ケンリスの調子も良くなり一行は出発する事となった。
支度をし終わったケンリスが皆を急かす。
「おいまだかよ!早く行こうぜ?日が暮れちまうよ」
「分かった分かった」
「今行きますよ。」
集まると、ケンリスとアルウィンは、ここに来たときの格好だった。そしてネオラストは、
「すみません。準備が遅れました。」
いかにも賢者らしいローブに、
賢者らしい杖を持っていた。
…が、
その杖からぶら下がる
禍々しい刺の生えた鉄球がその雰囲気を全て台無しにしていた。
「えっと、その鉄球は何だ?」
戸惑ったようにアルウィンが聞く。
「武器ですよ?近づかれると魔法は使いにくのでね。それに、この刺は刺さった相手の魔力を吸収するのですよ。そして、杖を通して私に供給されるのです。ふふふ………」
ケンリスは言葉も出ないようだ。
「では、出発しましょうか。」
「そ、そうだな。」
アルウィンが同意。
「どうしたのですか?ケンリスさん。日が暮れてしまいますよ。」
「あ、はい…」
ケンリスはまだ怯えていた。
そしてネオラストは、
…明らかに楽しんでいる。
「さあ、参りましょう!」
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「で、どこに向かうんだ?」
ケンリスが聞く。
「そうか、ケンリスは寝ていたから知らないのか。」
アルウィンが言った。
「エルフの里に行くのですよ。魔王についての情報を集めるのです。」
「了解!」
ケンリスはもう元気が戻っていた。
その足取りは軽い。
「ケンリスは、旅が好きなんだな。」
アルウィンが微笑みながら言った。
「楽しいだろ?」
「ああ、そうだな。」
「そうですね。」
そんな会話をしていると、魔物が襲いかかって来た。
それも普段よりも多い。
「いくぜ!」
「俺たちはリーダーを叩く。ネオラストは他を排除してくれ!」
「了解しました!」
ケンリスがアルウィンの足元に魔法陣を作り、
アルウィンが身体強化される。
そして自分にも同じようにした。
「クレイツ!」
ネオラストの爆裂魔法で、大方が片付いた。
「ケンリスはそっちから回りこめ!」
「おう!」
リーダーの両側から2人が回り込む。
その時、ネオラストの背後で影が動いた。
「ネオラスト!後ろ!」
アルウィンが叫ぶか否か、
ネオラストはその鉄球で魔物の頭を粉砕していた。
アルウィンは安堵した。心配はないようだ。
「ケンリスいくぞ!」
「おらぁ!」
ケンリスが血に飢えた魔物の足を一本切り落とす。
グールはそのケンリスの腕に噛みつこうとした。
それをケンリスは籠手で受け止める。
「アルウィン今だ!」
アルウィンの剣がグールの胴体を切り裂く。
その断末魔が、戦いの終わりを告げた。
「えっと……そ、その血に汚れた鉄球はなんなんだ…?」
ケンリスは震えながら聞いた。
「後ろから襲ってくる卑怯な魔物の頭を砕いたのですよ?」
ケンリスの顔が引きつる。
「しかし、接近戦も出来るとはなかなかだな。」
アルウィンが感心したように言う。
「杖が長い柄になってくれるので、扱いやすいのです。」
それから、アルウィンが言った。
「今日は、あの木の下で野宿だな。」
「そうですね。」
「ネオラストにも俺の料理を食わしてやるぜ!」
木の下まで行くと、
ネオラストはテントを建て始めた。
ケンリスは料理の下ごしらえをし、
アルウィンはいつものように薪を拾いに行った。
「ありがとよ」
ケンリスに薪を渡すと、
アルウィンはネオラストを手伝いに行った。
大型のテントだった。
「ケンリスが料理している間に、行き先の確認をしておこう。」
「そうですね。」
かくして、3人は食事を終え、テントに入った。
「2人共そんなに警戒しなくても良いですよ。外には結界を張ってありますから。」
これまで、2人は寝る時はシートをひいて、
同じ木にもたれ掛かるようにして寝ていた。
剣も、体に立てかけて
いつでも抜けるようにしていたのだ。
「横になって布をかぶって。疲れが取れませんよ。」
言われるがまま、2人はその通りにした。
「こういうのも、良い物だな。」
アルウィンが天井を見て言った。
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