っていうか、なんで謝罪される側の俺がわざわざ出向かなきゃいけないんだよ……。
まぁ? ラウルさん曰く、「あそこまで壊滅させられてんだから、そんな人員はいねぇわなぁ」ってことだったけど、言われてみりゃ確かにそうなんだよな。
それにあれから数ヶ月たってるし、ダンジョンにも海竜がまた戻ってるかもしれない。 モコが元に戻るチャンスでもあるから、ワンチャン行ってみるのもいいだろう。
そして俺は、ギャン泣きするモコをラウルさんに託しヒジャーバへ行くことにした。
「大変申し訳ございませんでした!!」
ヒジャーバのギルドへ行くと、初めて行ったときに対応してくれた男と、二回目にいったときに俺の話しを全く信用しなかった小娘の二人が土下座して謝ってきた。
さらに市長や、恐らく街の有力者であろうおっさん達まで出てきてお詫びをされ、なんやかんやとこっちが申し訳なくなってきてしまう。
「大冒険者様にこんな失礼な事を……。 言葉もございません!」
「いえいえ、もう、本当に結構ですから……」
そして俺は、海産物のお土産を山盛りもらった。
「逆に荷物になってしまいますでしょうか……?」
「あぁ、大丈夫ですよ。 アイテムボックスがあるので」
すると市長が、おずおずと聞いてきた。
「あの……。 謝罪の手紙を出してから随分早くヒジャーバにこられましたが、どういう手段でこちらまでいらっしゃったんですか……?」
「あぁ、移動魔法が使えるもので」
「!?!? それは素晴らしい!! 私、移動魔法が使える方を見たのは、ハヤシさんで二人目です!」
市長はじめ全員の顔がキラキラと羨望の眼差しで、俺を見つめてきた。
「あぁ……、ありがとうございます?」
それからは雑談ばかりで、特にダンジョン攻略の依頼はされることなく時間がどんどんと過ぎていく。
話題も尽きてきたころ、俺は聞いてみた。
「あの〜、ダンジョンの再攻略って……」
「はい?」
市長やギルドマスター達はポカンとしている。
「いや、あの、もう一回ダンジョンに潜るのって……」
「え……、あの、もう一度、ダンジョンを攻略されたい、ということでしょうか?」
あれ? この人たち、もしかして純粋に謝罪したかっただけなんじゃ……。
「そうなんです……」
「あっ、失礼ながらその場合、ヒジャーバにも三分の一でも結構ですので、モンスターやアイテムを卸して頂けたりするのでしょうか……?」
「あぁ、まぁ、はい……」
「ありがとうございます!! やはり、ハヤシさんが攻略されて以降、下層どころか上層階で冒険者たちがみな断念してばかりだったので……。 そうしていただけると大っっっ変助かります!!」
「じゃあ、来週の月曜日にまた来ますので」
来週の月曜日は、俺のバイトが休みの日だ。
あんな豪邸に住んでいて、更にこの前の海竜戦でランクがBになった大物冒険者だってのに、俺は相も変わらずラーメン屋でバイトを続けていた。 なんというか、惰性で。
でも、ここでは大物扱いされるのに対し、チコル村ではアルバイトっていうね。 この落差がなんともいえずいい感じだ。
そして月曜日、モコと俺はまた海竜のダンジョンへと向かった。
レベルも上がった俺は余裕でモンスターを倒していき、順調に攻略していく。 モコもキャンプ気分でルンルンだ。
ただ、なぜかモンスターの数が前回より異常に多いのが気になった。
数日かけて海竜のいる海のフロアへ辿り着くと、そこには海竜が群れをなしていた。
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