勇気と共に。

⚔第一章⚔知られざる過去
ケンリス・アスペルガー
ケンリス・アスペルガー

第3話 ある旅の一日 part1

公開日時: 2021年4月10日(土) 01:12
文字数:1,239

「そのプロストウェインってのは、ここからどれくらいなんだ?」


枝で草を払いながら、ケンリスは聞いた。



「歩いて3日だ。」


「結構かかるんだな。」




またしばらく歩く。



「そろそろ飯にしようか。お前は何を持ってるんだ?やけに荷物が多いが。」



ケンリスは鞄の中身を広げた。

腸詰、瓶入りのピクルス、そして塩に深いフライパン。



「準備が良いじゃないか。」


「調理用のナイフもある。食料には困らねえぜ」



どうやらコイツを連れてきたのは正解だったらしいと、

アルウィンは考えた。



「俺はパンと塩漬け肉だ。」


「あ!パンを忘れてた…」


「まあいい。余分に持ってきてあるし、2人で食べよう」



ケンリスが変な顔をした。



「ヤケに優しいんだな?」


「お前の用意には感心したよ。」



ケンリスは薪を集め、太い薪をティピー型に組んだ。

複数本の薪を互いに立てかけるように組む焚火の型である。

オーソドックスかつ火付きの良い物だ。

しかし、太い薪だけを組んでも

強力な魔法でも使わない限り火など付かないだろう。



「焚き火の仕方を知らないのか?」



アルウィンがバカでも見たような、

いや実際そうだが、そんな目でケンリスを見る。

すると、



「そんな訳あるかよ」



憤慨した様にケンリスが言った。



「フェリア使えるだろ?」


「余計なところで魔力を消費したくはないな。頑張ってつけろ」



ケンリスはしぶしぶ薪を割り始めた。

俺は松ぼっくりを拾いに行き、

これでもかと袋に入れた。

ケンリスの所へ戻ると、

もう薪割りは終わっていた。



「松ぼっくりを拾ってきた。使うと良い。」


「ありがとよ」


「火打石はあるのか?」


「もちろん」



そう言うと、ケンリスはカバンのポケットから火打石を取り出し、カンカンやり始めた。

ケンリスがフライパンに油を塗り、

腸詰を布から出したその時 —


バサッと音がしたかと思うと、

大きなワシが腸詰を奪って行った。

空中に放り投げて、パクッと一飲みにする。



「何!?アルウィン、炎の魔法を俺に!」


「諦めろよ。腸詰はまだあるだろう?」


「いいや許さねえ。ローストチキンにしてやる!」



チキンではないが、

面白そうだったので

アルウィンはケンリスに炎を放った。



「喰らえ、腸詰の恨み!」



そう言うとケンリスは炎の剣をワシに向かって振った。

刃となった炎が、ワシに斬撃を与える。



「ギャァ!」



ワシの断末魔が轟いた。



「物騒な事をするんだな。」


「鳥のメニューが増えたぜ。それに、アイツは俺たちの腸詰を食ったんだ。」



ケンリスが持ってきたワシは羽がほとんど燃えていた。

羽をむしる手間が省けそうだ。

というか、すでにケンリスが全て毟り取っていた。



どれくらい経ったか、ケンリスのフライパンは

良い匂いと音を放っていた。


色々あったが夜は何事もなかったかの様に落ち着いた。

…腸詰がワシの燻製に化けてはいたが。


それに、ケンリスが調理したワシは美味かった。

狩りたて焼きたてが上手いのだとか。



「旨かったな。」


「ああ。そうだろそうだろう!」



ケンリスもご機嫌だ。

なんとなくケンリスとの絆が深まった様な気がする、

アルウィンはそんな事を考えた。

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