ビシビシビシビシビシ!
スライムから五発顔をどつかれた。
ビシビシビシビシビシビシビシ!
七発!
両腕で顔と頭をガードしても、い、痛い!
えぇ……? 普通に痛いんですけど!
「痛い、痛い! 痛いって!」
スライムはもちろん、攻撃の手を緩めない。
これは無理だ。
相手が小さすぎて、ヘルニアの俺が中腰になって殴ることも出来ないし、蹴ろうとしても避けられる。そして俺には武器になるものは、何もない。
んんんんん、ダメだ、逃げよう。
俺はダッシュで村まで走った。村のそばにいたのは幸いだったな……!
スライムが素早く追ってくる。
一体、なんだっていうんだよ……!
必死で走ると、門番のおじいさんが見えてきた。
俺はおじいさんに手を振り必死にアピールするも、おじいさんは挨拶だと思って笑顔で手を振り返す。
「おじいさぁーーん!! ス、スライムーー! スライムが出たーー!!」
おじいさんは、更に大きく手を振り返す。
う、嘘だろ……。
その時スライムが俺を追い越し、飛びかかってきた。
「ギャーーッ!!」
俺とスライムの防戦一方の泥試合に、ようやくおじいさんは様子がおかしいと気付き、槍のようなものを掴んでこちらへ向かって走ってくる。
えぇ、あんなおじいさんを闘わせるわけにいかないだろ……。
「ダメだ! 危ないから来ないで!」
おじいさんは全然聞こえていないようで、グングン走ってくる。
(おじいさんダメだ、ダメだよ! 来ないでおじいさん! ねぇ、来ないでってば。 ねぇ、ダメだっつってんだろ、おい。 おい、ジジイ!)
その瞬間、俺は足元がすべり、俺はそのままケツからドーン!と地面に転んだ。
物凄い振動と痛みが、俺の腰を直撃する。
「グァッ……!!」
鋭い痛みが走ったのと同時に、ベチョっという何かを潰した感触がした。
う、うわぁ……、気持ち悪い……。
そーっと見ると、想像通りスライムが潰れていた。
「大丈夫か!?」
「ダメです、立てません! でも、スライムはやっつけました!」
「待っておれ、今、助けを呼んでくるからの!」
その場で呆然と座っていると、ギプスの取れたジョシュアとリリーちゃんが助けに来た。
「……プッ。 スライムごときと戦って立ち上がることも出来ないとか、あんた、ほんとヤバいね」
「お兄ちゃん、そんなこと言っちゃダメだよ! ほら、ハヤシさん掴まって」
俺はメルちゃんの手を掴み、ジョシュアの肩を借りて村へ帰った。
その間ジョシュアにずっとネタにされ続けた。
その日から二日間、俺は腰の痛みで寝込んだ。
寝ている間、ジョシュアの小馬鹿にした態度ばかりがフラッシュバックする。
俺はあの日を、絶対に忘れない。
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