真事の怪談 ~辻斬り 四十九連斬~

月も隠れし夜闇の底で。あなたは怪異に斬り苛まれる――
松岡真事
松岡真事

第二斬 『雨垂れ』

公開日時: 2021年6月1日(火) 16:00
文字数:381

 生ぬるい梅雨の頃。

 憂鬱ゆううつ雨垂あまだれを聞きながら、ぼんやりスマホをいじる午後。


 突然付き合っている彼女が、何故か脈絡みゃくらくもなくLINEライン人体模型じんたいもけいの映った画像を添付てんぷしてきた。


 何処どこかの物置の中。

 こちらを真っ直ぐ見つめてたたずむ人体模型。


 きもちわるい。


『これ何の冗談?』

 怪訝けげんさを示唆しさする顔文字を添えて文章を送る。


 その刹那せつな、後ろからいきなり 両肩をガバッ、とつかまれた。



 うそだ。

 そんな筈ない。

 ソファーに仰向あおむけで寝転んでいるというのに。



 弾かれたように身をひるがえし、周囲を見回す。

 誰もいない。


 そこで、着信音。


 スマホには、

『冗談ってどういう意味?』

 彼女からのメッセージ。


 見れば人体模型の画像も消えている。


 親でも死んだみたいな表情でしばし考え込んでいたが、

 不意にさっきまでうるさいくらいだった雨垂れの音が

 聞こえなくなったことに気がついた。

 窓の方を見てみる。



 雨はすっかり上がり、

 雲間から陽光ひかりが差していた。



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