結局モコは、二十袋分作っておいたサッポロ○番をほとんど一人で食べ、さらに菓子パンを二十三個、まだ足りないと、リンゴも十二個食べた。
あぁ、ラーメン何一つ残らなかったな……。
俺はドライの魔法で粉末スープも作れるかどうか試したかったので、レシピサイトでスープのレシピを探した。
でも、モコの遊んで遊んで攻撃に俺は屈し、寸胴鍋にお湯で溶くだけのお手軽ラーメンスープだけ作っておくことにした。
部屋に戻った途端、モコは「眠いの……」と日本スピッツことフェンリルの姿に戻り、横になった瞬間、丸まって爆睡した。
「いいよな~、お前は。気楽でさ」
と言いながら、俺はモコの長い鼻筋を撫でた。
さて、俺はインスタントラーメンの作り方を考えなくては!
レシピサイトを見てみると、中華麺のレシピが何個も載っていた。
(みんな、よく麺から作ろうと思うよな……)
中華麺は小麦粉と重曹、塩と水で出来ることが分かった。
お、これは全部ネットスーパーで材料を賄えるぞ。
あとは、分量や寝かす時間なんかで麺の調整が出来るらしい。
俺は中華麺のレシピを何パターンかお気に入り登録し、材料を買い、モコを抱き寄せ眠りについた。
『起きてーーー!』
モコは俺の上で、ドンドンとジャンプしている。
「ぐぉッ」
「モコ~、痛いよ~……」
『早く起きる!』
ハイハイ……。
俺は簡単にハムとチーズのサンドウィッチを大量に作り、モコと朝食を済ませた。
『今日は何する?』
「ラウルさんのところに行って、インスタントラーメン作るんだよ~」
『ヤッターーーーー!!』
「あ、モコが食べる分じゃないよ……」
モコは衝撃を受けたようで、あからさまに不貞腐れた。
「また今度作ってあげるからね~」
『……』
モコはプイッと横を向き、俺の言葉をシカトした。
宿の一階に降りると、ラウルさんは既に俺たちを待っていた。
「おはようございます。お待たせしちゃいましたか?」
「いやいや、俺も今来たとこよ。 ようチビ、おはようさん」
モコはラーメンのことで機嫌が悪く、プリプリしている。
「ラーメン、ちゅくる、言った!」
と、ダンダンと地団駄を踏む。
「どうしたんだよ、ボウズ」
それが……と、俺はラウルさんに今朝の出来事を説明した。
「ハッハッハ、そうか、ラーメン食いたかったか! それなら、今日作るラーメンが上手に出来てるかどうか、チビが食って俺たちに教えてくれ」
「食べていーの!?」
「あぁ、もちろんだ」
あんなに人見知りだったのに、この一言でモコはすっかりラウルさんに懐いた。
村の外れにある倉庫に向かうと、目的の倉庫は思いのほか立派で、大きな蔵のようだった。
「うわぁ、ずいぶんと立派ですねー」
「まぁな。盗難防止のためにな。昔、野盗が出たことがあったからよ」
どこの世界も大変だ……。
倉庫の一角に、小麦粉の麻袋が山積みにされていた。
「結構あんだろ?」
「そうですね」
「そろそろヤバそうなのがよ、このうちの十袋だな」
「で、どうする? 俺の妹ん所の台所でやるか?」
「あ、お願いします」
小麦粉の麻袋を一つ、アイテムボックスに入れた。
「じゃあ、頼むわ。あとで倅をリリーんとこに向かわせるし、俺も仕事が落ち着いたら顔出すからよ」
ラウルさんはギルドへ、俺たちはリリーさんの宿へ戻った。
「好きに使っていいからね」
とリリーさんに言ってもらえたので、俺は腕まくりをし、早速、中華麺作りに励んだ。
これが意外と楽しく、モコも退屈しないでジッと楽しそうに見ている。
二人でキャッキャウフフと中華麺を作っていると、しばらくして例のイケメン少年が無言で入ってきた。
ボッーとしているような雰囲気だが、可愛い顔した十五、六歳くらいの美少年だ。
「あ、こんにちは。今日は手伝ってくれてありがとう」
「……。あんたが、ハヤシって人?」
あ、嫌な予感。
「あぁ、そう。俺がハヤシで、この子はモコっていうんだ。よろしくね」
「……」
いや、名乗れよ。
「君はなに君って言うのかな?」
「……。ジョシュア」
「……。 こんなことして、あんた何か裏でもあるわけ?」
「裏?」
「……。 だって、こんなことしても、あんたに何のメリットもないじゃん」
あぁ、面倒臭い。俺は生意気な若者が大嫌いなんだよ……。
「べ、別に裏なんかないよ……。 ただ、俺でも協力出来ることだったから、してるだけだよ」
「……。 ふーん。 っていうか、あんたのその格好なに? 変じゃない? それが良いと思ってんの?」
こんのクソガキ……!
俺は麺棒を握りしめ、引きつった笑顔で、
「じゃ、じゃあさ、ジョシュア君、作り終わったのがあるから、まずはコレにドライの魔法をかけてもらえるかな?」
と言った。
「ハァ……」
面倒臭そうに、彼は中華麺にドライの魔法をかけ、
「……。 もう帰ってもいい?」
と踵を返そうとする。
「あ、まだ作り終わってないのもあるし、成功してるか分からないから…… 」
「……。 じゃあ、早くしてくんない?」
そう言うと、彼は台所に置かれた椅子に座った。
はあぁぁ……、前途多難だ……。
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