「あの…、ウォーターストーンなんですが…」
「えっ!?ウォーターストーンですか!!」
五つ全てを出すと、女の子は別の小振りな水晶を出し、ウォーターストーンにかざした。俺がジッーと見つめていると、
「あ、これは鑑定の魔道具です!私は鑑定スキルがないので…。まぁ、商人の方は持ってる方が多いですけどね」
「それにしても、五つなんてスゴい!形もキレイだし、これは掘り出し物ですよ、ハヤシさん!」
もう一つのカウンターから、がっしりとした、これまた堀の深い二枚目男性が顔を出し、
「なんだなんだ、なんの騒ぎだ?」
と言いながら、男性はケンケン飛びをしながらこちらへ向かってきた。
左足の膝から下がない。生地が邪魔なんだろう、ズボンを膝部分で結んでいた。
俺はいい歳をしてどうしたらいいかわからず、目を背けてしまった。
「おいメル、どうしたってんだ?」
「あ、お父さん見てこれ!立派なウォーターストーンだよ!」
どれどれ…と女の子のお父さんらしい男性が、水晶と石を手に取り目を細めた。
「おぉ、これはまた随分と…」
「おい、兄ちゃん、これどこにあったんだ?」
「あ、それはこの近くの草原で見つけました」
どうやら数ヶ月前に、あの草原で水属性の魔物が大発生したので、大規模討伐が行われたそうだ。そのときのドロップアイテムの取りこぼしじゃないか、と男性は言った。
「あの~…、それって俺が取ったってことにしていいんですか?」
恐る恐る聞くと、
「んなもん、兄ちゃんらのモンだろ~。取りこぼす方が悪い!」
良かった…。
「では、税金を差し引いて、金貨四枚と銀貨二枚のお渡しです」
「す、すいません…。貨幣って、あの、どれくらいの価値が…」
メルちゃんは、大きな目をパチパチとした。
「兄ちゃん、いいか? 青銅貨十枚で銅貨一枚、銅貨十枚で銀貨一枚、銀貨十枚で金貨一枚だ。まぁ、大金貨や白銀貨もあるが、使えるのは都会だけだな」
メルちゃんのお父さんが、助け船をくれた。
「ありがとうございます…」
「まぁ、なんだ。事情があるんだろ。そんな変な格好してるしな」
ハハ、地球にいたとしてもこんな格好でお店に入るのはちょっとアレだもんな…。
「メルも言ってたが、今は食料から魔石や素材までとにかく不足してるんだ。新人冒険者さんでも大歓迎だから、また来てくれ。それに、今日は宿屋だろ?息子さん、寝そうだから早く行きな」
ええ人や…。
「ありがとうございます。子供も疲れているので、また明日にでもゆっくり伺います」
俺がそう言うと、二人は笑顔で見送ってくれた。
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