「そのプロストウェインってのは、ここからどれくらいなんだ?」
枝で草を払いながら、ケンリスは聞いた。
「歩いて3日だ。」
「結構かかるんだな。」
またしばらく歩く。
「そろそろ飯にしようか。お前は何を持ってるんだ?やけに荷物が多いが。」
ケンリスは鞄の中身を広げた。
腸詰、瓶入りのピクルス、そして塩に深いフライパン。
「準備が良いじゃないか。」
「調理用のナイフもある。食料には困らねえぜ」
どうやらコイツを連れてきたのは正解だったらしいと、
アルウィンは考えた。
「俺はパンと塩漬け肉だ。」
「あ!パンを忘れてた…」
「まあいい。余分に持ってきてあるし、2人で食べよう」
ケンリスが変な顔をした。
「ヤケに優しいんだな?」
「お前の用意には感心したよ。」
ケンリスは薪を集め、太い薪をティピー型に組んだ。
複数本の薪を互いに立てかけるように組む焚火の型である。
オーソドックスかつ火付きの良い物だ。
しかし、太い薪だけを組んでも
強力な魔法でも使わない限り火など付かないだろう。
「焚き火の仕方を知らないのか?」
アルウィンがバカでも見たような、
いや実際そうだが、そんな目でケンリスを見る。
すると、
「そんな訳あるかよ」
憤慨した様にケンリスが言った。
「フェリア使えるだろ?」
「余計なところで魔力を消費したくはないな。頑張ってつけろ」
ケンリスはしぶしぶ薪を割り始めた。
俺は松ぼっくりを拾いに行き、
これでもかと袋に入れた。
ケンリスの所へ戻ると、
もう薪割りは終わっていた。
「松ぼっくりを拾ってきた。使うと良い。」
「ありがとよ」
「火打石はあるのか?」
「もちろん」
そう言うと、ケンリスはカバンのポケットから火打石を取り出し、カンカンやり始めた。
ケンリスがフライパンに油を塗り、
腸詰を布から出したその時 —
バサッと音がしたかと思うと、
大きなワシが腸詰を奪って行った。
空中に放り投げて、パクッと一飲みにする。
「何!?アルウィン、炎の魔法を俺に!」
「諦めろよ。腸詰はまだあるだろう?」
「いいや許さねえ。ローストチキンにしてやる!」
チキンではないが、
面白そうだったので
アルウィンはケンリスに炎を放った。
「喰らえ、腸詰の恨み!」
そう言うとケンリスは炎の剣をワシに向かって振った。
刃となった炎が、ワシに斬撃を与える。
「ギャァ!」
ワシの断末魔が轟いた。
「物騒な事をするんだな。」
「鳥のメニューが増えたぜ。それに、アイツは俺たちの腸詰を食ったんだ。」
ケンリスが持ってきたワシは羽がほとんど燃えていた。
羽をむしる手間が省けそうだ。
というか、すでにケンリスが全て毟り取っていた。
…
どれくらい経ったか、ケンリスのフライパンは
良い匂いと音を放っていた。
色々あったが夜は何事もなかったかの様に落ち着いた。
…腸詰がワシの燻製に化けてはいたが。
それに、ケンリスが調理したワシは美味かった。
狩りたて焼きたてが上手いのだとか。
「旨かったな。」
「ああ。そうだろそうだろう!」
ケンリスもご機嫌だ。
なんとなくケンリスとの絆が深まった様な気がする、
アルウィンはそんな事を考えた。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!