就寝（しゅうしん）前

　ずっと前に聞いた怪談話（かいだんばなし）を不意に思い出し、眠れなくなってしまった。

　これはアルコールの力を借りるしかない――と思い冷蔵庫を開けたが、

　ふだん滅多（めった）に酒を嗜（たしな）まないせいでビールも酎（ちゅう）ハイも切らしているのに気付く。

　仕方（しかた）ないので深夜放送でも観（み）て気を紛（まぎ）らわそうと思い、テレビをつけた。

「青木ヶ原樹海（あおきがはらじゅかい）の、」

　と、音声が聞こえてきて

　一瞬画面に髪の長い寄（よ）り目（め）の女の姿が映り、

　何もしていないのに

　プツンと電源が切れた。

　その夜は

　一睡（いっすい）も出来なかった。