真事の怪談 ~辻斬り 四十九連斬~

月も隠れし夜闇の底で。あなたは怪異に斬り苛まれる――
松岡真事
松岡真事

第二十九斬 『命運』

公開日時: 2021年6月24日(木) 16:00
文字数:375

 以前、姉と二人で近所の商業施設へ買い物に行った時のことです。


 夏物を見てたら、いきなり姉が

 制服姿の少女に話しかけられたんですね。


 その子はキッと気の強そうな目をしていて。



「ここはあなたの来るところじゃないわ、早くあっちへ行ったらどう?」



 って言うんです。

 姉はひどくビックリしていました。



「・・・随分ずいぶん失礼ね。あなたソノ制服、〇〇高校の生徒さん?」


「え? あれ、生きてる?! す、すみません。勘違いで・・・」



 その子は、手のひらを返したように恐縮し、

 何度も謝ってそそくさ去っていきました。


 何アレ。ちょっとおかしいんじゃない・・・

 私と姉は、プンプン怒りながら彼女の背中を睨み付けたものでした。



 姉が交通事故で他界したのは、その翌日でした。



 あの子は悪くなかったのでしょう。

 おそらく「見える人」で。

 近々ちかぢか命運の尽きる姉の姿が、普通の見え方をしていないだけだったのでしょうね――


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