チコル村の裏側(森の逆側)に、そんなに大きさはないが砂漠が広がっている場所がある。
ある日その話しを小耳に挟んだ俺は、モコを連れて行ってみることにした。
砂漠なんて見たこともなかったし、鳥取にも行ったことがない。 めっちゃ楽しみだ。
数キロ歩いて行ってみると、思ってる以上にしょぼかった。
なんていうか映画で見たような見渡す限りの砂漠、というわけではない。 そりゃ、砂漠の真ん中にいるわけじゃないし、後ろを見れば道があるわけで、当たり前なんだけど微妙だ……。
「なんかちゅまんない」
モコはブーたれている。
「そうだね……。 もう帰ろっか」
「うん!!」
そのとき、ブワーーーッと砂漠から塔のようなものが頭を出した。
「えぇ……。 何これ……」
「しゅごい! なんかでてきたーーー!!」
モコは口を開けながら見上げている。
ゴゴゴゴゴ……と見ている間に塔がぐんぐんと伸びて行き、高層ビル、ラ〇ドマークタワー位か? の高さまで行くとピタッと止まった。
一階部分に大きな入り口があり、ぱっくりと口を開いている。
「はいる!?」
「えぇ〜……。 入りたいの……?」
「おもしろしょう!」
まぁ、俺も強いし、入ってみるか。
入るとそこはまるで冒険映画の世界で、あまり強さは関係なかった。
壁の横から矢が飛び出したり、丸い岩が追いかけてきたり、上から剣山みたいのが落ちてきたり……。
モコの誘導が無ければ即死案件多数の罠が、フロアに一つはある。
モンスターは変な甲虫みたいのがいたり、蛇系がいたり、と俺は失神しそうになりながらもモコに付いていくのに必死で、死ぬ思いだった。
特に食料になるようなモンスターはいなかったけど、ドロップアイテムは豊富で、鉱石、宝石が面白いほど取れる。 まぁ、モンスターの発生率が高いアイテム身に付けてるっていうのも、もちろんあるんだけど。
「ねぇ、ほんとにないないする???」
「うん。 今日はないないだよ」
とてもじゃないが、甲虫なんか持って帰りたくない。 背中に悪寒が走る。
甲虫を鑑定したら、薬の材料っていうのが一瞬見えた。 情けないが気持ち悪すぎて、しっかり鑑定画面すら見れない。 一応一匹だけラウルさんに見てもらうために拾ったけど、それもモコにトングで取って入れてもらった。
七階層ほど行ったところで甲虫がさらにデカくなってきた。 とてもじゃないけどキッツい。
「モコ、もう今日は帰ろうか……」
「えぇ〜!? もっといきたいよ〜!!」
「ほら、おウチ帰ったらモコの好きな物なんでも食べさせてあげるから……」
パァァァッとモコの顔が輝く。
「ラーメンと唐揚げ、りょうほうたべたい!!」
「うん、いいよ。 なんでもいいから、さっさと出よう!」
村へ着くと、ちょっとした騒ぎになっていた。
皆が一つ方向を向いて、なにやらザワついている。 そっち側を見ると、塔がはっきり見えた。
俺とモコを見つけたラウルさんに手招きされ向かうと、ラウルさんは大興奮している。
「おい、お前らあれ見ろよ! すげぇだろ!」
「あぁ、あれ……」
コトの経緯を説明すると、ラウルさんは眉をひそめた。
「ギルド閉めた頃にまた来い」
と言い残し、ラウルさんはさっさと行ってしまった。
あれ? なんかヤバいことになってる? でも、俺たちなんにも関係ないじゃん……。
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