真事の怪談 ~辻斬り 四十九連斬~

月も隠れし夜闇の底で。あなたは怪異に斬り苛まれる――
松岡真事
松岡真事

第四十三斬 『家族』

公開日時: 2021年7月8日(木) 14:00
文字数:312

 身を切るほどに冷え込んだ冬の夕暮れ時。


 昨年さくねん亡くなった母親から電話が掛かってくる。


 「お父さんが見つからない。悲しい、悔しい、情けない・・・」と

 何度か繰り返して一方的に切れた。


 数日後、再び電話が鳴る。


 四年前に他界たかいした父からである。


 「母さんは何処どこだ。まだこっちへ来んのか」

 一言残して切れた。



 こういうことがまれに起こる。

 何故なぜかはわからないが

 二人は、向こうで出会えていないらしい。



 また、この事案じあんと何らかの関連性があるのかすらわからないが

 

 亡くなった両親のいずれかから電話が掛かってきた日の深夜には

 スヤスヤ眠っていた筈の妻が突然跳ね起き、

 奇声を発しながら 寝室の中を暴れ回る。


 たとえ 妻に電話が掛かってきた事を内緒ないしょにしていても

 かならず、である。


 


 

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