異世界のんびり放浪譚

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第14話 生意気盛り

公開日時: 2022年3月13日(日) 22:11
文字数:2,007

 結局モコは、二十袋分作っておいたサッポロ○番をほとんど一人で食べ、さらに菓子パンを二十三個、まだ足りないと、リンゴも十二個食べた。

 あぁ、ラーメン何一つ残らなかったな……。


 俺はドライの魔法で粉末スープも作れるかどうか試したかったので、レシピサイトでスープのレシピを探した。

 でも、モコの遊んで遊んで攻撃に俺は屈し、寸胴鍋にお湯で溶くだけのお手軽ラーメンスープだけ作っておくことにした。




 部屋に戻った途端、モコは「眠いの……」と日本スピッツことフェンリルの姿に戻り、横になった瞬間、丸まって爆睡した。

「いいよな~、お前は。気楽でさ」

と言いながら、俺はモコの長い鼻筋を撫でた。


 さて、俺はインスタントラーメンの作り方を考えなくては!


 レシピサイトを見てみると、中華麺のレシピが何個も載っていた。

(みんな、よく麺から作ろうと思うよな……)

 中華麺は小麦粉と重曹、塩と水で出来ることが分かった。

 お、これは全部ネットスーパーで材料を賄えるぞ。

 あとは、分量や寝かす時間なんかで麺の調整が出来るらしい。


 俺は中華麺のレシピを何パターンかお気に入り登録し、材料を買い、モコを抱き寄せ眠りについた。




『起きてーーー!』

 モコは俺の上で、ドンドンとジャンプしている。

「ぐぉッ」

「モコ~、痛いよ~……」

『早く起きる!』

 ハイハイ……。

 俺は簡単にハムとチーズのサンドウィッチを大量に作り、モコと朝食を済ませた。


『今日は何する?』

「ラウルさんのところに行って、インスタントラーメン作るんだよ~」

『ヤッターーーーー!!』

「あ、モコが食べる分じゃないよ……」

 モコは衝撃を受けたようで、あからさまに不貞腐れた。

「また今度作ってあげるからね~」

『……』

 モコはプイッと横を向き、俺の言葉をシカトした。




 宿の一階に降りると、ラウルさんは既に俺たちを待っていた。

「おはようございます。お待たせしちゃいましたか?」

「いやいや、俺も今来たとこよ。 ようチビ、おはようさん」

 モコはラーメンのことで機嫌が悪く、プリプリしている。

「ラーメン、ちゅくる、言った!」

と、ダンダンと地団駄を踏む。


「どうしたんだよ、ボウズ」

 それが……と、俺はラウルさんに今朝の出来事を説明した。

「ハッハッハ、そうか、ラーメン食いたかったか! それなら、今日作るラーメンが上手に出来てるかどうか、チビが食って俺たちに教えてくれ」

「食べていーの!?」

「あぁ、もちろんだ」

 あんなに人見知りだったのに、この一言でモコはすっかりラウルさんに懐いた。




 村の外れにある倉庫に向かうと、目的の倉庫は思いのほか立派で、大きな蔵のようだった。

「うわぁ、ずいぶんと立派ですねー」

「まぁな。盗難防止のためにな。昔、野盗が出たことがあったからよ」

 どこの世界も大変だ……。


 倉庫の一角に、小麦粉の麻袋が山積みにされていた。

「結構あんだろ?」

「そうですね」

「そろそろヤバそうなのがよ、このうちの十袋だな」


「で、どうする? 俺の妹ん所の台所でやるか?」

「あ、お願いします」

 小麦粉の麻袋を一つ、アイテムボックスに入れた。

「じゃあ、頼むわ。あとで倅をリリーんとこに向かわせるし、俺も仕事が落ち着いたら顔出すからよ」

 ラウルさんはギルドへ、俺たちはリリーさんの宿へ戻った。


「好きに使っていいからね」

 とリリーさんに言ってもらえたので、俺は腕まくりをし、早速、中華麺作りに励んだ。

 これが意外と楽しく、モコも退屈しないでジッと楽しそうに見ている。


 二人でキャッキャウフフと中華麺を作っていると、しばらくして例のイケメン少年が無言で入ってきた。


 ボッーとしているような雰囲気だが、可愛い顔した十五、六歳くらいの美少年だ。

「あ、こんにちは。今日は手伝ってくれてありがとう」

「……。あんたが、ハヤシって人?」

 あ、嫌な予感。

「あぁ、そう。俺がハヤシで、この子はモコっていうんだ。よろしくね」

「……」

 いや、名乗れよ。

「君はなに君って言うのかな?」

「……。ジョシュア」

「……。 こんなことして、あんた何か裏でもあるわけ?」

「裏?」

「……。 だって、こんなことしても、あんたに何のメリットもないじゃん」

 あぁ、面倒臭い。俺は生意気な若者が大嫌いなんだよ……。

「べ、別に裏なんかないよ……。 ただ、俺でも協力出来ることだったから、してるだけだよ」

「……。 ふーん。 っていうか、あんたのその格好なに? 変じゃない? それが良いと思ってんの?」

 こんのクソガキ……!

 俺は麺棒を握りしめ、引きつった笑顔で、

「じゃ、じゃあさ、ジョシュア君、作り終わったのがあるから、まずはコレにドライの魔法をかけてもらえるかな?」

と言った。

「ハァ……」

 面倒臭そうに、彼は中華麺にドライの魔法をかけ、

「……。 もう帰ってもいい?」

と踵を返そうとする。

「あ、まだ作り終わってないのもあるし、成功してるか分からないから…… 」

「……。 じゃあ、早くしてくんない?」

そう言うと、彼は台所に置かれた椅子に座った。


 はあぁぁ……、前途多難だ……。

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