川沿いに砂利道があったので行ってみると、小さな村が丘の下に見えた。
「モコ、村があったからこっちを歩いてみようね。人に見られたら困るから、お耳としっぽをしまえるかな?」
「………。うん…。できる…」
あぁ、これはキツそうだ。
俺は人間の姿をしたモコをおんぶして歩くことにした。
「ッ………!」
ヤバい、腰が死ぬ。コルセットしてなかったら、崩れ落ちるところだ。モコもぐったりしてるし、一刻も早く村に行かなきゃ。
っていうかこういう異世界転移って悪いところが治ったりとか、若返ったりとか、イケメンになったりするもんじゃないのか?何にも変わってないし、それにカネも一銭も無しとか、これはダメなタイプの異世界転移では…。
思いのほかすぐ、村にたどり着くことが出来たのはラッキーだった。
ヒョロヒョロのおじいさんが門番らしい。
「ここはチコルの村。身分証はあるかね?」
「身分証はありません。旅の者ですが、子供が具合悪くなってしまいました。どうか、村に入れてもらえませんか?」
「随分とグッタリしておるの~。可哀相だ、入りなさい」
おじいさんはモコの頭を撫でながら、
「宿屋は一軒しかないからの。リリーの店じゃ」
「ありがとうございます。あの~…、お恥ずかしい話ですが、手持ちがありません。素材を売りたいのですが、道具屋などはありますか?」
「あぁ、なら宿屋の向かえにギルドがある。そろそろ閉まるから、早く行きなさい」
良かった、助かった…。もう一度おじいさんに礼をいい、俺は村へ足を踏み入れた。
モコも、俺の腰も、限界が近づいている。
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