それから改めて浴槽を設置し(ドア部分が大きかったのでそのまま入れることが出来た)、俺の水魔法と火魔法でお湯を貼る。
そして、生活魔法のキープで量も温度も目減りしないし、キープはめちゃくちゃ便利な魔法であることが判明。
誰よりも興奮してたのは、テオドールさんだったけど。
俺とモコは一番風呂を堪能することにした。
入浴剤も『日本の温泉シリーズ・別府』を投入し、完璧。
「はぁ〜〜〜、極楽だ……」
頭と身体を洗い終わった俺たちは、浴槽に入る。 モコはもう、人型なのに液体みたいだ。
至福の時間を堪能したあとは、風呂上がりのフルーツ牛乳をキメる。
「はぁ〜、モコ、気持ちよかったね〜」
「うん! とーーーっても気持ちよかった!」
俺はボッーとしているジョシュアに風呂に入るよう、声をかけた。
「……」
一旦、風呂場に入っていったジョシュアが、服を着たまま出てくる。
「どうしたの?」
「……。 なんかいっぱいあって、よく分かんないんだけど」
シャンプーやらトリートメントやら、どうしていいか分からないらしい。
あぁ、そうか……。
「モコ、もう一回ジョシュアとおっふ入る!」
と言い、ジョシュアの手を引いて入って行く。
「また入るの!?」
「うん! モコね、ジョシュアにおっふのこと教えてあげるの!」
俺は壁に耳をつけ、そっと聞き耳を立てる。
「まずは先にあたまを洗うんだよ」
「これはからだ洗うの」
「こっちはねぇ〜……」
「それはねぇ〜……」
「きょうのおっふはね、べっぷなんだって!」
「べ、ベップ? え、ベップ?」
モコが色々お風呂のイロハ教えてあげていて、なんだか微笑ましい。
テオドールさんがソワソワして様子を見に来た。
「ハヤシさん、いかがでしたか?」
「いやぁ、久しぶりにいいお湯でしたよ」
「それは良かった。 安心いたしました……」
「そうだ、もし良ければみなさんも入ってください」
「え!? 良いんですか!?」
当たり前だ。 むしろ入ってもらわなきゃ困る。
それからテオドールさんや売り子君たちも、モコの指導のもとお風呂に入り、フルーツ牛乳を飲み、ジョシュアを含めたみんなが夢見心地のようだった。
売り子君たちは浴槽に入ったのが初めてだったようだし、もちろんフルーツ牛乳も初体験。
みんないかに感動したかを俺に教えてくれたけど、俺はそのたび切なくなった。
全員お風呂からあがっているのに、モコがいつまで経っても出てこない。
心配して見に行くと、日本スピッツの姿であお向けになって浮かんでいた。
どうやら、湯あたりしているらしい。
「モコ、大丈夫か!?」
慌ててモコを引き上げると、
『ふる〜ちゅぎゅうにゅ〜……』
と呟く。
俺はモコにフルーツ牛乳を飲ませ、モコはそのまま20リットルを飲み、人型に復活した。
そんなことがあってから、洗髪は石鹸か香油しかなかったテオドールさんにシャンプーとトリートメントを買い取らせて欲しい、と強くお願いされていたのだ。
俺は何度も断ったけど、とにかく店で詳しく話したい、と譲らないままマリタに到着し、冒頭に至る。
「それではハヤシさん、早速私の店へ行きましょう!」
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