異世界のんびり放浪譚

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第17話 スライム

公開日時: 2022年3月16日(水) 23:23
文字数:1,056

 ビシビシビシビシビシ!

 スライムから五発顔をどつかれた。


 ビシビシビシビシビシビシビシ!

 七発!

 両腕で顔と頭をガードしても、い、痛い!

 えぇ……? 普通に痛いんですけど!


「痛い、痛い! 痛いって!」

 スライムはもちろん、攻撃の手を緩めない。

 これは無理だ。

 相手が小さすぎて、ヘルニアの俺が中腰になって殴ることも出来ないし、蹴ろうとしても避けられる。そして俺には武器になるものは、何もない。


 んんんんん、ダメだ、逃げよう。

 俺はダッシュで村まで走った。村のそばにいたのは幸いだったな……!


 スライムが素早く追ってくる。

 一体、なんだっていうんだよ……!


 必死で走ると、門番のおじいさんが見えてきた。

 俺はおじいさんに手を振り必死にアピールするも、おじいさんは挨拶だと思って笑顔で手を振り返す。

「おじいさぁーーん!! ス、スライムーー! スライムが出たーー!!」

 おじいさんは、更に大きく手を振り返す。

 う、嘘だろ……。

 その時スライムが俺を追い越し、飛びかかってきた。

「ギャーーッ!!」


 俺とスライムの防戦一方の泥試合に、ようやくおじいさんは様子がおかしいと気付き、槍のようなものを掴んでこちらへ向かって走ってくる。


 えぇ、あんなおじいさんを闘わせるわけにいかないだろ……。

「ダメだ! 危ないから来ないで!」

 おじいさんは全然聞こえていないようで、グングン走ってくる。

(おじいさんダメだ、ダメだよ! 来ないでおじいさん! ねぇ、来ないでってば。 ねぇ、ダメだっつってんだろ、おい。 おい、ジジイ!)


 その瞬間、俺は足元がすべり、俺はそのままケツからドーン!と地面に転んだ。

 物凄い振動と痛みが、俺の腰を直撃する。

「グァッ……!!」

 鋭い痛みが走ったのと同時に、ベチョっという何かを潰した感触がした。

 う、うわぁ……、気持ち悪い……。

 そーっと見ると、想像通りスライムが潰れていた。


「大丈夫か!?」

「ダメです、立てません! でも、スライムはやっつけました!」

「待っておれ、今、助けを呼んでくるからの!」



 その場で呆然と座っていると、ギプスの取れたジョシュアとリリーちゃんが助けに来た。

「……プッ。 スライムごときと戦って立ち上がることも出来ないとか、あんた、ほんとヤバいね」

「お兄ちゃん、そんなこと言っちゃダメだよ! ほら、ハヤシさん掴まって」

 俺はメルちゃんの手を掴み、ジョシュアの肩を借りて村へ帰った。

 その間ジョシュアにずっとネタにされ続けた。


 その日から二日間、俺は腰の痛みで寝込んだ。

 寝ている間、ジョシュアの小馬鹿にした態度ばかりがフラッシュバックする。


 俺はあの日を、絶対に忘れない。

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