誰かが言った。
「それは悪魔に辿る道だね」
と。
誰かが言った。
「君の手はまるで仲間の血で染まっているね」
と。
誰かが言った。
「あなたの仕事ぶりは、まるで闇を狩っているようだわ」
と。
ついたあだ名は『闇狩りのレイ』、『仲間殺しの鮮血姫』。
長ったらしい異名。
なら、闇狩りの鮮血姫。
それでいいじゃない。
闇を狩る、それがわたしたちの仕事なのだから。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
レイは一定の感覚で上下する天馬にさあいきなさい、そう拍車を当てた。
蒼穹の空に白い雲を描くように翼をひろげ、ペガサスは飛翔する。
五歳の息子のイーサンがのったグリフォンはレイよりさきに、天に向かって飛んでいく。
他にもユニコーン、小型のドラゴン、そんなものが数十頭、天空をぐるぐると旋回していた。
雲でできたわたあめの城に、レイとイーサンは突入してイーサンは大喜びでそれを食べている。
レイはそのこうけいを微笑ましく見ながら、ペガサスで後を追う。
華やかな鈴と銅鑼と太鼓の音が鳴り、柔らかなオルゴールの音が耳になじんでくる。
銅貨一枚で楽しめるメリーゴーランドは数周してその役目を終えた。
「おいで、イーサン。
遅れるわよ」
レイは息子のイーサンをいざない、次のだしものに向かった。
道化師や綱渡りをするダンサーたち。
猛獣使いもいれば、火をはく火吹き男がいたり、剣先をのみこむ。
そんな大道芸を披露するものたちもいる。
「ねえ、ママ。
あのグリフォンはお腹が空かないのかな?」
片手にわたがしをもち、それをほおばるイーサンが心配そうにうしろを振り返る。
レイは息子を優しく抱き上げると、
「そうねえ、あの子たちは夜になるとちゃんとご飯があるわよ。
さあ、わたしたちは次のを見に行きましょう?」
そう語り掛けてみた。
「うん、ねえママ。
あれはどうやって動いているの?」
イーサンは不思議そうな顔でたずねた。
あれとは先程の回転木馬のメリーゴーランドのことだ。
「あれはね、イーサン。
中に燃料になる鉱石‥‥‥ってわかんないか。
ほら、ママがパパからもらったこの指輪。
これはミスリルって石でとても強い魔力を秘めてるの。
でも、自然に出るからあまり多くないのね?」
わかるかなあ?
そう思いながら話してみる。
「うーん?
数が少ないの?
ならたくさん使えないね、ママ」
イーサンは困った顔をした。
もう一度、あれに乗りたい。
そんな顔だった。
「大丈夫よ、イーサン。
その代わりに、ほら。
お空にある、いまは昼間だけど。
いつもはお月様があるでしょ?
その光を利用してね、もっと強い魔力を集めた石があるの。
それは作れるのよ?」
もっと強い石?
イーサンはそれなら何度でもあれに乗れるね、ママ。
そう言って喜んでいた。
「ねえ、それはなんていうの?」
この子は将来、何になりたいのかな?
いろんなことに興味を持つ。
「それはね、黒い石。
ブラウディア。
そういうのよ、ほらあそこ」
レイは天空を行き交う、一人乗りだったり、定期便のバスだったりする乗り物を指差した。
「あのジェイルっていう乗り物。
全部の名前だけど。あれもブラウディアで動いてるの」
ふうん、と、イーサンは少しだけ興味を削がれたらしい。
手にしたわたがしと、さっき乗ったグリフォンを見比べていた。
息子はその手に持ったわたがしを、あのグリフォンにあげたいなんて。
そう言いだすかもしれない。
もし、そうなったらどうしよう?
さっきまで駆けっこをしていたのに、作り物なんて言えないな。
そう、レイは思っていた。
--最近はやつらがこの近辺にも入り込んでいる。
君も気を抜くんじぃやないぞ?
