異世界のんびり放浪譚

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第5話 チコルの村

公開日時: 2022年3月10日(木) 11:49
文字数:645

 川沿いに砂利道があったので行ってみると、小さな村が丘の下に見えた。


「モコ、村があったからこっちを歩いてみようね。人に見られたら困るから、お耳としっぽをしまえるかな?」

「………。うん…。できる…」

 あぁ、これはキツそうだ。

 俺は人間の姿をしたモコをおんぶして歩くことにした。

「ッ………!」

ヤバい、腰が死ぬ。コルセットしてなかったら、崩れ落ちるところだ。モコもぐったりしてるし、一刻も早く村に行かなきゃ。

 っていうかこういう異世界転移って悪いところが治ったりとか、若返ったりとか、イケメンになったりするもんじゃないのか?何にも変わってないし、それにカネも一銭も無しとか、これはダメなタイプの異世界転移では…。




 思いのほかすぐ、村にたどり着くことが出来たのはラッキーだった。

 ヒョロヒョロのおじいさんが門番らしい。

「ここはチコルの村。身分証はあるかね?」

「身分証はありません。旅の者ですが、子供が具合悪くなってしまいました。どうか、村に入れてもらえませんか?」

「随分とグッタリしておるの~。可哀相だ、入りなさい」

 おじいさんはモコの頭を撫でながら、

「宿屋は一軒しかないからの。リリーの店じゃ」

「ありがとうございます。あの~…、お恥ずかしい話ですが、手持ちがありません。素材を売りたいのですが、道具屋などはありますか?」

「あぁ、なら宿屋の向かえにギルドがある。そろそろ閉まるから、早く行きなさい」

 良かった、助かった…。もう一度おじいさんに礼をいい、俺は村へ足を踏み入れた。


 モコも、俺の腰も、限界が近づいている。

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