異世界のんびり放浪譚

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第36話 テルマエ・ベップ (後編)

公開日時: 2022年4月3日(日) 22:12
文字数:1,248

 それから改めて浴槽を設置し(ドア部分が大きかったのでそのまま入れることが出来た)、俺の水魔法と火魔法でお湯を貼る。

 そして、生活魔法のキープで量も温度も目減りしないし、キープはめちゃくちゃ便利な魔法であることが判明。

 誰よりも興奮してたのは、テオドールさんだったけど。

 俺とモコは一番風呂を堪能することにした。

 入浴剤も『日本の温泉シリーズ・別府』を投入し、完璧。

「はぁ〜〜〜、極楽だ……」

 頭と身体を洗い終わった俺たちは、浴槽に入る。 モコはもう、人型なのに液体みたいだ。

 至福の時間を堪能したあとは、風呂上がりのフルーツ牛乳をキメる。

「はぁ〜、モコ、気持ちよかったね〜」

「うん! とーーーっても気持ちよかった!」

 俺はボッーとしているジョシュアに風呂に入るよう、声をかけた。

「……」

 一旦、風呂場に入っていったジョシュアが、服を着たまま出てくる。

「どうしたの?」

「……。 なんかいっぱいあって、よく分かんないんだけど」

 シャンプーやらトリートメントやら、どうしていいか分からないらしい。

 あぁ、そうか……。

「モコ、もう一回ジョシュアとおっふ入る!」

 と言い、ジョシュアの手を引いて入って行く。

「また入るの!?」

「うん! モコね、ジョシュアにおっふのこと教えてあげるの!」

 俺は壁に耳をつけ、そっと聞き耳を立てる。

「まずは先にあたまを洗うんだよ」

「これはからだ洗うの」

「こっちはねぇ〜……」

「それはねぇ〜……」

「きょうのおっふはね、べっぷなんだって!」

「べ、ベップ? え、ベップ?」

 モコが色々お風呂のイロハ教えてあげていて、なんだか微笑ましい。


 テオドールさんがソワソワして様子を見に来た。

「ハヤシさん、いかがでしたか?」

「いやぁ、久しぶりにいいお湯でしたよ」

「それは良かった。 安心いたしました……」

「そうだ、もし良ければみなさんも入ってください」

「え!? 良いんですか!?」

 当たり前だ。 むしろ入ってもらわなきゃ困る。


 それからテオドールさんや売り子君たちも、モコの指導のもとお風呂に入り、フルーツ牛乳を飲み、ジョシュアを含めたみんなが夢見心地のようだった。

 売り子君たちは浴槽に入ったのが初めてだったようだし、もちろんフルーツ牛乳も初体験。

 みんないかに感動したかを俺に教えてくれたけど、俺はそのたび切なくなった。


 全員お風呂からあがっているのに、モコがいつまで経っても出てこない。

 心配して見に行くと、日本スピッツの姿であお向けになって浮かんでいた。

 どうやら、湯あたりしているらしい。

「モコ、大丈夫か!?」

 慌ててモコを引き上げると、

『ふる〜ちゅぎゅうにゅ〜……』

 と呟く。

 俺はモコにフルーツ牛乳を飲ませ、モコはそのまま20リットルを飲み、人型に復活した。




 そんなことがあってから、洗髪は石鹸か香油しかなかったテオドールさんにシャンプーとトリートメントを買い取らせて欲しい、と強くお願いされていたのだ。

 俺は何度も断ったけど、とにかく店で詳しく話したい、と譲らないままマリタに到着し、冒頭に至る。

「それではハヤシさん、早速私の店へ行きましょう!」


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