えぇ…。
こんな五年は着てるボロいスウェット上下の身一つで、一体どうしろと…。
虫食いポケットをまさぐると、充電ギリギリの圏外スマホと糸屑だけが出てきた。これはアレだ、恥ずかしいけどアレをやるしかないんだ…。
恥ずかしさで目をつぶりながら、
「す…、すすすす…、ステータス…オープン…」
チラッと薄目を開けるとゲームでよく見る例のステータスが宙に浮かんでいた。
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林 孝文(ハヤシ タカフミ)
年齢 :31
レベル :1
HP :100
MP :10
魔法 :未解放
スキル:アイテムボックス
鑑定
言語習得
インターネット→ネットスーパー・レシピサイトのみ
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弱いな、俺。
魔物がいる世界なのに闘えないじゃん…。レベル上げなきゃな、そのうち。
インターネットは使いたいと思うと、勝手にステータス画面のようにweb画面が浮かんできた。お手軽スキルで満足だ。
ただし、大手ネットスーパーと、あまり料理をしない俺でも知ってる某有名レシピサイトだけしか見れなかった。
(ってかネットスーパーとレシピサイトって…。せめてアマ○ンとかヨド○シじゃないのか…。微妙か?微妙なのか?いや、ないよりあるだけマシか…)
と思いつつも、実は結構いいスキルかもね。金さ えあれば食い物に困らないんだから。
まぁ、その金がないから何も買えないんだけど。
ちなみにステータスオープンと言わなくても、考えただけでステータス画面も出てきた。うーん、この。
急に恥ずかしがったり、感心したりと挙動不審な俺をモコが心配そうに見上げていた。
「………。そういえばモコ、お前犬じゃなかったの?狸なの?」
我ながら間の抜けた質問だ。
「ううん、狸さんじゃないよ。だってボクね、毛が白いもん!フェンリルって言うんだって。ボクが一回死んじゃったときに、神様が教えてくれたの」
モコは嬉しそうに続ける。
「ボクね、一回死んじゃってからもずっとたかふみの側にいたんだよ!お手手合わせてくれてたときも、たまにモコって心の中で呼んでくれたときも、ずーーーっと!」
クッ…。
モコ曰く、フェンリルの姿はこちらの世界の人間に見せると騒ぎになるから、人間の姿でいるように、とさっきの光りに言われていたそうだ。
白い耳と尻尾も騒ぎになるらしく、俺の前だけにしなきゃいけないらしい。
ただ、耳と尻尾もさらに隠して人間の姿でとなると、ひどく疲れるそうだ。
よくわからないが、まぁ、それは今考えてもしょうがないか。
モコはモコだしな。ムズカシイことは後だ、後。今はなんとか、この状況を切り抜けることだけ考えないと。
さて、そうは言っても、これからどうしたもんか…。
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