ふと、上司のアレックスの声が脳裏をよぎった。
やつら。
でも、こんな大勢のあつまるサーカスでなにかやらかす気にはならないでしょ?
レイはもしアレックスから連絡がくれば、そう笑い飛ばしただろう。
周りには数百人の観衆がいる。
これから最大の出し物。
世界一有名な魔女シャーリーンの魔法ショーが見れるのだ。
はぐれないように抱き上げたイーサンは、わがたしを半分ほど食べ終わったみたいで、
「ママ、ママ。
これ甘いよ、どう?
ママも一口ならあげてもいいよ?」
なんて優しいことを言ってくれる。
夫のマイクもこの場にいてくれれば、三人で過ごせたのに。
彼は移民局のしごとが忙しいと、最近なかなか家族三人がそろうことはなかった。
「ありがとう、イーサン。
これからシャーリーンの魔法ショーがあるから。
それを見ながらもらうことにするわ。
少しだけ残しておいてよ?」
「うん、ぜんぶ食べないようにするよ。
でも、もし食べちゃったらごめんね?」
この子ったら、いつの間にそんな意地悪をいうようになったんだろう?
レイはそんな息子の成長ぶりを微笑ましく見ていた。
案内役のピエロが、はいこれをどうぞ、ぼっちゃん。
そういい、風船を渡してくれる。
先導役だろうか?
列の最後尾を亜人のような獣人のような仮面をつけた一団が、二人の周囲で観客を誘導していた。
まるでかれらは獲物を狙うハンターのように、その手に持った旗をふり檻の中へと誘いこむ。
そんなふうにも見えたその時だ。
上空から、バラバラと音がしてシェイルが舞い降りてきた。
滑走路のいらない、両翼にプロペラがついた可変式の、軍用ジェイル。
こんな場所におりたつはずのない、異様なモノ。
危険をかんじてレイはイーサンを抱きしめると、メリーゴーランドに走る。
「早く、とんで、早く!!!」
グリフォンにまたがり、それは天空たかく飛び立ち二人を逃がそうとする。
ジェイルから遠く離れたはずなのに、その場所がしっかりと見えているのがレイには不思議だった。
ピエロが驚いてはなした色とりどりの風船があたりに舞い散ると視界がすこしだけ悪くなる。
プロペラが生む風は、まだ準備中だった風船群を地上にまきちらしながら空へと舞いあがる。
軍用ジェイルの中で、見覚えのある数人の男たちが魔銃を構えていた。
なかには連射式のライフルを腰にかまえ、あたりところかまわずに撃ちまくっていた。
あと少しで自宅に逃げ込める。
もう少し、あと少しよ!!
頑張って、この子を守らなきゃ‥‥‥
グリフォンが庭先に舞い降りると、レイたちは自宅へと走りこんだ。
安全な場所?
どこに武器があった??
ベランダの上からさっきのジェイルのプロペラ音がしてきた。
「イーサン!!
ここから動いちゃダメだからね!?」
そう息子に言い聞かせ、レイは襲撃犯を撃退しようと仕事道具の魔銃を構えた。
「ママ‥‥‥血が出てるよ?」
え?
どこも撃たれていないわよ?
「イーサン、そんなはず」
言いかけて息子をみると、彼の胸から下は血で染まっていた。
「なんで!?
イーサン、もう大丈夫。
ママが助けるから‥‥‥」
そう息子を抱きしめた時、玄関の扉が開いた。
夫が助けに来てくれた??
マイク、ここよ!!
