むかし むかし わたしたちのすむ だいちには
ふしぎなちからが ねむっていました
それはそれは ふかいふかい じめんのそこの そのまたそこ
ふしぎなちからは じめんのしたから ちじょうにむかって
くさきとともに わきみずのように あふれだしてきては
ちじょうを ゆたかに していました
そうげんに くさが はえているのも
もりに きが そだっているのも
みんなみんな そのふしぎなちからの おかげ
ちじょうにすむ たくさんの いきものたちも
もちろん にんげんたちも ふしぎなちからで すこやかに すごしていました
それは おつきさまの ちからでした
みんなが よくしっている おそらの おつきさま
でも むかしは じめんのそこに あったのです
じめんのそこの そのまたそこで
すやすやと おつきさまは ねむっていたのでした
そんな あるひの ことでした
おそらの かなたから ぴゅーんと
とってもおおきくて とってもはやい ながれぼしが
だいちに めがけて ずどーん と ぶつかってきました
すやすやと ねむっていた おつきさまは びっくり
おどろいた おつきさまは じめんのしたから とびだして
ちじょうからも とびだして おそらのうえまで とんでいきました
こうして おつきさまは おそらのうえから ぷかぷかと
だいちを みまもるように なりました
それからというもの おつきさまは よるに なるたびに
おそらのうえに すがたを あらわし
だいちに ふしぎなちからを ふりそそぎました
よるは おつきさまが だいちに ちからを あたえてくれるのです
よるの つきあかりは すてきな プレゼント
ちじょうに すむ ひとたちは ねむっているあいだに
おつきさまの ふしぎなちからで せいちょう していきました
もりにすむ ひとたちは もりのちからで もりのたみに
やまにすむ ひとたちは やまのちからで やまのたみに
もりのたみは きのなかで くらすので
おつきさまの ふしぎなちからを たくさん あびました
だから もりのたみは しぜんのちからに めぐまれました
やまのたみは つちのしたで くらすので
そらからの おつきさまの ふしぎなちからを あびることが できませんでした
だから やまのたみは もりのたみよりも ちいさくなったのです
もりのたみは ふしぎなちからを つかえるように なりました
やまのたみは ふしぎなちからを つかえませんでした
あたまをつかう ひとたちは よりあたまが つよくなり ちえのたみに
ちからをつかう ひとたちは よりちからが つよくなり ちからのたみに
ちえのたみは あたまが よかったので
おつきさまの ふしぎなちからを すこし もらいました
だから ちえのたみは ぎじゅつのちからに めぐまれました
ちからのたみは ちからが すべてだったので
おつきさまの ふしぎなちからなんて みむきも しませんでした
だから ちからのたみは ちえのたみより つよく おおきくなったのです
ちえのたみは ふしぎなちからを つかえるように なりました
ちからのたみは ふしぎなちからを つかえませんでした
こうして ちじょうにすむ ひとびとは
おつきさまの ふしぎなちからを つかったり たすけられたりし
へいおんで へいわな くらしが できるように なりました
おつきさま ありがとう
おつきさま ありがとう
ちじょうの ひとびとは おつきさまに かんしゃしました
しかし そんなへいわな ひびを
よくおもわないものが いました
それはそれは ふかいふかい じめんのそこの そのまたそこ
かれは あらわれました
「やい ちじょうのものども
おつきさまは おれさまの ものだ
かってに うばうやつは ゆるさないぞ」
じめんのしたから はいでてきた かれらは
それはそれは とてもとても おそろしいすがたをした
やみのせかいの じゅうにん
おおきく つよく つのもはえた あばれんぼう
おつきさまが おそらに とんでいく まえから
ずっと おつきさまの ふしぎなちからを ひとりじめしていた
おぞましい やばんな じゅうにん
「おつきさまは だれにも わたさない
おつきさまの ふしぎなちからは だれにも わたさない
かえせ かえせ」
かれは つきのたみ
おつきさまみたいな ぎんいろのかみを もち
ちのような あかいろのめを もつ
じめんのしたの じゅうにん
あたまに おおきなつのを はやし
せなかに おおきなつばさを もった
よるの じゅうにん
つきのたみは おつきさまが なくなって
とてもとても おこっていました
つきのたみは ちじょうのひとびとに おこっていました
よるが くるたび つきのたみは
ちじょうで いかりにまかせて あばれつづけました
もりのたみは もりのおくへ にげました
やまのたみは どうくつのおくへ かくれました
ちからのたみは とおくのちへ うつりすみました
でも ちえのたみは にげも かくれも しませんでした
「つきのたみ ああ つきのたみ
どうして あなたは あばれるのですか」
ちえのたみは つきのたみに といかけました
「おまえたちが おつきさまを うばったからだ
おつきさまは おれさまの ものだ」
つきのたみは ちえのたみに こたえました
つみのたみは おこるばかりで
とても はなしに なりません
つきのたみは ふしぎなちからを つかって
ちじょうで あばれます
つきのたみが うでをふるえば ほのおが まいあがり
つきのたみが あしぶみすれば じめんが ふるえだし
つきのたみが ないてわめけば つなみが おしよせて
つきのたみが おおごえだせば あらしが まきおこる
ちじょうは もう めちゃくちゃです
こまった こまった
ちじょうにすむ ひとびとは
へいわな くらしを こわされてしまいました
「つきのたみ つきのたみよ
どうか あばれないで ください
おつきさまは みんなの ものです」
ちえのたみは はなしあいを つづけようとしました
しかし つきのたみは はなしを きいてもくれません
こまりはてた ちえのたみは
どうにかしようと かんがえました
かんがえて かんがえて かんがえつづけました
そして ちえのたみは
ふしぎなちからを つかうことに したのです
よるごとに あばれる あばれんぼう
ちじょうを こわす つきのたみ
かれの ふしぎなちからを まねすることに したのです
ちえのたみは
ほのおを おこし
じめんを ゆらし
つなみを ながし
あらしを ふかし
つきのたみのような ふしぎなちからを まねしました
「やめろ やめろ やめろ
おれさまの まねを するな」
つきのたみは おどろきました
じぶんだけが おつきさまの ふしぎなちからを
つかえると おもっていたからです
もう おつきさまの ふしぎなちからは
つきのたみだけの ものでは ありません
ちじょうの ひとびとたちのもの なのです
「つきのたみよ ああ つきのたみよ
どうかもう あばれるのは やめてください」
ちえのたみは いっしょけんめい つきのたみを せっとくしました
「ゆるさない ゆるさない
ふしぎなちからは おれさまのもの なのだ
ちえのたみよ いつのひか とりもどしにくるぞ」
つきのたみは まったく こりませんでした
そして つきのたみは どこか とおくへと にげてしまいました
あばれんぼうの いなくなった ちじょうに へいわが もどりました
ちえのたみの もとには
ふしぎなちからの つかいかただけが のこりました
それは まほう
おつきさまから おくられる プレゼント
つきのたみだけが つかえた
ふしぎなちから
これからは ちじょうのひとびとが
まほうを つかうことが できるのです
ちえのたみは ちじょうのひとびとに まほうを おしえました
こうして せかいに へいわが おとずれて
まほうが つかえるようになったのです
ですが いつか このへいわは また おびやかされることでしょう
あの おそろしい じめんのしたの じゅうにん
あの おぞましい よるの じゅうにん
あの あばれんぼう つきのたみは
このせかいの どこかに いるのですから
いつかまた つきのたみが あらわれるかも しれません
だから おつきさまから いただいた ふしぎなちから
まほうは しっかりと わすれないように
おつきさまは きょうも
あのおそらから わたしたちを みまもっています
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