俺はジョシュアから超超超、雑な剣技の基本を教えられ、はいどうぞ、とさっさと実戦に放り出された。
スライムはブヨブヨしてるから剣先に力を込めてやればいいだけ、と教えられたけど、刃先が遠いのにどうやるんだよ、素人だぞ? 意味がわかんないんですけど……。
ジョシュアはビビっている俺に、
「スライムなんかで人が死ぬわけないんですけど?
バカじゃない?」
と、何ひとつ助けてくれないし、それ以上のアドバイスもなかった。
なんなの? もう、なんなの!?
放置プレーをされてから、三時間が経った。
「…………。 ねぇ! さっき言ったこと、もう全然出来てないんですけど~?」
「……だからさぁ、さっきから何回同じこと言わせるわけぇ〜?」
「……出来ないんだったら、手伝った方がいいんですかぁ〜?」
こんなことを一回り以上年下から延々と言われ続けたら、人はどうなるだろう?
俺の場合、ニ十匹のスライムを倒すことに成功した。
なぜか?
俺が元々こっちの人間だから? それとも異世界転移の鉄板、俺TUEEEチート発動?
いや、怒りが原動力になった。ジョシュアのヤジに沸々と俺の怒りは頂点に達し、スライムが飛びかかってきた瞬間に剣で切り付けるという、至極単純な戦法に出たのだ。
ふん、子供でも勝てるんだ。やろうと思えば俺だってこれくらいは出来るんだよ。っていうか、剣があれば誰でもそこそこいけるんじゃないかと思う。
それにしても、俺、ほんとコイツ嫌いだわ〜。
「たかふみぃ、大丈夫?」
「ハァハァハァッ……。 大丈夫だよ……。 モコ、どうしたの?」
二十匹目のスライムを倒し息を整えていると、メルちゃんがモコを連れて来てくれていた。
「モコちゃん、どうしてもハヤシさんに会いたいって泣いてしまって……。 連れてきてしまいました」
「あぁ、ごめんね……」
モコがぎゅっと抱きついてくる。
「いえいえ。 では、私はまだ仕事が残っているので戻りますね」
「お兄ちゃんも、失礼が無いようにしてね」
「……。 フンッ」
メルちゃんは早々と戻っていった。同じ兄妹で、どうしてこうも違うんだ。
「モコ~、どうしたの? 寂しくなっちゃった?」
「……。 うん」
モコは半べそをかいている。
「そっかぁ、じゃあ、一緒に居ようね?」
「うん!」
あぁ、なんてうちの子可愛いんだ……。
「……。 あのさぁ、もうレベル上げしないわけ?」
コ、コイツ……。
「たかふみぃ、モコね、お腹すいた!!」
あぁ、もう昼時か……。 スライム退治も落ち着いたし、昼飯にするか。
え、じゃあ何? ちょっと待って。 俺、コイツにご馳走しなきゃいけないの? そんなのイヤなんですけど。
「モコね、ご飯とお肉食べたい!」
「分かったよ〜。 じゃあ、何にしようかな……」
ん? ちょっと待てよ。 ジョシュアにご馳走したくないと思ってたけど、十代なんか肉食わしておけば胃袋掴んで態度マシになるんじゃないか……!? しかもこっちにはグルメ大国日本のネットスーパーが付いてるんだぞ!?
フフフフフ……、待ってろよジョシュア!
今に目にもの見せてやる!!
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