そう叫ぼうとして、そこに仁王立ちになりライフルを構えている男が誰かをレイは知った。
ブルース・ヒギンスーー
稀代の麻薬王、そして、武器密輸の帝王。
サイコパスとも言われる破壊衝動の魔法使い。
「やあ、レイ・ローエン。
魔弾はお好きかな?」
向けられた銃口が火をふき、それはイーサンを貫いた。
おまえがわるいんだ、ローエン。
俺の邪魔をするから。
おまえがわるいんだ、ローエン。
俺の敵になるから。
おまえがわるいんだ、ローエン。
だから、死ね。
イーサンを貫いた魔弾は、レイの肉体も貫いていた。
「イーサン‥‥‥」
血まみれの手で抱きしめた息子は息絶え、そしてレイもその意識を失った。
イーサンの身体からぬくもりが消えた。
レイの腕の中で霧のように散ってしまいどこにもいなくなる‥‥‥。
耐えようのない苛立ちと激しい悲しみに心を揺さぶられ、レイ・ローエンは悪夢から目覚めた。
この気味の悪い悪夢を何度見たことだろう。
胸の鼓動をおさえることが出来ないまま、レイはベッドの中で両膝を抱え込む。
両手で顔を覆った。
「また、あの夢なんだ。
わたしだけが生き残った‥‥‥」
声にならない想いが心を締め上げる。
息子が死んでから二年が経っていた。
現実世界に戻ってきた。そう理解するまでに数分かかった。
息子の死の瞬間の光景。
それが脳裏に、まるでついさっき起きたかのように思い出された。
レイは魔女だ。
同じ大学の同期生、いまでは世界一有名な魔女。
友人のシャーリーンの魔法ショーに、招待されてあの日、サーカスを訪れた。
あの軍用ジェイルも、空飛ぶグリフォンも存在しない。
レイの脳裏で誇大的に演出されたもの。
最後のブルース・ヒギンスにしてもそうだ。
あいつは我が家を訪れたことは一度もなく、そして、語り合ったこともない。
あの時。
ピエロが風船をイーサンに手渡し、きつねやおおかみの亜人たちが、奇妙な仮面をつけて観客を誘導していた。
イーサンは両手にわたがしと風船を持っていて、それを片手に持ち換えようとしていた。
少し上を上下斜めに回転して観客を楽しませる遊具が通り過ぎた時だ。
イーサンはそれの起こした一陣の風に、風船を手放してしまった。
それはレイの胸のところで、案内人の一人が受け止め、
「ほら。
もう離しちゃだめだよ?」
そう優しく言い息子に手渡してくれた。
もう一つどうぞ。
ピエロがしゃがみこみ、レイはそれをもらってイーサンに手渡した時だ。
イーサンが持っていた青い風船が割れた。
それと同時に、レイは背中に軽いの痛みを感じた。
銃弾が胸を貫通したことを実感する。次は頭だ。
そう、彼女の勘が告げていた。
だめ、この子を守らなければ‥‥‥
余りにも低位置からの狙撃。
射撃手は二度目。
次はレイの頭を狙うだろう。
生暖かい血がレイの青色のシャツを赤く染めているのをおぼろげに感じた。
レイは息子を守ることだけしか考えていなかった。
道行く人々は倒れ伏す母娘に奇妙な視線をやり、二発目ではなく無造作に放たれる魔弾の雨がその場を地獄へとかえた。
ドンっと大きく走り去る人々は二人を大きく引き離し、レイはそのまま前のめりに地面に倒れこんだ。
イーサンの胸からも血が流れだし、それは大きな赤いみずたまりとなって二人を繋いでいた。
もうろうとする意識を総動員して、レイは息子になんとか近寄ろうとした。
触れることさえできればどうにかなる。
あの子の指先でもいい、流れ出る血を体内に戻し、時間を巻き戻すことができる。
この命をエサに悪魔を呼び出しさえすれば。
しかし、四肢はすでに動かず、イーサンはもう動かなかった。
数分だろうか、それともそれ以上だろうか。
どこまでも流れ出る血をどうにか体内の魔力で抑え込み、レイはイーサンの小さな体まで這いよることができた。
神様、どうかまだ間に合いますように。
そう願い、息子を抱き上げるようにしたがもう、力は残っていない。
その小さな手はぬくもりが残ったまま、レイの指先を握り返すことすらできないでいた。
弾丸は二発。
胸を貫き、そしてイーサンの腹部に大きな穴を開けていた、
「だめ‥‥‥これじゃもう何もできないー」
その呟きが、レイの心のささえを積み木を崩すように倒壊させる。
悪魔との契約にはレイの魂が必要。
でも、生きていることが最低条件。
イーサンは既にその小さないのちの灯を、死神によって吹き消されていた。
レイは助けを呼ぼうとして自分の声が音にならないことに気が付いた。
肺や肋骨がズタズタにされていて、そこまでのたった一メートルにも満たない距離を這い上がるために全身の魔力を使い果たしていた。
これを誰かに。
仲間に教えなければーーー
最後にどうにか動いて。そう願い、自分の血で妖精を召喚する。
小指ほどの小人がでてきてくれたのは不幸中の幸いだった。
レイの脳裏に描かれた陣を、小人は読み取り精緻ではないが大まかな魔法陣をレイの手元に。
その地面に描いて消えた。
狙撃手はどこだ?
