ーーベルクデン王国。
王は言った。
「神の御名において、今日ここに アルウィン=ウィドウズを勇者と任命する」
「は! 必ず魔王をこの手で討ち取ってみせます!」
剣術に魔術、また体力をも測る試験
それを通り抜けたアルウィンは人類最後の砦となった。
王国一の鍛冶屋は、彼に最高の武器を献上した。
また、王国は崩壊寸前にも関わらず、
多くの路銀を渡してくれた。
失敗する訳にはいかない。
俺は勇者として選ばれた。
人類最後の砦として、多くの人、
またドワーフ、エレグワ、エルフ
魔王に脅かされる全ての者の期待を背負っている。
必ず、魔王は除かねばならない。
必ず、魔王を殺してやる。
他の魔物も、全てだ。
その時の俺は、心に誓った。
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村に魔王軍が来た時、母は魔法で、父は剣で奮闘していた。
が、あまりにも魔物の数が多すぎる。
兵士はみな疲弊していき、
…死んでいった。
「お前だけは死んではならない! 隠れていろ! 」
そう言って、父は俺を地下の建物に入れた。
次第に息は苦しくなっていった。
炎に空気を奪われていたのだ。
そうしてしばらく経つと、
耳をつんざく様な音とともに凄まじい地響きが
辺りを襲った。
…俺は耐えられずに、そこで気絶した。
…
…
…
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
ふと目が覚めた。
体中が痛い。
瓦礫をどける。
傷だらけの俺は、地上へと這い出した。
瓦礫。死体。炎。
村は見事に焼き払われていた。
切り裂かれた兵士、
焼かれて皮膚が水膨れだらけの死体。
その中に、両親を見つけた。
父は、体に矢が4本刺さっていた。
母は、左半身がぐちゃぐちゃに。
不思議と、涙は流れない。
悲しみよりも怒りが頭を、
いや、俺を支配した。
脳が煮えるかのような、
体が痙攣しそうな程の、怒り。
目の前では、炎が激しく燃えていた。
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あの炎の色は、今でも覚えている。
再び、アルウィンは心に復讐の念を燃やした。
その時—
扉が勢いよく開けられた。
「敵襲です!!! 魔物の軍勢が迫っています! 」
「数は」
王は落ち着いて訊ねる。
「ざっと2千ほどです。」
扉を開けた女が言った。
(良い準備運動だ。 蹴散らしてやろう)
アルウィンは拳を握る。
「アルウィン、いや勇者アルウィンよ。 行けるか?」
「は! 蹴散らせて見せます!」
すぐに騎士、弓兵、歩兵が集まった。
城壁には弓兵と魔法使いが、
騎士と歩兵、そして俺が門から出て、バタンと門が閉じられた。
こちらの数はざっと5000だ。負けることはない。
「私に続け! 」
アルウィンは声を張り上げた —
魔法使いと弓兵が敵を蹴散らし、残党を俺たちが処理。
殺し、殺され、しかしこちらが優勢だった。
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しばらくして、敵は撤退した。
だか、我らも無傷と言うわけではなかった。
この後には、
決して少なくない数の墓がたつことになるのだろう。
そして戦いは終わった。
王は言う。
「先の戦、あっぱれであった。其方になら、魔王の討伐を任せられる。まさに人類最後の砦だ。」
「は!」
「ゆけ!勇者アルウィンよ!」
兵士の間で、いや城中から歓声が上がった。
アルウィンは、多くの人に見守られ、
城門を抜けた。
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