港町へ着いたのは夜の十時も過ぎた頃で、遠目から見てもガッチリ門が閉まっていたのでその日は近くで野営することにした。
翌朝早くに街へ行くと、想像していたのとは全く違った街並みだった。
港町というだけあって貿易がさかんで、さぞかし栄えているのかと思いきや、街はボロボロで廃墟のよう。
昨日は暗くて全く分からなかったけど、こんなことになってたなんて。
「え、これって……」
「酷いだろ。 全然復興出来てない」
ジョシュアはボソッと言った。
「え、何があったの、コレ?」
「ケートスに襲われた」
「ケートス?」
「犬に似た頭をしてて、アシカのような姿のやつらに襲撃されて、四割の人が殺された」
「四割!?」
「そう。 それで俺たちの討伐隊が呼ばれたってわけ」
「え、ここがキャンプ地ではないよね?」
「そう。 ここともう一つ村があって、その中間地点に逗留してる」
「なんで?」
ジョシュアは、ウンザリしながら答えた。
「その村は別のモンスターに襲われたし、あいだをとってる。 調査なんかもあるし」
そうなのか……。 この世界、結構悲惨だな。
「かわいしょう」
モコはしょんぼりしている。
「まぁ、でも人はいるし、少しずつだけど再建もしていってるし、街も機能はしてるから」
街には建物を解体したり、建設したりと忙しなく作業している人たちがいた。
宿を取ると、ジョシュアが言った。
「あのさ、このすぐ近くに海竜のダンジョンがあるんだけど」
「うん」
「そこに行かない?」
「なんで?」
「そこは何階まであるか分かんないし、誰も攻略したことがないけど、噂ではボスがSランクの海竜じゃないかって話し」
海竜ってまた……。
「たかふみぃ、モコいきたいなぁ〜」
「まぁ、このまま何もしないでここに居たってしょうがないもんね。 じゃあ、明日いってみようか」
「ギルドで依頼は出てるはずだから、受注してきて」
「ジョシュア君は行かないの?」
「俺はまだ休暇中だから、受注したら面倒なことになる」
なるほどね〜。
「じゃあ、ちょっと行ってくるよ」
モコはジョシュアに見てもらい、貰った地図を頼りにギルドへ向かう。
着いたギルドは、そこそこ繁盛したいた。 依頼の貼られているボードには、建設関係の依頼が多く貼られている。
その中から海竜のダンジョンの依頼書を剥がしカウンターへ向かうと、まさに海の男といった男性が対応してくれた。
「こんな廃れた街によく来たな〜。 まぁ、頑張ってきてくれよ」
感じの良さそうなおじ様だ。
「あの、最深階って……」
「あぁ、今までで一番深くもぐった奴は聖アルフォンソ騎士団の奴らで、47階層までだ」
結構あるほうなのか?
「ま、頑張ってな」
男性は笑顔で送り出してくれた。
「はい」
翌朝ダンジョンへ行くと、入り口はジメジメとし、とてもじゃないが入りたくないような陰湿な洞窟だった。
「しゅごいね〜。 きもちわるい!」
「うん、そうだね……」
すかさずジョシュアが口を出す。
「こんなんで気持ち悪いなんて言ってたら、今に泣きを見る」
えぇ!? こわっ。
三人で手を繋いだままクリスタルへ触り一階のフロアへ着くと、そこは入り口の感じと大差なかった。
「あれ? あんま変わらなくない?」
「フンッ。 これからだから」
俺はその言葉を40階を越えたあたりで、心底噛み締めることになる。
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