あの乱射は単なる誘導のはず。
狙いはわたしーーー
レイは最後の最後で、視界の端に立ち並ぶテーマパークの雑木林の影からゆっくりと歩き去る。
そのあまりにも余裕がある挙動をする男を目にすることができた。
ブルース・ヒギンスーーー
舞い戻っていたのね、あの時。
レッグスの渓谷で追い詰めたときに撃てば良かった。
あのサイコパスは。
破壊と殺人が趣味の嫌味な犯罪者は、その手で復讐を果たしに来たのだ。
レイにはそれが理解できた。
「主を求めん、我が名をもって、この血の盟約を糧に‥‥‥」
呪文が声にならない。
息子の仇を討つことはできない、そう諦めるしかなかった。
攻撃魔法よりも、仲間へ。
この衝撃的な事実を伝えなければ。
最後の一滴。
指先からしたたりおちたその血を受けて魔法陣は発動する。
「行って!
移民管理局の特務課へ。
アレックスの元へこの記憶を伝えてーーー」
レイの魔力はもう尽きていた。ならばそこに魂の抜け殻を使い触媒にするしかこの魔法をつかう手はなかった。
声にならない声で、母親は息子に謝罪する。
「ごめんなさい、イーサン。
その血を‥‥‥ママの血と一緒に使わせて。
ごめんなさいーーー」
「どうした、レイ?」
なるべく起こさないようにと気を付けていたが、マイクはすでに起きていた。
もうなんども、この数年の間に経験しているレイの悪夢。
その苦しみから救ってやれないことをマイクは悔やんでいた。
妻がなんの夢を見たのか、心の中ではなにが起こっているのかはっきりとわかっていた。
「レイ」
彼はその光景を目にし、その場に居合わせるたびに言ってきた。
「もう考えるのはよよそう。
あれは君のせいなんかじゃない。イーサンはもう戻って来ないんだ。
自分を責めるのはやめよう、レイ」
けれどレイにはわかっていた。
息子を殺したあいつが捕まらないかぎり、この悪夢に終わりが来ないことを。
この記憶はなにかの拍子によみがえる。
イーサンの大好きだったお馬の模型、あの子の思い出を光の魔法で切り取った宝珠の映像、壁に貼られたイーサンの落書き‥‥‥
日々、特務官という移民や麻薬や武器密輸なんて犯罪を取り締まる現場でおきた奇異な体験が心に刻まれるように、あの悪夢はふとしたことからよみがえるだろう。
そしてその鮮烈なできごとの記憶がよみがえるたびに、レイは果てしない罪悪感に襲われる。
その罪悪感は狂気となり彼女に正気を失わせた。
もし自分が移民管理局にいなければ、移民管理官のままでいれば、特務官にならなければ。
イーサンは死ななくても済んだかもしれない。まだ生きていたかもしれないだろうとそう思わせていた。
「レイ、もう行くのか?」
結婚して六年目。
もうレイは二十一歳で、マイクは三十六歳。
ある事件をきっかけに二人は恋に落ち、そしてイーサンが産まれた。
「マイク‥‥‥子供を作るべきじゃなかったかもしれないわ。
わたしたち」
最近考えていたあることをレイはマイクに切り出した。
移民管理局の上司で、この国の王族の端にいるマイク。
没落貴族の末裔で爵位だけは高いがまともに生きることすら出来なかったレイ。
レイは幼いころから助け合い、共に生きてきた愛する人を捨ててマイクを選んだ。
それは間違いだったのかもしれない。
あの人を選んでいれば、子供を授かることもなかったのだから。
「それは、レイ。
君になにも落ち度はなかったんだよ?
