごくすっごく残念です!


 ハヤシさんとモコちゃんが村を旅立つ前の日の夜、二人がギルドに来てくれました。

 ちょうどお父さんは外出していたので私一人のときだったんですが、ハヤシさんは他の人には内緒だよ、と色んなプレゼントをくれました。


 石鹸を麻袋いっぱいと、『しゃんぷー』と『とりーとめんと』とかいうのも、沢山くれました。

 教えられた方法で使ってみたら、髪がとっても綺麗になってビックリしました!

 お父さん用にくれた『しゃんぷー』も使ってみたら、頭がスースーしてクセになりそうです!

 勝手に使ってたら、お父さんから怒られてしまいました……。


 歯ブラシと歯磨き粉もくださいましたが、私たちの使っているものとは全く違って驚きました!

 お父さんの『しゃんぷー』と同じくらい、口の中がスースーします。

  『いろつきりっぷ』というのもくださったんですが、もったいなくて使えません!


 私はハヤシさんから頂いた石鹸などを、リリーおばさんにもおすそ分けしようと思って、おばさんの経営する宿にいったんです。

 おばさんは畑に行っているのか、留守でした。

 洗い場におすそ分けの石鹸を持っていこうとしたら、物置として使っている部屋のドアが開いていたんです。

 私は扉を閉めようと手をかけたんですが、そこにはハヤシさんがくれた麻袋と同じものがあったんです!

 どうやら、ハヤシさんはリリーおばさんにもプレゼントをしていたようでした。


 結局ハヤシさんは、村のみんなに石鹸をあげていたみたいです。

 だって、みんな良い匂いがするんだもん。

 でも、『しゃんぷー』と『とりーとめんと』をくれたのは、私たち親子だけのようでした。


 私はリリーおばさんに石鹸を分けてあげようとしたけど、おばさんは一切石鹸のことには触れず、まるで何もなかったかのようでした。

 おばさんから私に石鹸をくれようとしなかったことに、私はちょっとショックです。

 お父さんに言ってみたら、「人間なんてみんなそんなもんだ」と笑っていました。

「お前だって石鹸しかやるつもりないんだろ? しゃんぷーとかはやらねぇんだろ? お前もおんなじじゃねぇか」

 お父さんに言われて、確かにそうだな、と思いました。

 私はまだ子どもなので「人間なんてみんなそんなもんだ」というのがよく分からないけど、なんだか今回の件で私は少しだけ大人になった気がします。

 うまく言葉に出来ないですけど。


 そんなことより、ハヤシさんとモコちゃん、村に帰って来て欲しいなぁ〜。

 あ、別にモノが欲しくて言ってるわけじゃありません! 本当です! あとお兄ちゃんにも帰って来てほしいと思っています! 本当です!

 はぁ……。 早くモコちゃんに会いたいなぁ〜。

 あ、『お兄ちゃんにも』でしたね!

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