真事の怪談 ~辻斬り 四十九連斬~

月も隠れし夜闇の底で。あなたは怪異に斬り苛まれる――
松岡真事
松岡真事

第二十五斬 『フル』

公開日時: 2021年6月20日(日) 16:00
文字数:393

 友達が昔、スマホをいじりながら夜道を帰ってたんですね。


 そしたら、急に画面が薄暗くなって、

 あれ?って思って確かめてみたら、

 何とモノ凄い早さでバッテリー残量の数字が減っていき、

 遂には画面が真っ暗になったそうです。

 そしてその瞬間、


〝もうお電話できませェん〟


 って中性的な声が闇の中で聞こえたらしくて。


 全身恐怖に貫かれちゃったその子は、ガムシャラに走って家路いえじを急いだそうですが、

 そのうち、おかしい事に気付いたんです。


 さっき真っ暗になった筈のスマホに、光が戻ってる。


 再び確認してみると、何と今度はグングン、バッテリーの数字が上がっていって、

 100%まで上昇したところで今度は、


〝チッ・・・〟


 小さな舌打ちが聞こえて。

 それきりだったんだとか。


 減り始める前でも70%くらいだったのに、フルまで回復なんて絶対あり得ないって。話してくれた時、何故かそんな細かい所をやたら不思議がっていたのが忘れられないです。



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