山ほど愚痴が溜まってるので、受け皿になって欲しいと頼まれた。
愚痴の内容は、
誰でも心当たりのあるような、
ごくごく普通のものだったと思う。
ふむふむナルホド。
自分にもそういう経験ありますよぅ――
などと相槌混じりに聞いていると、
不意に後ろから声をかけられた。
「おい君!正気なのかッ、君!!」
肩を強く揺すられ、ハッとなる。
振り返った目の前に、顔面蒼白な知らないオジさんが立っている。
周囲を見回すと、そこは先日痛ましい交通事故があった現場。
亡くなったのは幼稚園児の女の子で、一帯には献花や人形、ぬいぐるみが並んでいた。
「君は、このぬいぐるみと話をしていたんだぞ?大丈夫か!!」
ああ、確かにこのクマさんには見覚えがある。
愚痴を聞いて欲しいって言ってきた人だ。
「じゃ、私はこれで」
クマさんにそう言い残し、私はそこを後にした。
あの時に聞いた愚痴の詳細は、何故か一向に思い出せなかった。
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