「父さんから返事来た」
ランクがSやAのダンジョンで敵を殲滅した場合、モンスターが復活するまでの期間がどれくらいなのかをラウルさんに問い合わせていたのだ。
「なんて書いてあった?」
「はい、自分で読んで」
「あぁ、うん」
書かれていた内容は、俺たちの期待に沿うものではなく、「わからない」ということだった。
「まぁ……。 しょうがないよね。 じゃあ、今日も行ってみようか」
「いくーーー!!」
その日ダンジョンへ行くと、二匹のAランクのスケルトンがいた。
でも、Aランク程度ではダメらしく、モコは元に戻ることはなかった。
そうこうしているうちに、ジョシュアが旅立つ日が近づいてきた。
ジョシュアが所属している討伐隊は、ここから東に徒歩で二週間程の、とある海沿いにキャンプ地を置いている。
その話しを聞いてから海を見たことがないモコは、海を見たいとゴネていた。
俺もずっとマリタに居てもしょうがないし、ジョシュアを送り届けるつもりでもいたので、一緒に行くことに決めている。
キャンプ地の近くに港街もあるそうなので、そこも見たいしね。
テオドールさんに別れを告げに行ったけど、たまたま留守にしていたので会えずじまいだったのが残念だった。
「よし! 行こうか!」
「わぁーーーい! モコ、とってもたのしみ!!」
あっという間に数日が過ぎた夜中、耳をつんざくようなジョシュアの悲鳴で俺は目が覚めた。
「な、なに? どうしたの?」
ボッーとしながら事態を把握しようと目をこらすと、巨大なスピッツがヘソ天して寝ていた。
「!?!?!?」
「ねぇ、これ!! なに!?」
ジョシュアはパニックだ。
モコは今スピッツの姿になれない、と言っていたのに、どうやら戻ってしまったようだ。
ジョシュアはスピッツがモコだと知らないから、切り付けようと剣を抜いた。
「だ、駄目!! モコなんだよ!!」
「えっ!?」
『うるさいなぁ〜』
「モコ、その格好!!」
『なぁに?』
モコは自分の姿を見て、ヤバい!!、という表情をしている。
ポンッと美青年に戻ると、素知らぬ顔でそのまま寝たフリをしようとしていた。
「モコってなんなの!? もしかしてフェンリル!?」
あぁ〜〜〜……、もうしょうがないよな……。
「あぁ、そうみたい……。 でも、フェンリルだってバレると……」
「す、凄い!! 凄いよ、モコ!!」
「モコ、すごい?」
「うん! 凄いなんてもんじゃないよ!!」
モコは俺に怒られるかもしれないとビクつきつつも、褒められて満更でもなさそうだ。
「フェンリルって本当にいたんだ!!」
ジョシュアはキラキラと目を輝かせ、もう一度、フェンリルになってくれ、とモコに哀願した。
モコはチラッとこっちを見たので、もうバレたものはしょうがないから俺はいいよ、と頷く。
「みてて〜」
そういうなり、またポンッとフェンリルになる。
「うわぁ、マジですげぇ……」
またポンッと美青年に戻る。
「なんかねぇ、わかんないけど、なれてきたみたい」
俺に怒られないように、先制ジャブを打ってきた。 っていうか、大人バージョンの身体が馴染んできたってことなのか?
「俺、フェンリル見れるなんて思ってなかった……!!」
「ねぇ、やっぱりフェンリルってバレたら不味いの?」
「いや、普通はフェンリルだなんて思わないって。 いいとこシルバーウルフじゃないか?」
「あのさ……。 フェンリルってなんなの?」
「いや、伝説の魔獣だから。 強いなんてもんじゃない!!」
それからジョシュアは興奮冷めやらず、根掘り葉掘り聞かれ、結局寝かせて貰えなかった。
これから俺たち、一体どうなるんだろう……。
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