異世界のんびり放浪譚

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第67話 海竜の解体

公開日時: 2022年4月28日(木) 23:16
文字数:1,454

「か、海竜だな……」

「はい」

「海竜って、こんなにデケーんだな……」

「はい」

 ラウルさんは、海竜を前に固まっている。 おじいさんは、今までに犯した罪を告白し、懺悔をしている。 ちなみに聞こえてきた懺悔のひとつに、今の奥さんを友人から略奪愛した、というのがあった。

 じいさん、やるな……。 前にリリーさんから、おじちさんは昔は凄かったらしい、という噂話を教えて貰ったことがあったな。


 しばらくラウルさんは呆然としたあと、

「……おい、ちょっと待ってろ」

 そう言い残し、ラウルさんはナイフを数本ギルドへ取りに行った。

 ポキッ、ポキッと海竜に突き刺したナイフが折れていく。

「ダメだな……」

 そうラウルさんは呟くと、俺に向き直り、

「兄ちゃん、今うちにあるナイフじゃこれは解体できねぇな」

「えっ」

「なんてったって海竜だからな……」

「そうですか……」

「ちょっとやそっとのものじゃダメだってことよ。 キングやロードクラス、つまりSランク以上のレアドロップの剣やナイフか、もしくはSランク以上のモンスターで素材から作るか……」

「モコ、もってる!」

 そう言うとモコは、クリスタルで出来たような剣やナイフを数本、自分のアイテムボックスから取り出した。

「あれ、モコ、何それ?」

「あのねぇ、ジョシュアと二人でダンジョンにいったときにね、スケルトンロードを大人のモコがたおしたんだって! でね、モコが今のモコになってね、きづいたときにね、ジョシュアがアイテムボックスにしまっておきなさい、っていったの!」

「そ、そうなんだ……」

 そういえば、モコとジョシュアが二人で行ったダンジョンに、ランクSやAのスケルトンがゴロゴロ居たって言ってたわ……。

 まぁ、モコがこうなってしまったのもそれが原因だったもんな。


「……。 ちょっと借りるぞ」

 ラウルさんは「もう何が出てきても驚かねぇよ、ったく、クリスタルの剣ってなんだってんだよ……」と頭をブンブン振りながら呟き、クリスタルに輝く剣を海竜に突き刺した。 すると、スーッと綺麗に海竜の腕が切断されていく。

「はぁ〜……。 おい、解体はまた今度だ。 時間がねぇからな。 このまま置いていかれても、こんなデケェもんが入るアイテムボックスなんかねぇからよ、腐っちまうぞ」

「あ、はい」

「とりあえず、この海竜の腕と剣やナイフは借りとからな」

「分かりました。 ジョシュアもそろそろ起きてくると思うので、俺達も一旦、戻ります」

「あ? 起きるってなんだよ。 もう昼過ぎだぞ」

 ラウルさんがしかめっ面をした。

「ジョシュアは今、昼寝をしてまして……。 起きて俺達がいないと心配すると思うので……」

「はぁ〜〜〜? いいご身分だなぁ、おい」

 呆れたようにラウルさんは顔をしかめた。

「で? お前らは今、どこにいるんだよ」

「今はヒジャーバという港町にいます」

「ヒジャーバか……。 やっぱりひでぇのか?」

「あぁ、結構、壊滅的な感じですよ。 まぁ、もちろん全部が全部、ってわけじゃありませんが……。 街も機能してますしね」

「そうか」

「はい」

「……。 でよ、うちのバカ息子はどうだ? 元気にしてっか?」

 ラウルさんは照れくさそうに俺に聞いてきたんだ、頭を掻きながら。

「はい、元気ですよ」

 俺がそう言うと、嬉しそう笑った。

「すまねぇな、兄ちゃん。 よろしく頼むな。 とりあえず、また日曜日に来てくれ」

「はい。 では、また」

「バイバーイ」

 っていうか、大丈夫かな……。 ジョシュア、心配してないかな……。 そう考えながらヒジャーバの宿に戻ると、ジョシュアはまだゴーゴーといびきをかきながら寝ていた。

 本当、いいご身分だな笑。

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