異世界のんびり放浪譚

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第62話 青年は残酷な弓を射る (中編)

公開日時: 2022年4月23日(土) 23:46
更新日時: 2022年4月24日(日) 00:02
文字数:1,519

「なんかムシムシするねぇ〜!!」

 モコはジメジメとした洞窟内の湿気が不快らしく、顔をしかめている。

「そうだねぇ〜」

 いつもの綺麗な銀髪さらさらロングヘアーも、こころなしかぺったりしている気がする。


「なぁ、ジョシュア君もこのダンジョン来たことあるんでしょ? なんで撤退したの?」

「時間がかかり過ぎたから。 最初から2日間だけの予定だったし」

「ふ〜ん」


 ダンジョンではアーヴァンクなど水辺にいるモンスターから、オークやオーガ、ゴブリン、スライムなどのお馴染みモンスターが入り交じって出現した。

「アンタもう少しレベルあげた方がいいから」

 とジョシュアに言われ、俺が倒していくことになった。

 ジョシュアはどうやらダイエットに成功したことで、もう動きたくないらしい。


 洞窟内では時間の感覚が分からなくなる。 湿気で気持ち悪いためか、昼時になってもモコはいつもの「おなかすいた!」を言わなかった。

「モコ、お腹空かないの? もうお昼だけど、ご飯食べれる?」

「う〜〜〜ん……」

 元気がないな……。 いや、こんなときこそ食べなきゃチカラが出ないだろ。

 でも、何かさっぱりしたものがいいよな……。

「ねぇ、俺もなんか気持ち悪いから、今日は手伝えないから」

 ジョシュアが先制パンチをかましてきた。

「分かったよ……」

 俺も夏バテみたいで具合悪かったので、結局、薬味たっぷりのトマト入り素麺で済ますことにした。

 俺は汗だくで麺をゆで、薬味を切ったのにも関わらず、ジョシュアはシソが気に食わなかったようだ。 全てのシソを取り除き、ブツクサ文句を言っている。

「うまいのにどうして!? のこしちゃダメなの!!」

 と、モコが代わりにジョシュアを怒ってくれた。

 二人とも夏バテみたいになってたわりに、モコもジョシュアもいつもと同じ量を食べていた。

 ホント、みんなよく食べるな……。 まぁ、食べれないよりはいいんだけどさ。


 そのまま俺たちはダンジョンを進み、特に苦戦することもなく順調に攻略していった。

 夕方にはダンジョン内でキャンプを張り、早めに休むことにした。 さっぱりするためにモコに浴室を作ってもらい、浴槽を設置する。

「モコ〜、今日は面白いお風呂に入るからね〜」

「おもしろいおっふ? なぁに??」

「うん? 入ってからのお楽しみだよー」

 俺とモコは頭と身体を洗ってから、浴槽に入る。

「!?」

 モコは一瞬、何が起こったのか分からないようだった。

「たかふみ、なんか……。 なんか、コレへん!!」

 フフッ。 今日はクール系ミントの入浴にしたのだ。 それも、エクストラハードタイプのな……!!

 というか、ハッカ油も足して入れた。

 最初はどうしたらいいのか分からなかったモコも、次第に気持ち良さが分かってきたらしい。

 キャッキャキャッキャと手を叩いて喜んでいるが、なんせ190センチ以上の絶世の美青年がそうしている姿は、どう形容したらいいのかわからない気持ちにさせる。

 っていうか、こんなことになるんだったら、もっと大きい浴槽買えば良かったか……。


 次に入ったジョシュアも、クール系ミントのお風呂にびっくりしたようで、

「これ、毒入ってるんじゃないの!?」

と、全裸で飛び出してきた。

 モコはその姿を見て、爆笑している。

 やっぱ、エクストラとハッカ油はやり過ぎだったな……。


 風呂上がり後もしばらく入浴剤効果が続き身体がスースーすることに、モコは喜び、ジョシュアは毒の可能性を捨てきれないでいたので、俺は思わず吹き出した。




 次の日40階層に入った俺は、驚愕の景色に全身サブイボが立った。

 壁という壁に、カエルのタマゴが張り付いていたのだ。

 「うわぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜!!」と叫びながら首をすくめると、ジョシュアも俺の隣で小声で「うわぁぁぁ……」と言いながら首をすくめていた。


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