異世界のんびり放浪譚

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第75話 砂漠の塔

公開日時: 2022年5月7日(土) 01:03
文字数:1,315

 チコル村の裏側(森の逆側)に、そんなに大きさはないが砂漠が広がっている場所がある。

 ある日その話しを小耳に挟んだ俺は、モコを連れて行ってみることにした。

 砂漠なんて見たこともなかったし、鳥取にも行ったことがない。 めっちゃ楽しみだ。

 数キロ歩いて行ってみると、思ってる以上にしょぼかった。

 なんていうか映画で見たような見渡す限りの砂漠、というわけではない。 そりゃ、砂漠の真ん中にいるわけじゃないし、後ろを見れば道があるわけで、当たり前なんだけど微妙だ……。

「なんかちゅまんない」

 モコはブーたれている。

「そうだね……。 もう帰ろっか」

「うん!!」

 そのとき、ブワーーーッと砂漠から塔のようなものが頭を出した。

「えぇ……。 何これ……」

「しゅごい! なんかでてきたーーー!!」

 モコは口を開けながら見上げている。

 ゴゴゴゴゴ……と見ている間に塔がぐんぐんと伸びて行き、高層ビル、ラ〇ドマークタワー位か? の高さまで行くとピタッと止まった。

 一階部分に大きな入り口があり、ぱっくりと口を開いている。

「はいる!?」

「えぇ〜……。 入りたいの……?」

「おもしろしょう!」

 まぁ、俺も強いし、入ってみるか。


 入るとそこはまるで冒険映画の世界で、あまり強さは関係なかった。

 壁の横から矢が飛び出したり、丸い岩が追いかけてきたり、上から剣山みたいのが落ちてきたり……。

 モコの誘導が無ければ即死案件多数の罠が、フロアに一つはある。

 モンスターは変な甲虫みたいのがいたり、蛇系がいたり、と俺は失神しそうになりながらもモコに付いていくのに必死で、死ぬ思いだった。

 特に食料になるようなモンスターはいなかったけど、ドロップアイテムは豊富で、鉱石、宝石が面白いほど取れる。 まぁ、モンスターの発生率が高いアイテム身に付けてるっていうのも、もちろんあるんだけど。

「ねぇ、ほんとにないないする???」

「うん。 今日はないないだよ」

 とてもじゃないが、甲虫なんか持って帰りたくない。 背中に悪寒が走る。

 甲虫を鑑定したら、薬の材料っていうのが一瞬見えた。 情けないが気持ち悪すぎて、しっかり鑑定画面すら見れない。 一応一匹だけラウルさんに見てもらうために拾ったけど、それもモコにトングで取って入れてもらった。


 七階層ほど行ったところで甲虫がさらにデカくなってきた。 とてもじゃないけどキッツい。

「モコ、もう今日は帰ろうか……」

「えぇ〜!? もっといきたいよ〜!!」

「ほら、おウチ帰ったらモコの好きな物なんでも食べさせてあげるから……」

 パァァァッとモコの顔が輝く。

「ラーメンと唐揚げ、りょうほうたべたい!!」

「うん、いいよ。 なんでもいいから、さっさと出よう!」


 村へ着くと、ちょっとした騒ぎになっていた。

 皆が一つ方向を向いて、なにやらザワついている。 そっち側を見ると、塔がはっきり見えた。

 俺とモコを見つけたラウルさんに手招きされ向かうと、ラウルさんは大興奮している。

「おい、お前らあれ見ろよ! すげぇだろ!」

「あぁ、あれ……」

 コトの経緯を説明すると、ラウルさんは眉をひそめた。

「ギルド閉めた頃にまた来い」

 と言い残し、ラウルさんはさっさと行ってしまった。

 あれ? なんかヤバいことになってる? でも、俺たちなんにも関係ないじゃん……。

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