「な、なにしてんの!?」
「ジョシュアだ〜」
モコがジョシュアに駆け寄る。
「なにって、何が?」
一体なんなんだコイツは……。
「いや、なんでここにいるの!?」
「……、別に」
出た。
「別にってさぁ〜……。 ジョシュア様はなんでここにいるんですか?」
「ジョシュア様?」
「いや、……別に」
うつった。
「とにかく、ジョシュア君はどうしてここにいるの!? キチンと説明して!」
「……。 村に居てもしょうがないから、ついてきただけ」
「モコ、ジョシュアがいるって分からなかったの?」
「う〜ん? 知ってたよ! でもジョシュアが教えちゃダメって!」
「いや、あのねぇ」
俺たちの騒ぎを聞きつけ、テオドールさん達も様子を見に来た。
「あれ、ジョシュア君! どうしたの!?」
「……。 」
「おやまぁ、ついてきてしまったんですか。 全く気付きませんでしたよ……。 どうしましょうか。 我々も時間が無いので戻ることは出来ませんし、かと言って一人で帰す訳にも……」
「……」
ジョシュアは不安そうに俺を見ている。 え、俺に頼られても困る……。
その様子を見ていたテオドールさんが言った。
「しょうがないですね。 一旦、マリタへ帰ってから、ラウルさんに手紙を出しましょう」
「あの……、今手紙を送ることは出来ないんでしょうか?」
俺が聞くと、ラウルさんは首を横に振る。
「無理ですな。 伝書鷲がここにはいませんからね」
「そうですか……」
「まぁ、起きてしまったことはしょうがありません。 ところでハヤシさん! この匂いはなんですか?」
「え? あぁ、肉野菜炒めを作ってたんです」
「???」
テオドールさんは興味津々でモコと俺の皿を眺めているし、後ろにいた売り子君たちも目をキラキラさせて俺を見つめる。
……。
「た、食べます?」
こう言うしかないよね……。
「「「「「 はい!!!!! 」」」」」
ジョシュア以外の全員が元気よく返事をした。
俺はまた大量の肉野菜炒めを作り、みんなに振舞う。
「!!!」
「美味しい……」
「うまい……」
みんな口々に驚いてくれる。
「こ、これは何の肉なんですか!?」
「あぁ、オークとオーガです」
「ここまでオークが美味しくなるなんて……」
テオドールさん達も、ジョシュアもガツガツ食べている。
っていうか、みんな良く食べるな。 なんだか料理にやり甲斐を感じてしまいそうだ……。
それからみんなでお茶を飲んでまったりしていると、テオドールさんが「少しいいですか?」と散歩に誘ってきた。
「いやぁ、ジョシュア君には困りましたね」
テオドールさんが苦笑いする。
「本当ですよ。 ラウルさん、今頃怒り狂ってるんじゃないですか?」
「ハハハ。 あの、ハヤシさんはユーウェインの話しは覚えておいでですか?」
「あぁ、はい。 ラウルさんの弟さんですよね」
「はい」
テオドールさんが俺とモコに河原に座るよう促す。
「ジョシュア君はね、ユーウェインにとても懐いていたんです。 というよりも、ユーウェインが育てたようなもんですな」
「え?」
「ラウルさんが奥様を亡くして冒険者を引退して、ギルドで働くようになりましてね。 人手もないので、すぐにギルドマスターにされてしまいまして」
「はぁ」
「覚えることは多くて大変だし、周りからのやっかみなんかもあったし、子どもたちも小さいし……。 あの頃は本当に大変だったと思います。 そんな状態だから、なかなか子供に向き合う時間がなかったんですな。 なので代わりに面倒を見ていたのが、まだ少年だったユーウェインだったんです」
「そうなんですか……」
「あの頃はラウルさん一家は本当に大変なときでね。 ラウルさんの妹のリリーさんもその頃ご主人とお子さんを亡くされたりね、ホント気の毒でした」
「そんな……」
「……、ハヤシさん」
「はい」
「だからね、ジョシュア君はユーウェインの面影を感じるあなたと一緒に居たいんだと思いますよ」
「はぁ……」
「これからのことはさておき、ひとまず今は許してやってくれませんか?」
心が沈むとは、こういうことなんだろうな、と思った。 ラウルさんもリリーさんもメルちゃんも、そんな苦労をしてもあんなに明るくいられるなんて。
ジョシュアにしたって、なんて切ないんだろう。
こんな知り合ったばかりの人間にすがりついてくるなんて、あんまりだ。 胸が苦しくなる。
「……。 そうですね、ひとまずマリタまで連れて行って、ラウルさんと手紙のやり取りをして決めます」
テオドールさんはにっこりと笑い、「あぁ、良かった。 ホッとしました」と胸に手を当てる。
「そういえば、さっきのアーヴァンクとの闘いは凄かったですね。 流石です」
「あぁ、いや……。 でもテオドールさん、俺に逃げろって言いましたよね?」
「すみません……。 ハヤシさんがお優しい顔してらっしゃるのでつい……」
うん?
「……。 弱そうってことですよね?」
「ハハハ。 いやぁ、それにしてもさっきの料理は旨かったですなぁ!」
コイツ、ごまかしやがったな。
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