俺たちは三人で隠しダンジョンがあるダンジョンに手を繋いで行った。
行ったには行ったんだけど、隠しダンジョンの中にAランクやSランクのスケルトンは一匹も居なかった。
「一匹もいない……」
「いないいなーーーい!!」
「ねぇジョシュア君、なんでいないの?」
「そんなの俺に聞かれても分かんない……。 けど、ダンジョンに限っては普通、フロア根こそぎ討伐しても、時間差はあってもすぐにモンスターはまた現れるんだ」
「へぇ〜」
「まぁ、ボスは復活したりしなかったり、なんだけど」
「うん」
「で、今までランクがAとかSだけのダンジョンって俺は聞いたことないから分かんないけど、もしかしたら強いモンスターが復活するのには時間がかかってるかもしれない」
「ふぅん……。 ねぇジョシュア君、どれくらい待てばいいと思う?」
「……分かんない。 とりあえずせめて一週間くらいは待った方がいいんじゃないかと思う」
「そっか」
「うん」
「………………」
「………………」
「まぁ、しょうがないから、帰ろうか」
「もうかえるの? モコ、もっとあそびたい!!」
モコは身体を持て余しているんだろうか。 体力が有り余ってるのかもしれないな……。
「じゃあ、ちょっと遊んでいこうか」
「わぁ〜〜〜い!!」
ダンジョンを出てから俺たちは隠れんぼをしたり、鬼ごっこをしたりして、モコはずっと笑顔で楽しそうにしている。
「……。 昨日の夜、モコは大丈夫だったの?」
際限のない遊びに疲れた果てた俺とジョシュアは、モコが木登りするのを座って眺めることにした。
「あぁ、うん……。 大変だったけど……」
もう、本当に大変だった。 モコの中身は小さいときのモコだと頭では分かっているのに、大人の姿で子どもがするようなことをされると、俺はどうしていいか分からなくなって、大人に対するような言動を取ってしまう。
それはモコにとってはすごくショックなことで、昨日はずっとグズグズ泣いていた。
少しずつ現実を受け入れようと俺も努力はしたけど、大人から抱っこして寝てくれ、と言われても正直困った。 なんせ190cm以上あるし。
フェンリルの姿になることもなぜか無かったし(なんかうまく出来ないそうだ)、ずっと大人の姿なのに頭を撫でてくれだの、お腹にプクーっと息を吹き掛けろ、と言われても、やっぱりいつもと同じようには出来なかったのだ。
ただ、一日寝て、いつもの子どものときと同じように「たかふみ、おっき!!」とモコに起こされて、俺はようやく今のモコを受け入れる覚悟が出来たように思う。 一回寝て冷静になったというか。
「そういえば忘れてたけど、モコのアイテムボックスにスケルトンとかドロップアイテムとか入ってるから」
「あぁ、うん」
「……。 もし売るとしても、ここのギルドじゃないほうがいいと思う」
「なんで?」
「……。 あのギュンターとかいう奴、なんかきな臭いから。 依頼を受託してないものは、やめた方がいい」
「あはは、きな臭いか。 確かにちょっとアレだよね」
そうか、ジョシュアもそう思っていたのか。
「スケルトン自体が素材にはなるから、いずれどっかで売った方がいいけど」
「うん、ありがとう」
なんだか良い感じだ。 モコの件で一緒にクリアしなければいけないことが出来たからか、ジョシュアと俺には一種の連帯感が芽生えた気がするんだよな。
「たかふみぃ、モコね、おなかすいたの! このまえたべた親子丼がいい!!」
「分かったよ。 じゃあ、ちょっと待っててね」
ジョシュアと二人でダークワイバーン肉の親子丼を作り、モコは子どもサイズ以上に食べに食べまくった。
「おいしかったねぇ〜」
「うん、そうだね」
イケメンが頬っぺたを米粒まみれにしてニコッと笑う。
「ほら、顔拭かないと」
ウェットティッシュで拭いてあげる。
「あーがと! モコね、たかふみ、だぁーーーいすき!!」
モコ……。 ここは可愛いというのか、カッコイイのか、どっちなんだろう。
「さぁ、帰ってパーティの準備しなきゃ」
結局、何度かダンジョンに行ったものの、スケルトンはいなかった。
そして俺たちはモコがこの状態のまま、お披露目パーティの当日を迎えることになる。
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