「やっと着いたー…」
「ふぅ。まずは宿を探そう」
街の門を前にした2人は、既に疲れ切っていた。
アルウィンが受付に行く。
「どこからお越しで?」
「ベルクデンからだ。」
「ベルクデンですか。あら?ちょっとその剣を見せてもらっても良いですか?」
「ああ。」
門番は剣のベルクデンの紋章に目を留めた。
そして、その顔が輝いた。
「もしかして、ベルクデンのゆう…」
「しーーーーーー!」
「は、はい…」
ケンリスは焦ったように門番を止めた。
門番は戸惑う。
「ベルクデンを出て4日も旅をしてきたんだ。今日はゆっくりと休みたい。明日、街の長と話そう。」
アルウィンが説明した。
「あ、ああ。そう言うことでしたか。それでは、手の平より大きな武器をここに置いて、この腕輪をして下さい。」
「へぇー。魔法の街でも魔法枷をつけるのか。」
ケンリスが物珍しそうに腕輪を見る。
「暴発すると危ないですからね。」
アルウィンは剣を門番に渡した。
門番は丁寧に布に包み、奥に持っていった。
「このフライパンも渡した方が良いのか?そこらのナマクラよりも断然強いぜ?」
「そんなわけあるか」
「こちらがキーになります。これを持ってくれば、武器の受け渡しが出来ます。街で武器を買った場合も、このキーと一緒にここに持ってきて下さい。」
「分かった」
アルウィンはキーを受け取る。
それから、門番に聞いた宿に着き、荷物を置いた。
「ケンリスの武器だけ買いに行って、今日は休もう。」
「やったぜ!」
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武器屋にて。
「どれが良いかなーー……」
「迷ってるのかい?なんなら、試し斬りしてみるか?」
「良いのか?よし、片っ端から試させてくれ!」
店主は試し斬りの場にケンリスとアルウィンを
案内した。
「よし、アルウィン、火、頼む!」
「魔法枷があるから無理だ。」
「え…おっさん、魔法枷外しちゃだめか?」
「なんで魔法を使うんじゃ?」
「魔法と合わせたときの使い心地を知りたいんだよ」
「ま、まぁ、ここはわしの土地じゃし、良いじゃろう」
「ありがとな! よし、アルウィン頼むぜ!」
それから、ケンリスはアルウィンの魔法を操り、何本もの剣で魔法剣を試していた。
しかし、何かが違うのか、
次、また次と剣を変えていった。
「驚いたな。そなたはすごい能力をもってるんじゃな」
「普通の魔法は、使えないんだがな。」
店主はますます分からないという顔をした。
アルウィンは微笑んだ。
そして、店にある全ての剣で試した後、
一本の剣をとって、ケンリスは言った。
「これだ!あと、この籠手と!」
「決まったのかい。合わせて銀貨80枚だ。」
かくして、ケンリスは新しい武器を手にした。
アルウィンは、宿に置いてきたフライパンの安堵のため息が聞こえたような気がした。
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「さすがに疲れたな。俺の魔力も枯渇してる。」
「体中がだるい。飯行こうぜ」
「まあ待てよ。飯作るにも時間がかかるだろう?」
宿の亭主に聞いてみると、まだ時間がかかるそうなので、
先に蒸し風呂に行くことにした。
肌着は替えをもってきていたので、宿の人に洗濯してもらう。
「やっぱ風呂は気持ち良いなー!汗がどんどん流れてくよ」
「風呂が好きなんだな。東洋式の風呂を知ってるか?」
「確か…湯そのものに浸かるんだっけ? あと公衆浴場がヤケにでかいとか。 ってことは、見ず知らずの奴が大勢入ってくるって訳だ。 気持ち良さそうだけど、……ちょっと気持ち悪いな」
どっちだ…?
アルウィンは顔をしかめた。
それから2人は渡された布で体をこすり、宿に戻った。
「いぇーい!」
ケンリスが子供のようにベッドに飛び乗った。
「あのな…これは旅行じゃないんだからな?忘れるなよ?」
「分かってるって!でも、風呂の後のベッドは気持ち良いだろ?」
「ま、それもそうだな。」
しばらくして、下から亭主の声がした。
「食事の支度が出来ましたよー!」
「行くゼェ!」
「走るな走るな」
既に疲れが吹っ飛んでいるかのようにケンリスが飛んでいく。
「バイキング形式なのか」
物凄い勢いでケンリスは食べ物を口に運ぶが、
思ったよりもマナーがなっているようだ。
…速さ以外は。
「それにしても、よく食べるんだな。」
「腹減ったんだよ。それに、俺はいつもこうだ。今日は特に多めだがな。」
(ちゃんと食べてはいるんだな…)
そんな事を考えながらアルウィンも食べていると、
ふいにケンリスが言った。
「おい…今、そんなに食べても背が伸びないのかとか思わなかったか?」
「い、いや、そんな事はない」
アルウィンは内心慌てた。
よっぽどコンプレックスなのか、そういう所は敏感らしい。
それからも2人は満腹になるまで楽しく食事を楽しんだ。
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「明日はいよいよ、長と話をするんだな。」
ケンリスが言った。
「そうだ。賢者を仲間にすれば、先の旅も楽になるだろう。」
「その事を賢者は知っているのか?」
「もちろんだ。ベルクデンで勇者選抜が行われるときから既に、その事は決まっていたしな。」
「なら安心だな。」
「明日は早いから、さっさと寝ろよ」
「んー、分かった。」
ケンリスは靴を脱ぎ、毛布にくるまった。
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