「か、海竜だな……」
「はい」
「海竜って、こんなにデケーんだな……」
「はい」
ラウルさんは、海竜を前に固まっている。 おじいさんは、今までに犯した罪を告白し、懺悔をしている。 ちなみに聞こえてきた懺悔のひとつに、今の奥さんを友人から略奪愛した、というのがあった。
じいさん、やるな……。 前にリリーさんから、おじちさんは昔は凄かったらしい、という噂話を教えて貰ったことがあったな。
しばらくラウルさんは呆然としたあと、
「……おい、ちょっと待ってろ」
そう言い残し、ラウルさんはナイフを数本ギルドへ取りに行った。
ポキッ、ポキッと海竜に突き刺したナイフが折れていく。
「ダメだな……」
そうラウルさんは呟くと、俺に向き直り、
「兄ちゃん、今うちにあるナイフじゃこれは解体できねぇな」
「えっ」
「なんてったって海竜だからな……」
「そうですか……」
「ちょっとやそっとのものじゃダメだってことよ。 キングやロードクラス、つまりSランク以上のレアドロップの剣やナイフか、もしくはSランク以上のモンスターで素材から作るか……」
「モコ、もってる!」
そう言うとモコは、クリスタルで出来たような剣やナイフを数本、自分のアイテムボックスから取り出した。
「あれ、モコ、何それ?」
「あのねぇ、ジョシュアと二人でダンジョンにいったときにね、スケルトンロードを大人のモコがたおしたんだって! でね、モコが今のモコになってね、きづいたときにね、ジョシュアがアイテムボックスにしまっておきなさい、っていったの!」
「そ、そうなんだ……」
そういえば、モコとジョシュアが二人で行ったダンジョンに、ランクSやAのスケルトンがゴロゴロ居たって言ってたわ……。
まぁ、モコがこうなってしまったのもそれが原因だったもんな。
「……。 ちょっと借りるぞ」
ラウルさんは「もう何が出てきても驚かねぇよ、ったく、クリスタルの剣ってなんだってんだよ……」と頭をブンブン振りながら呟き、クリスタルに輝く剣を海竜に突き刺した。 すると、スーッと綺麗に海竜の腕が切断されていく。
「はぁ〜……。 おい、解体はまた今度だ。 時間がねぇからな。 このまま置いていかれても、こんなデケェもんが入るアイテムボックスなんかねぇからよ、腐っちまうぞ」
「あ、はい」
「とりあえず、この海竜の腕と剣やナイフは借りとからな」
「分かりました。 ジョシュアもそろそろ起きてくると思うので、俺達も一旦、戻ります」
「あ? 起きるってなんだよ。 もう昼過ぎだぞ」
ラウルさんがしかめっ面をした。
「ジョシュアは今、昼寝をしてまして……。 起きて俺達がいないと心配すると思うので……」
「はぁ〜〜〜? いいご身分だなぁ、おい」
呆れたようにラウルさんは顔をしかめた。
「で? お前らは今、どこにいるんだよ」
「今はヒジャーバという港町にいます」
「ヒジャーバか……。 やっぱりひでぇのか?」
「あぁ、結構、壊滅的な感じですよ。 まぁ、もちろん全部が全部、ってわけじゃありませんが……。 街も機能してますしね」
「そうか」
「はい」
「……。 でよ、うちのバカ息子はどうだ? 元気にしてっか?」
ラウルさんは照れくさそうに俺に聞いてきたんだ、頭を掻きながら。
「はい、元気ですよ」
俺がそう言うと、嬉しそう笑った。
「すまねぇな、兄ちゃん。 よろしく頼むな。 とりあえず、また日曜日に来てくれ」
「はい。 では、また」
「バイバーイ」
っていうか、大丈夫かな……。 ジョシュア、心配してないかな……。 そう考えながらヒジャーバの宿に戻ると、ジョシュアはまだゴーゴーといびきをかきながら寝ていた。
本当、いいご身分だな笑。
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