勇気と共に。

⚔第一章⚔知られざる過去
ケンリス・アスペルガー
ケンリス・アスペルガー

第1話 勇気ひとつを共にして。

公開日時: 2021年4月10日(土) 00:51
文字数:1,399

ーーベルクデン王国。


王は言った。


「神の御名において、今日ここに アルウィン=ウィドウズを勇者と任命する」

「は! 必ず魔王をこの手で討ち取ってみせます!」


剣術に魔術、また体力をも測る試験

それを通り抜けたアルウィンは人類最後の砦となった。


王国一の鍛冶屋は、彼に最高の武器を献上した。

また、王国は崩壊寸前にも関わらず、

多くの路銀を渡してくれた。


失敗する訳にはいかない。

俺は勇者として選ばれた。

人類最後の砦として、多くの人、

またドワーフ、エレグワ、エルフ

魔王に脅かされる全ての者の期待を背負っている。

必ず、魔王は除かねばならない。


必ず、魔王を殺してやる。

他の魔物も、全てだ。

その時の俺は、心に誓った。


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村に魔王軍が来た時、母は魔法で、父は剣で奮闘していた。


が、あまりにも魔物の数が多すぎる。

兵士はみな疲弊していき、

…死んでいった。



「お前だけは死んではならない! 隠れていろ! 」


そう言って、父は俺を地下の建物に入れた。



次第に息は苦しくなっていった。

炎に空気を奪われていたのだ。

そうしてしばらく経つと、

耳をつんざく様な音とともに凄まじい地響きが

辺りを襲った。

…俺は耐えられずに、そこで気絶した。



どれくらいの時間が経ったのだろうか。

ふと目が覚めた。

体中が痛い。


瓦礫をどける。

傷だらけの俺は、地上へと這い出した。

瓦礫。死体。炎。

村は見事に焼き払われていた。

切り裂かれた兵士、

焼かれて皮膚が水膨れだらけの死体。

その中に、両親を見つけた。

父は、体に矢が4本刺さっていた。

母は、左半身がぐちゃぐちゃに。

不思議と、涙は流れない。

悲しみよりも怒りが頭を、

いや、俺を支配した。

脳が煮えるかのような、

体が痙攣しそうな程の、怒り。

目の前では、炎が激しく燃えていた。



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あの炎の色は、今でも覚えている。

再び、アルウィンは心に復讐の念を燃やした。

その時—



扉が勢いよく開けられた。


「敵襲です!!! 魔物の軍勢が迫っています! 」

「数は」


王は落ち着いて訊ねる。


「ざっと2千ほどです。」


扉を開けた女が言った。



(良い準備運動だ。 蹴散らしてやろう)

アルウィンは拳を握る。


「アルウィン、いや勇者アルウィンよ。 行けるか?」


「は! 蹴散らせて見せます!」



すぐに騎士、弓兵、歩兵が集まった。

城壁には弓兵と魔法使いが、

騎士と歩兵、そして俺が門から出て、バタンと門が閉じられた。

こちらの数はざっと5000だ。負けることはない。


「私に続け! 」


アルウィンは声を張り上げた —

魔法使いと弓兵が敵を蹴散らし、残党を俺たちが処理。

殺し、殺され、しかしこちらが優勢だった。


—-——————


しばらくして、敵は撤退した。

だか、我らも無傷と言うわけではなかった。

この後には、

決して少なくない数の墓がたつことになるのだろう。


そして戦いは終わった。

王は言う。



「先の戦、あっぱれであった。其方になら、魔王の討伐を任せられる。まさに人類最後の砦だ。」


「は!」


「ゆけ!勇者アルウィンよ!」



兵士の間で、いや城中から歓声が上がった。

アルウィンは、多くの人に見守られ、

城門を抜けた。

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