イーサンは事故で死んだんだ。
君が悪いわけじゃない」
マイクは夫として妻を優しくいさめた。
しかし、レイが求めていた答えはそれではない。
「マイク、ごめんなさい。
もう、終わりにしましょう」
「レイー‥‥‥」
夫は返す言葉を失っていた。
レイは立ち上がると窓の外を眺めた。
リダイダルの王都は大陸の西側にある大きな海運都市だ。
東の空から昇る太陽は赤みがかっていて、朝のうすいもやに包まれた街を薄紅色に染めていた。
そのまま昇る太陽のさきには雲一つない青空だ。
たぶん、今日も暑い一日になる。
生命にいのちを与えてくれる陽光はそれでも、容赦なく木々も、動物も関係なく精気を吸い上げるだろう。
そんな一日だ。
南からの偏西風と気圧の谷間が訪れて、昼は蒸し暑く、夜は皮のジャケットが必要なほどに冷え込む。
多くの都民が頭に頭痛を抱え、肉体は気温の変化に悲鳴を上げるだろう。
「マイク、わたし今日からここには戻らないわ」
レイは壁にかけていた特務官の制服に身を包み始めた。
「おい、待てよ。
そんなに慌てて‥‥‥ずっと考えていたのか?」
「うん‥‥‥あなたは理想の上司だったし、夫としても。
わたしには勿体ないくらい。でも、だめなの。
あの子のことを思うと、誰ともいたくない」
半分は真実。
そして半分はーーー
マイクはそう言いだす日がいつかは来るだろう。
そんな気がしていた。
妻の心の支えにはなれても、あの地獄の記憶から救い出すことはできない。
あの日から、二人の間には大きな溝ができていた。
「どこにー‥‥‥泊まる気なんだ?
行くあてはあるのか?」
あるだろう。
俺はそれを知っている。
なのになぜ、今更そんなことを聞くのだろう。
失いたくないから?
愛しているから?
いいや、たぶん違う。
男としての意地がそうさせている。マイクはそう理解し始めていた。
「そう、ね。
実家は遠いけど。
大丈夫よ、マイク。
荷物はそのうちに取りに来るから。
その‥‥‥」
「ああ、いいよ。
離婚の書類は用意しておく。
また戻るんだな?
レイ・エダーリーン公爵に」
もう王族からは離れることになるぞ、レイ?
マイクはそう問いかけていた。
多くの特権も、何もかも。
公爵で得れる以上のものを失うぞ。
昇進さえも。
と。
レイは元に戻るだけよ、単なる貧乏貴族に。
そう言い、寂し気に笑った。
あの日。
愛した相棒を捨てたあの夜。
その時に戻るだけだと。
「そうか。
なら、仕方ないな。
レイ・エダーリーン特務官か‥‥‥」
マイクの返事をまたず背に受けてレイはベッドルームを後にした。
「あの日から君は変わった、レイ。
ブルース・ヒギンスを追うために危険も命も。
時には仲間すら犠牲にして闇を狩り続けている。
その手は誰の血で染まっているんだい?」
マイクは悲しそうに一人呟いた。
同じ特務官であるマイクの元にも届いていた、管理局からの情報。
あの男。
ブルース・ヒギンスがこの王都に舞い戻っている。
それは死神の宣告のようにマイクには思えた。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!